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2012年08月11日
食事由来コレステロールよりはTGとアポB48が血管内皮機能に影響
- キーワード
- 糖尿病合併症
既知の危険因子の管理のみでは十分に抑止できない動脈硬化進展の残された危険因子として、食後高脂血症が注目されている。さきごろ開催された第44回日本動脈硬化学会学術集会(7月19〜20日・福岡)では、食後高脂血症に関する新たな知見として、動脈硬化の最初期の病変である血管内皮機能に影響を及ぼすのはTGrichリポ蛋白であり、食事由来コレステロールの直接的な影響は小さい可能性が発表された。帝京大学医学部内科・沼倉舞子氏らの研究報告。
食事摂取によるトリグリセライド(TG)の上昇に伴い、血管内皮機能を示す指標である「FMD(Flow Mediated Dilation)」が低下することは既に知られている。また、小腸からのコレステロール吸収を阻害するエゼチミブが食後FMDを改善することが報告されており、その機序として、TGrichリポ蛋白の増加抑制を介した経路の影響が考えられている。 しかし、エゼチミブの主作用である小腸におけるコレステロール吸収の抑制も、FMD改善に寄与している可能性も否定できないことから、沼倉氏らはコレステロール吸収マーカーを測定。TGとFMDの間にみられる相関と同様な関係が、コレステロール吸収マーカーとFMDの間にもみられるか検討した。
食後のFMD低下率と、TG、アポB48、コレステロール吸収マーカーを比較
対象は19歳から21歳の健常者6名。食前と食後4時間にFMDを計測するとともに、脂質関連指標としてTGと総コレステロール(TC)、およびアポB48を測定した。
アポB48は小腸で合成されるアポ蛋白で、TGrichリポ蛋白であるカイロミクロンを構成する。その高値は食後高脂血症の存在を示し、動脈硬化惹起性の高い病態のマーカーとしてクローズアップされている。
これらに加え、小腸からのコレステロール吸収マーカーとしては、シトステロールとカンペステロールを測定した。
コレステロール吸収マーカーはFMD低下と相関せず
食事の前後で比較すると、従来の報告と同様にFMDは食後に低下することが確認された。また、TG、アポB48が食後に上昇したのに対し、TCやシトステロール、カンペステロールに有意な変化はなかった。
次に、食事負荷によるFMDの低下率と各指標との相関をみると、食前のTG、アポB48よりも食後TG、アポB48が、より強くFMD低下率と相関していた(図)。シトステロールやカンペステロールは、食前、食後のいずれもFMDの低下率との相関がみられなかった。
食前および食後のアボB48値と、食事によるFMD低下の関連
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以上の結果より、アポB48を含むTGrichリポ蛋白が血管内皮機能障害に重要な役割を担っていると考えられた。その一方、小腸からのコレステロール吸収率の血管内皮機能に与える影響は小さいと考えられた。 これらの新たな知見は、動脈硬化進展の残された危険因子の一つである食後高脂血症において、その治療ターゲットを明確にするのに役立ちそうだ。
◇FMD関連情報:
- FMDは動脈硬化危険因子の集積を鋭敏に反映 CAVI・ABIとの比較
- 食後脂質異常が、食後高血糖よりも血管内皮機能低下に強く影響
- 肥満でEDの中年男性は生活習慣病未発症でも内皮機能が有意に低下
- ACS後の心リハによる運動耐容能向上は血管内皮機能の改善と相関
- DPP-4I追加と併用OHA別にみた内皮機能改善効果 FMDでの検討
- CADでは非糖尿病でも微量アルブミン尿出現率が高く、FMD低下と関連
- 上腕動脈IMT・FMDの同時計測で、冠動脈疾患リスクの層別化が可能
- DPP-4阻害薬の食後高脂血症改善を介した血管内皮保護作用
- 禁煙により酸化ストレスが低下し、血管内皮機能が有意に改善
- 糖尿病細小血管障害とFMD値が相関。短期加療による改善も評価可能
- 血管内皮機能は体温日内変動と相関するが、糖尿病ではその関係が破綻
- 心不全患者の心リハ。急性期のADL改善にも血管内皮機能が関与
- 糖尿病患者の冠疾患スクリーニングにFMDが有用
- 食事由来コレステロールよりはTGとアポB48が血管内皮機能に影響
- 直接レニン阻害薬の多面的効果 透析患者での血管内皮機能を改善
- DPP-4阻害薬の変更による血管内皮機能改善の上乗せ効果
- 塩分の多い食事は、食直後から血管内皮機能(FMD)を低下させる
- 血管内皮機能は血糖変動と逆相関し鋭敏に変化する
- 大豆イソフラボンがTGを低下させ、FMDを改善
- 「血管内皮機能検査」が診療報酬改定で新設される(厚生労働省)
- ミグリトールは冠動脈疾患併発糖尿病患者の血管内皮機能を改善する
- FMD低値は糖尿病発症の予測因子。ドックなどでは精密検査を
- 肥満2型糖尿病では、精神的ストレス軽減が血管内皮機能改善につながる
- 網膜症のある女性糖尿病患者は血管内皮機能(FMD)低下ハイリスク
- HDL-Cの血管内皮機能(FMD)保護作用は糖尿病で相殺される
- 仮面高血圧合併2型糖尿病では血管障害(FMDやPWV)が高度に進展
- DPP-4阻害薬は血管内皮機能(FMD)を改善する
- 脳や心臓の血管が詰まる前に。血管の若返りがわかる検査指標「FMD」
- 動脈硬化が早期にわかるFMD検査装置
- 血管内皮機能、FMD検査のユネクス
- 一般向けサイト 動脈硬化の進展を知る「FMD検査.JP」
[ DM-NET ]
日本医療・健康情報研究所
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