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2011年11月05日

仮面高血圧合併2型糖尿病では血管障害(FMDやPWV)が高度に進展

 高血圧と診断されてない2型糖尿病患者の約半数が仮面高血圧を合併し、高血圧患者とほぼ同レベルに血管障害が進行しているとの研究結果が、10月20〜22日、宇都宮で開催された第34回日本高血圧学会総会で報告された。順天堂大学大学院代謝内分泌内科学の三田智也氏の発表。
高血圧未診断2型糖尿病患者の47.5%が仮面高血圧
 大迫研究などより、仮面高血圧は管理不良な高血圧と同等の心血管疾患リスクであることが示されている。一方で糖尿病では高血圧を合併しやすく、両者を合併した場合は心血管イベントが相乗的に増加する。また、糖尿病では仮面高血圧の頻度が高いことも知られている。しかし、糖尿病に仮面高血圧を合併した場合の血管障害との関連については、まだ十分には検討されていない。

 そこで三田氏らは、24時間血圧測定(ABPM)により仮面高血圧患者を抽出し、その血管障害の進展レベルを検討した。対象は、降圧治療を受けていない外来通院中の2型糖尿病患者のうち、HbA1c8.4%(NGSP相当値)未満で半年間の変動が0.5%未満の80名。インスリン治療歴、網膜症、3期以上の腎症、症候性心血管イベントの既往等のある患者は除外した。

 外来血圧が140/90mmHg未満でABPMによる日中血圧が135/85mmHg未満の患者を「正常血圧」、外来血圧が140/90mmHg未満で日中血圧が135/85mmHg以上の患者を「仮面高血圧」としたところ、80名中38名(47.5%)が仮面高血圧に該当。仮面高血圧を呈する群は、正常血圧群に比して血圧だけでなく、空腹時血糖値(120.5±23.4 vs 138.7±29.6mg/dL)やトリグリセライド値(74.0 vs 108.0mg/dL)も有意に高いことがわかった(いずれもp<0.01)。

仮面高血圧患者の血管内皮機能や血管硬化度は高血圧患者と同レベル
 血管障害との関連については、上腕の虚血解放後の血管内皮の一酸化窒素産生による血管拡張反応「FMD」と、血管硬化度を表わす脈波伝播速度「baPWV」によって評価した。

 その結果、仮面高血圧群のFMDは正常血圧群に比べて有意に低値(p<0.01)、baPWVは有意に高値(p<0.001)であり、血管障害の進展が確認された。また、検討対照として設けた高血圧群(降圧薬投与中または外来血圧140/90mmHgの2型糖尿病患者32名)と比較したところ、FMD、baPWVともに、仮面高血圧であっても高血圧患者とほぼ同等に障害されていることが明らかになった。さらに、ステップワイズ法による多変量解析では、FMD、baPWVともに外来収縮期血圧ではなく、ABPMによる日中収縮期血圧が独立した危険因子であることが示された。

 

 2型糖尿病患者では外来血圧が正常域でも仮面高血圧を呈していることが多く、心血管イベント高リスク群とされている高血圧合併糖尿病患者と同様に血管障害が進行している可能性があり、ABPMによってこのような患者を抽出し治療介入していくことの重要性を示す結果と言える。

FMD:Flow Mediated Dilation.血管障害の最初期の変化で、内皮機能が低下しているほど低値となる。測定値は血圧に依存しない。
baPWV:brachial-ankle Pulse Wave Velocity.血管障害の中期の変化で、血管の硬化が進んでいるほど高値。測定値はやや血圧に依存する。

◇FMD関連情報:
[ DM-NET ]
日本医療・健康情報研究所

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