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2012年02月24日
低グリセミック指数の食事 2型糖尿病の治療効果を高める
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2型糖尿病の食事療法では、行動目標を高く設定した方が、患者の達成度も高くなるという研究が米国で発表された。
低グリセミック指数(GI)の食事は難しくない
高血糖を防ぐためにまず気を付けたいのは食事。何を、どのくらい食べるかによって、血糖値の上がり方は変わってくる。食後の血糖値を上げやすいのは糖質だ。糖質の選び方にもコツがある。白米、白パンといった体に吸収されやすい「白い糖質」よりも、全粒粉パン、雑穀といった、食物繊維が多く体にゆっくりと吸収される糖質の方が、血糖値は上がりにくい。
グリセミック指数(GI)とは、摂取した炭水化物が消化・吸収されてグルコースに変えられる速さを相対的に数値化した指数。GI値が低い食品をとると、それだけ食後血糖値が抑えられる。代表的な低GI食品として知られているのは野菜、精製されていない全粒粉、乳製品、海藻類、キノコ類、ナッツ類、豆類、大豆食品、果物など。個人差はあるが、これらの食品は吸収が遅いので食後血糖値が上昇しにくい。
今回の研究の対象となったのは、40〜65歳の2型糖尿病患者35人で、HbA1c値の平均は7%以上(NGSP値)だった。食事の1日のエネルギー摂取量を約500kcal少なくし、野菜や全粒粉のパン、ナッツ類などの低GIの食品を毎食加えることを具体的な目標とし、食事療法に取り組んでもらった。
低GI食品について説明をし、5週間食事療法を実践した。その後、(1)低GI食を1日6サービング摂るグループと、(2)低GI食を1日8サービング摂るグループのどちらかに無作為に割り付け、管理栄養士が糖尿病の食事療法についてレクチャーを行い、さらに3週間継続した。
「高GIから低GIに変えていくための小さな工夫を積み重ねるだけでもかなり違う。例えば、清涼飲料を飲むときに、砂糖の代わりに低カロリー甘味料を使った商品を利用するといったちょっとした工夫が、食事スタイルを低GIに変えていく。多くの参加者は、“自分は食事を改善し、食事療法のゴールを達成できる”という自信を深めることができた」とオハイオ州立大学のCarla Miller準教授(栄養学)は話す。
8週間に及ぶ介入の結果、両群とも低GI食品の摂取量が有意に増加し、エネルギー摂取量が有意に低下した。低GI食品の摂取も増えた。目標の達成度は個々の患者によって差が出た。もっとも成功したのは目標を高く掲げ、自己効力感をもっている患者だったという。
「具体的な目標を設けることで、小さなことでもコツコツと取り組むことで、結果として生活習慣の改善を行いやすいことが分かった。“ベストを尽くし、頑張りましょう”といった指導だけはあまり効果的ではない。達成が可能な具体的な目標をつくり、それを達成できたら、さらに高い目標に取り組んでもらうことが大切だ」とMiller氏は話す。
2型糖尿病患者を対象とした低GIの食事療法により、体重、BMI(体格指数)、腹囲周囲径を改善し、HbA1cも低下することが確かめられた。なお、低GI値の食事を続けるのは難しく、炭水化物や糖質の量をコントロールする食事療法の方が簡単であるとの意見に対しては、Miller氏は「適切な患者指導を行い、患者がよく理解して取り組めば、低GIの食生活を実現するのは難しくない」と述べている。
‘Do Your Best’ Not A Good Enough Goal To Improve Diabetes Diet(オハイオ州立大学 2012年2月8日)
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日本医療・健康情報研究所
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