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2011年09月19日
高血圧:成因関与の遺伝子多型を発見 世界規模のゲノム解析
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日本人では40〜74歳の人のうち男性は約6割、女性は約4割が高血圧(2006年国民健康・栄養調査)。高血圧はもっともありふれた生活習慣病で、糖尿病に高血圧を合併している人も多い。
高血圧の発症については、肥満や運動不足などの環境因子だけでなく、遺伝因子の影響も大きいことがわかっている。こうしたなか、梅村敏・横浜市立大学教授、三木哲郎・愛媛大学教授、荻原俊男・大阪大学名誉教授、上島弘嗣・滋賀医科大学名誉教授、久保孝義・東北大学大准教授、岩井直温・国立循環器病センター部長らでつくる研究グループは、全世界で10億人以上が罹患する高血圧の原因遺伝子解明を目的に設立された国際共同研究組織に参画した。
研究チームは、2009年から日本を含む世界24ヵ国の研究機関と共同で、世界のおよそ26万人の遺伝子を解析し、高血圧症の成因に関与する遺伝子を解明した。
高血圧症の9割は原因不明の高血圧症(本態性高血圧症)。食塩のとりすぎや肥満、運動不足、飲酒過多などの環境因子が原因であると、生活習慣の改善と薬物療法により血圧をコントロールできるが、本態性高血圧症の3〜4割の遺伝因子が関与していると考えられている。
研究では、20万人以上の欧米人サンプルと約3万人の東アジア人、約2.4万人の南アジア人、約2万人のアフリカ人のサンプルを用いて、全ゲノムの250万人の一塩基多型と血圧との関連を調べた。全世界の200以上の研究機関と約300人以上の研究者が参加し、ゲノム研究上最大の研究となった。
ヒトの遺伝子情報(ゲノム)は、数十億の塩基対から構成されるが、個々人でわずかな違いがある。その塩基配列の違いのうち0.1%ぐらいの頻度で認められるのが遺伝子多型で、そのうち一塩基だけ異なっているのが一塩基多型(SNP)。遺伝子多型の一部は病気のかかりやすさなどに影響し、遺伝的な個人差を知るてがかりとなると考えられている。
その結果、欧米人で28種、東アジアで9種、南アジア人で6種のSNPが血圧と関連することがあきらかになった。これらは水・電解質バランスや腎機能に関連しており、はじめて高血圧との関連がわかったものもある。「SLC39A8」や「ATP2B1」など28種類をもつ人は、高血圧や左心室機能に関わっており、もたない人に比べて発症が2〜3割増えることをつきとめた。
高血圧の発症にもっとも強い影響を及ぼすのは「ATP2B1」という遺伝子で、これを含む4種類の遺伝子の組み合わせによっては、最もリスクが高い人は、最も低い人の2倍以上高血圧になりやすかったという。
遺伝因子が明らかになると、個々の人の遺伝子に合わせて最適な予防・治療を行う「テーラーメイド医療」を実現できる。高血圧の予防や治療薬の開発にもつながる成果として注目されている。
この研究は科学誌「Nature」オンライン版に9月11日付で発表された。
Genetic variants in novel pathways influence blood pressure and cardiovascular disease risk
Nature, 2011 doi:10.1038/nature10405
大学院医学研究科 梅村敏教授らの研究グループが、全世界26万人以上を対象とした国際共同研究において、高血圧症に関連する遺伝子を解明(横浜市立大学 平成23年9月12日)
高血圧に関連する遺伝子の解明に成功(愛媛大学 2011年09月15日)
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