ニュース
2012年11月21日
糖尿病細小血管障害とFMD値が相関。短期加療による改善も評価可能
- キーワード
- 糖尿病の検査(HbA1c 他) 糖尿病合併症
血管内皮機能の低下は、血管障害、特に大血管障害(動脈硬化)の最初期の変化とされている。血管内皮機能を非侵襲で定量的に評価する検査方法として、臨床ではFMD(Flow Mediated Dilation.血流依存性血管拡張反応)が用いられており、FMD値と心血管疾患との関連について、既に多数の報告がある。
一方、細小血管障害とFMDとの関連についての報告はまだ少ない。また、糖尿病患者のFMDに関する報告も少なく、佐藤氏らはそれらの点を明らかにするとともに、治療介入による血管内皮機能異常の可逆性について検討する狙いで本研究を行った。
主な患者背景は、BMI24.8±4.4、糖尿病罹病期間10.7±9.1年、HbA1c(NGSP)9.1±2.1%、収縮期血圧126±19mmHg、拡張期血圧73±12mmHg、LDL-C122.3±32.2md/dL、HDL-C49.8±12.6mh/dL、TG145.0±76.2mg/dL、血清クレアチニン0.74±0.26mg/dL、eGFR83.1±27.8mL/分/1.73m2、MeanIMT0.76±0.18mm、FMD5.8±3.1%、喫煙者52%、常習飲酒者32%、ARBまたはACE阻害薬使用者30%、スタチン使用者27%、アスピリン使用者8%など。
まず、糖尿病患者の入院時と対照の健常者のFMDの比較では、糖尿病群5.8±3.1%、対照群10.5±5.0%で、糖尿病群で明らかに低いことが確認された(p<0.001)。さらに糖尿病患者を性別で2群に分けて比較すると、男性4.9±2.8%、女性7.4±3.1%と、男性ではより低値となることがわかった(p=0.001)。
前述のようにFMDには性差がみられることから、それを補正したうえで比較すると、高血圧の併発(p=0.002)、腎症の合併(p=0.003)、神経障害の合併(p=0.019)、頸動脈プラークあり(p=0.022)、脂質異常症の併発(p=0.023)、網膜症の合併(p=0.032)が、それぞれ有意な群間差のある項目として抽出された。このことから、FMDは既に多数報告されている大血管障害との相関だけでなく、糖尿病に特異的な細小血管障害に基づく三大合併症である腎症、網膜症、神経障害のいずれも、その存在と有意な関係があることが確認された。
腎症の病期別にみたFMD値
|
次に、臨床パラメータとFMDとの関係をみると、有意な相関がある因子として、糖尿病罹病期間、MeanIMT、eGFR、HDL-Cが挙がり、性差で調整後は糖尿病罹病期間(p=0.01)とeGFR(p=0.017)が有意な因子として残った。
発表の結語として佐藤氏は、「アルブミン尿やCKDが心血管イベントの発症に強く寄与する事実と考え合わせると、腎症と動脈硬化の双方に血管内皮機能異常が関与している可能性を示した結果と考える。また、血糖はもとより血圧、脂質のコントロールや禁煙など、糖尿病患者に対する早期からの介入は、将来の心血管疾患予防だけでなく、細小血管合併症、特に腎症の予防にもつながる可能性が考えられる」とまとめた。
- FMDは動脈硬化危険因子の集積を鋭敏に反映 CAVI・ABIとの比較
- 食後脂質異常が、食後高血糖よりも血管内皮機能低下に強く影響
- 肥満でEDの中年男性は生活習慣病未発症でも内皮機能が有意に低下
- ACS後の心リハによる運動耐容能向上は血管内皮機能の改善と相関
- DPP-4I追加と併用OHA別にみた内皮機能改善効果 FMDでの検討
- CADでは非糖尿病でも微量アルブミン尿出現率が高く、FMD低下と関連
- 上腕動脈IMT・FMDの同時計測で、冠動脈疾患リスクの層別化が可能
- DPP-4阻害薬の食後高脂血症改善を介した血管内皮保護作用
- 禁煙により酸化ストレスが低下し、血管内皮機能が有意に改善
- 糖尿病細小血管障害とFMD値が相関。短期加療による改善も評価可能
- 血管内皮機能は体温日内変動と相関するが、糖尿病ではその関係が破綻
- 心不全患者の心リハ。急性期のADL改善にも血管内皮機能が関与
- 糖尿病患者の冠疾患スクリーニングにFMDが有用
- 食事由来コレステロールよりはTGとアポB48が血管内皮機能に影響
- 直接レニン阻害薬の多面的効果 透析患者での血管内皮機能を改善
- DPP-4阻害薬の変更による血管内皮機能改善の上乗せ効果
- 塩分の多い食事は、食直後から血管内皮機能(FMD)を低下させる
- 血管内皮機能は血糖変動と逆相関し鋭敏に変化する
- 大豆イソフラボンがTGを低下させ、FMDを改善
- 「血管内皮機能検査」が診療報酬改定で新設される(厚生労働省)
- ミグリトールは冠動脈疾患併発糖尿病患者の血管内皮機能を改善する
- FMD低値は糖尿病発症の予測因子。ドックなどでは精密検査を
- 肥満2型糖尿病では、精神的ストレス軽減が血管内皮機能改善につながる
- 網膜症のある女性糖尿病患者は血管内皮機能(FMD)低下ハイリスク
- HDL-Cの血管内皮機能(FMD)保護作用は糖尿病で相殺される
- 仮面高血圧合併2型糖尿病では血管障害(FMDやPWV)が高度に進展
- DPP-4阻害薬は血管内皮機能(FMD)を改善する
- 脳や心臓の血管が詰まる前に。血管の若返りがわかる検査指標「FMD」
- 動脈硬化が早期にわかるFMD検査装置
- 血管内皮機能、FMD検査のユネクス
- 一般向けサイト 動脈硬化の進展を知る「FMD検査.JP」
糖尿病の検査(HbA1c 他)の関連記事
- 糖尿病の人は脳卒中リスクが高い 血糖値を下げれば脳卒中を予防できる ストレス対策も必要
- 糖尿病の食事に「ブロッコリー」を活用 アブラナ科の野菜が血糖や血圧を低下 日本でも指定野菜に
- 【国際女性デー】妊娠糖尿病や妊娠高血圧のリスクのある女性の産後の検査が不十分 女性の「機会損失」は深刻
- 【歯周病ケアにより血糖管理が改善】糖尿病のある人が歯周病を治療すると人工透析のリスクが最大で44%減少
- 早い時間に食事をとると糖尿病リスクは減少 「何を食べるか」だけでなく「いつ食べるか」も重要
- 「温泉療法」で⾼⾎圧を改善 ストレスによる睡眠障害を緩和 冬の温泉⼊浴では注意点も
- 糖尿病の予防はすぐにはじめられる こんな人は糖尿病リスクが高い 東京都など
- 「超加工食品」の食べすぎは糖尿病の人にとって危険? 血糖値が上昇し筋肉の質も低下
- 握力が低下している人は糖尿病リスクが高い 握力や体力を維持して糖尿病リスクを減少
- 糖尿病の人は脳卒中リスクが高い 脳卒中の脅威は世界で拡大 【脳卒中を予防するための8項目】