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2013年11月21日
肥満でEDの中年男性は生活習慣病未発症でも内皮機能が有意に低下
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- 糖尿病の検査(HbA1c 他) 糖尿病合併症
内臓肥満がありながらMet-S構成疾患(糖尿病、脂質異常症、高血圧)に罹患していない、40歳代男性の約1割はEDであり、血管内皮機能や遊離テストステロンが有意に低下していることが、第34回日本肥満学会(10月11〜12日・東京)において報告された。まるやまファミリークリニック(長野県飯田市)の丸山哲弘氏の発表。
勃起不全(ED)は近年、単に男性性機能障害の主要原因としてだけではなく、動脈硬化性疾患の早期マーカーでもあることが注目されている。一方、メタボリックシンドローム(Met-S)は動脈硬化性疾患の高リスク病態として位置付けられているが、内臓肥満であってもMet-S構成因子である血糖、脂質、血圧の異常を認めないこともあり、そのような状態での血管障害リスクは十分に検討されていない。 丸山氏は、動脈硬化進展過程の最も早い段階に位置するとされる血管内皮機能に着目し、内臓肥満のみを呈する中年男性のED発症率と血管内皮機能との関係を検討した。
40歳代で内臓肥満があり、生活習慣病のない男性の1割がED
検討対象は、特定検診のために同院を受診した40〜49歳の男性のうち、腹囲85cm以上で内臓脂肪型肥満に該当しながら、糖尿病や脂質異常症、高血圧のいずれでもない67名で、平均年齢は46.5歳。
同意を得た上で、国際勃起機能スコア5(IIEF5)を用いてEDをスクリーニングするとともに、%FMDによる血管内皮機能、遊離テストステロン、および、抑うつ状態の自己評価(self depression scale,SDS)を計測した。IIEF5スコア21点以下をEDと判定すると、対象の約1割に該当する8名がEDに該当した。
ED群は%FMDと遊離テストステロンが有意に低下
次に、ED群(平均IIEFスコア15.4±5.8)と、非ED群(同23.8±3.1。60名)の2群で、各種パラメータを比較検討した。
まず、%FMDの比較では、ED群3.5±2.8%、非ED群6.4±3.78%で、ED群では有意に血管内皮機能が低下していることが確認された(p<0.021)。また、遊離テストステロンも、ED群7.4±5.8pg/mL、非ED群12.5±8.4pg/mLで、ED群において有意に低値だった(p<0.024)。
一方、年齢、BMI、抑うつ尺度のSDSについては、2群間に有意な差はなかった。このことから、内臓脂肪型肥満はEDの危険因子の一つと考えられる。
IIEFスコアと遊離テストステロンが相関し、性腺機能低下との関連も示唆される
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◇FMD関連情報:
- FMDは動脈硬化危険因子の集積を鋭敏に反映 CAVI・ABIとの比較
- 食後脂質異常が、食後高血糖よりも血管内皮機能低下に強く影響
- 肥満でEDの中年男性は生活習慣病未発症でも内皮機能が有意に低下
- ACS後の心リハによる運動耐容能向上は血管内皮機能の改善と相関
- DPP-4I追加と併用OHA別にみた内皮機能改善効果 FMDでの検討
- CADでは非糖尿病でも微量アルブミン尿出現率が高く、FMD低下と関連
- 上腕動脈IMT・FMDの同時計測で、冠動脈疾患リスクの層別化が可能
- DPP-4阻害薬の食後高脂血症改善を介した血管内皮保護作用
- 禁煙により酸化ストレスが低下し、血管内皮機能が有意に改善
- 糖尿病細小血管障害とFMD値が相関。短期加療による改善も評価可能
- 血管内皮機能は体温日内変動と相関するが、糖尿病ではその関係が破綻
- 心不全患者の心リハ。急性期のADL改善にも血管内皮機能が関与
- 糖尿病患者の冠疾患スクリーニングにFMDが有用
- 食事由来コレステロールよりはTGとアポB48が血管内皮機能に影響
- 直接レニン阻害薬の多面的効果 透析患者での血管内皮機能を改善
- DPP-4阻害薬の変更による血管内皮機能改善の上乗せ効果
- 塩分の多い食事は、食直後から血管内皮機能(FMD)を低下させる
- 血管内皮機能は血糖変動と逆相関し鋭敏に変化する
- 大豆イソフラボンがTGを低下させ、FMDを改善
- 「血管内皮機能検査」が診療報酬改定で新設される(厚生労働省)
- ミグリトールは冠動脈疾患併発糖尿病患者の血管内皮機能を改善する
- FMD低値は糖尿病発症の予測因子。ドックなどでは精密検査を
- 肥満2型糖尿病では、精神的ストレス軽減が血管内皮機能改善につながる
- 網膜症のある女性糖尿病患者は血管内皮機能(FMD)低下ハイリスク
- HDL-Cの血管内皮機能(FMD)保護作用は糖尿病で相殺される
- 仮面高血圧合併2型糖尿病では血管障害(FMDやPWV)が高度に進展
- DPP-4阻害薬は血管内皮機能(FMD)を改善する
- 脳や心臓の血管が詰まる前に。血管の若返りがわかる検査指標「FMD」
- 動脈硬化が早期にわかるFMD検査装置
- 血管内皮機能、FMD検査のユネクス
- 一般向けサイト 動脈硬化の進展を知る「FMD検査.JP」
[ DM-NET ]
日本医療・健康情報研究所
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