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2011年09月21日

注目される血管内皮機能。心臓病学会でも24日にセッション

 糖尿病患者に心臓病が多発することはよく知られている。そして、心臓病の分野では近年、各疾患の詳細な病態が明らかになるとともに、治療方針の決定など臨床の多くの場面で、血管内皮機能の評価が重要になりつつある。こうした中、9月23日から神戸で開催される日本心臓病学会学術集会の2日目には、内皮機能評価の意義と実際をテーマとするセッションがもたれる予定だ。
糖尿病により心臓病のリスクは2〜4倍に上昇
 糖尿病患者の心臓病発症リスクは一般に、糖尿病でない人の2〜4倍とされる。とくに生命予後を左右する心筋梗塞の発症率については、糖尿病があるというだけで心筋梗塞発症以前において既に、非糖尿病心筋梗塞既往患者の再発率と同等以上になることが知られている。

 心筋梗塞をはじめとする心臓病の多くは動脈硬化を基盤に発症するため、その予防には動脈硬化の早期発見・早期治療介入が欠かせない。心臓病のリスクが高い糖尿病患者の場合、当然ながら早期からの精査がさらに重要となる。

動脈硬化は血管内皮機能の低下から始まる
 動脈硬化は血管内膜へのコレステロール蓄積や血管壁の弾力性低下が進行した状態である。それによって血液の流れが滞りがちになり、血栓ができやすくなって心筋梗塞や脳梗塞が発症しやすくなる。動脈硬化の早期発見のために、これまで種々の検査方法が開発され臨床的意義が検討されているが、動脈硬化の最も初期の病象をとらえ得る検査として、血管内皮機能の測定が近年注目されている。

 動脈血管の一番内側の層である血管内皮は、血管を拡張させるNO(一酸化窒素)を産生し、スムーズな血流の維持に寄与している。その血管内皮の働きを調べる検査法の一つが「FMD(Flow Mediated Dilation)」検査だ。FMD以外の検査が、動脈硬化がある程度進行し、実際に血管内径が細くなったり血管弾性が低下した状態を把握する検査であるの対し、FMDはこれらの変化が生じる前段階の評価が可能。

 一般に動脈硬化は進行すればするほど、生活習慣の見直しや薬物治療の効果が現れにくくなるが、FMD検査でとらえられる内皮機能はそのような介入によって、より確かな改善が期待できる。


外来で測定可能なFMD。社会的認知度も向上
 実際のFMDの測定方法は、血圧を測定するのと同じ要領で片腕にカフを巻いて虚血し、開放後にNO産生により拡張した血管径を超音波で測定するというのがスタンダードな方法だ。この方法は20年以上前より用いられ、動脈硬化性疾患の発症や治療効果との関連について豊富なエビデンスが蓄積されている。しかし測定手技が繁雑なこともあり普及が遅れていた。

 ところが機器の改良により、最新の機種では手技も簡略化され外来でも測定可能となっており、病院・医院、健診施設で積極的に導入する例が増えている。また今年に入りNHKのテレビ番組『ためしてガッテン』でも取り上げられるなど、医療関係者のみならず、患者・一般の認知も広まっている。

心臓病学会学術集会で血管内皮機能に関するセッション
 9月23日〜25日、神戸にて第59回日本心臓病学会学術集会が開催される。

 心臓病と密接な関係のある糖尿病については、心筋内微小循環、薬剤溶出ステント、網膜症と冠動脈疾患との関連など、数多くの切り口から多数の演題が予定されている。内皮機能についての演題も10演題を超え、2日目の午前8時からは「内皮機能評価:その実際と意義」というモーニングレクチャーがもたれるなど、心臓病領域ではとくに関心が高まっているようだ。

◇FMD関連情報:
[ KUBO ]
日本医療・健康情報研究所

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