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2012年10月11日
心不全患者の心リハ。急性期のADL改善にも血管内皮機能が関与
- キーワード
- 糖尿病の検査(HbA1c 他) 糖尿病合併症
現在、国内の心不全患者は160万人と推定されており、高齢化とともにその患者数はさらに増加している。心不全に対する心臓リハビリテーション(心リハ)は、運動耐容能、骨格筋機能、末梢血管拡張能などの改善を介して、ADL・QOLの維持・向上に寄与する。
先行研究では、心リハによるこれら長期予後改善が、FMD(Flow Mediated Dilation.血流依存性血管拡張反応)で評価される血管内皮機能改善と相関することが示されている。具体的には、FMDが心不全の重症度や死亡率の独立した予測因子であること、4週間の運動療法によりFMDが改善することなどの報告がみられる。しかし、血管内皮機能と急性期ADLとの関連は明らかになっていない。田頭氏らはこの点に着目し、急性期心不全患者の血管内皮機能と心機能およびADLの改善に要する日数との相関を調査した。
入院直後の急性期治療と点滴治療が終了した時点から心リハを開始し、その1〜2日後、および1週間後にFMDを測定して血管内皮機能を評価。FMDの改善率と年齢、BNP、左室駆出率、ADL(自立)獲得に要した日数、在院日数との関係を検討した。
FMDと相関が認められた項目
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対象7名の主な患者背景は、年齢81.1±11.9歳、NYHA分類(III度1名、IV度6名)、BNP1,106±708.2pg/mL、左室駆出率41.4±19.2%、原因疾患(高血圧性心不全3名、陳旧性心筋梗塞4名)、危険因子保有者数(糖尿病6名、高血圧5名、脂質異常症3名、喫煙1名、肥満1名)など。
ADL改善と有意に相関
FMDとADLの相関については、初回FMDとADL獲得日数(r=0.88,p<0.01)、1週間後FMDとADL獲得日数(r=0.78,p<0.05)、FMD変化率とADL獲得日数(r=0.79,p<0.05)に、それぞれ有意な相関が得られた(図)。この結果から、FMDで評価される血管内皮機能が良好、またはFMDが良好に改善すれば、ADLの改善も良好であることが認められた。なお、FMDと、年齢、左室駆出率、在院日数との間に有意な関係はみられなかった。
以上の結果のまとめとして、同氏は「FMDは心不全患者の重症度と、急性期におけるADL改善予測因子の一つと示唆される」と結論した。
- FMDは動脈硬化危険因子の集積を鋭敏に反映 CAVI・ABIとの比較
- 食後脂質異常が、食後高血糖よりも血管内皮機能低下に強く影響
- 肥満でEDの中年男性は生活習慣病未発症でも内皮機能が有意に低下
- ACS後の心リハによる運動耐容能向上は血管内皮機能の改善と相関
- DPP-4I追加と併用OHA別にみた内皮機能改善効果 FMDでの検討
- CADでは非糖尿病でも微量アルブミン尿出現率が高く、FMD低下と関連
- 上腕動脈IMT・FMDの同時計測で、冠動脈疾患リスクの層別化が可能
- DPP-4阻害薬の食後高脂血症改善を介した血管内皮保護作用
- 禁煙により酸化ストレスが低下し、血管内皮機能が有意に改善
- 糖尿病細小血管障害とFMD値が相関。短期加療による改善も評価可能
- 血管内皮機能は体温日内変動と相関するが、糖尿病ではその関係が破綻
- 心不全患者の心リハ。急性期のADL改善にも血管内皮機能が関与
- 糖尿病患者の冠疾患スクリーニングにFMDが有用
- 食事由来コレステロールよりはTGとアポB48が血管内皮機能に影響
- 直接レニン阻害薬の多面的効果 透析患者での血管内皮機能を改善
- DPP-4阻害薬の変更による血管内皮機能改善の上乗せ効果
- 塩分の多い食事は、食直後から血管内皮機能(FMD)を低下させる
- 血管内皮機能は血糖変動と逆相関し鋭敏に変化する
- 大豆イソフラボンがTGを低下させ、FMDを改善
- 「血管内皮機能検査」が診療報酬改定で新設される(厚生労働省)
- ミグリトールは冠動脈疾患併発糖尿病患者の血管内皮機能を改善する
- FMD低値は糖尿病発症の予測因子。ドックなどでは精密検査を
- 肥満2型糖尿病では、精神的ストレス軽減が血管内皮機能改善につながる
- 網膜症のある女性糖尿病患者は血管内皮機能(FMD)低下ハイリスク
- HDL-Cの血管内皮機能(FMD)保護作用は糖尿病で相殺される
- 仮面高血圧合併2型糖尿病では血管障害(FMDやPWV)が高度に進展
- DPP-4阻害薬は血管内皮機能(FMD)を改善する
- 脳や心臓の血管が詰まる前に。血管の若返りがわかる検査指標「FMD」
- 動脈硬化が早期にわかるFMD検査装置
- 血管内皮機能、FMD検査のユネクス
- 一般向けサイト 動脈硬化の進展を知る「FMD検査.JP」
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