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2021年02月25日

【新型コロナ】コロナ禍で生活や意識はどう変化した? 働き方とライフスタイルはこう変わった

 東京大学社会科学研究所が、「働き方とライフスタイルの変化に関する全国調査2020年ウェブ特別調査」の結果を発表した。
 コロナ禍での生活や意識の変化について、8割以上の人が「旅行・イベントへの参加」「感染の収束」「不況の長期化・深刻化」「予防物資の不足」「政府の対応」「正しい情報の欠如」について不安を抱いていたことが分かった。
 また、社会的孤立のリスクが高まっており、高齢者など、もともと孤立しやすい背景をもつ人々がリスクを高めていることが分かった。
 さらに、多くの⼈々が対⾯でのコミュニケーションがとれなくなり、⾳声やビデオでの通話によるやり取りに切り替えたが、それらは社会ネットワークを補完するものではなく、⼈々の通話によるネットワークはむしろ縮⼩していることも示された。
 ⽇本社会では、対⾯を前提せずオンラインで⾃⼰完結するコミュニティはまだ⼀般的ではない可能性がある。
コロナ禍での不安や健康と⽣活意識の変化を調査
 東京大学社会科学研究所が、「働き方とライフスタイルの変化に関する全国調査2020年ウェブ特別調査」の結果を発表した。研究は、石田浩・東京大学特別教授、石田賢示・同大学社会科学研究所准教授、大久保将貴・同大学社会科学研究所助教によるもの。

 同研究所は、総合的な社会調査である「働き⽅とライフスタイルの変化に関するパネル調査」(JLPS)を、2007年に若年者(20~34歳)と壮年者(35~40歳)を対象に実施し、その後毎年、対象者を追跡(若年・壮年継続サンプル)している。

 2011年には同年齢の対象者のサンプルを補充(若年・壮年追加サンプル)し、さらに2019年には調査対象者よりも若い20~31歳の若年者を新たに抽出(若年リフレッシュサンプル)し、毎年追跡している。

 これらのJLPSの対象者に対して、このほど2020年8⽉下旬~11⽉上旬にかけて特別調査を実施した。回答数は3,740人。調査内容に、コロナ禍、とりわけ緊急事態宣⾔前後の⽣活経験についての事項が含まれる。

 調査の⽬的のひとつは、新型コロナウイルス感染症の拡⼤が⼈々にどのような影響を及ぼしているのかを検証することだった。

 そこで、「新型コロナウイルス感染症に関連して、以下の⽣活⾯で不安に感じることはありましたか」という質問を⾏い、11項⽬に関して「緊急事態宣⾔下」(2020年4⽉~5⽉)と「現在」(同年9⽉~10⽉)の2つの時期について「不安があった」か「不安はなかった」の2択で選択してもらった。
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緊急事態宣⾔が解除されても不安は解消されなかった
 その結果、緊急事態宣⾔下(4⽉〜5⽉)の時期には、8割以上の⼈が「旅⾏・イベントへの参加」「感染の収束」「不況の⻑期化・深刻化」「予防物資の不⾜」「政府の対応」「正しい情報の⽋如」について不安を抱いていたことが分かった。

 さらに、ほぼ半数の人は、「通院・⼊院」「子供の学習への影響」「収⼊減への⽣活⽀援」「精神的安定」の項⽬について、「不安があった」と回答した。

 それでは、緊急事態宣⾔が解除された後には、不安は改善したのだろうか。2020年9⽉~10⽉の時点でも、「不況の⻑期化・深刻化」「旅⾏・イベントへの参加」「感染の収束」「政府の対応」について8割前後の人が依然として不安を抱いていたことが分かった。

 「感染予防物資の不⾜」については、マスクやアルコール消毒液の⼊⼿が⼤きく改善され、⼤きな不安の要素とはなくなっていた。しかし、「通院・⼊院」「収⼊減にともなう⽣活⽀援」「子供の学習への影響」については半数弱の回答者が不安要素として挙げた。

 つまり2020年秋の段階でも、⼈々の⽣活⾯での不安要素はそれなりに⾼いレベルにあったと考えられる。
コロナ禍で不安を感じやすいのはどんな人か
 次に、すべての項⽬を⾜して不安スコアを測定した。不安スコアでは、ゼロ(不安がまったくない)から10(すべての項⽬で不安)の値をみて、その分布を⽰した。

 すると、2020年春の緊急事態宣⾔下では、8,9,10といった⾼いスコアを⽰す回答者が47%と半分近くになった。ほとんどすべての項⽬で、不安があると感じた回答者が半数近くに上った。

 これに対して2020年秋の時点では、不安スコアの分布はより均⼀化し、8,9,10の⾼いスコアの回答者の割合は4分の1に減った。スコアが0~3の回答者も4分の1弱を占めた。

 研究グループがこの不安スコアを⽤いて、どのような⼈が不安スコアが⾼いかを分析したところ、次の傾向がみられた――。

■ ⼥性や高齢者が不安を感じやすい
 男性の⽅が⼥性よりも不安スコアは低い傾向にあり、⼥性の⽅が⼀般的に不安を感じやすい傾向がみられた。また、年齢が⾼くなると、不安は⾼くなる傾向がある。

■ 高学歴者は不安を感じにくい
 ⼤学・⼤学院学歴の場合には、中学・⾼校学歴よりも不安スコアが低く、不安を感じにくい傾向がある。⾼学歴の⽅が情報収集のスキルが⾼く、在宅勤務など感染リスクを減らす働き⽅をしやすいので、不安を感じにくい可能性がある。

■ 単⾝者は不安を感じにくい
 単⾝者は複数⼈の世帯と⽐較して、不安スコアが低い傾向がある。単⾝の場合には、家庭にウイルスを持ち込み、同居家族を感染させてしまうという不安が少ないと考えられる。

■ 専⾨・管理職は不安を感じにくい
 専⾨・管理職の場合には、ブルーカラー職と⽐較して、不安スコアが低い。専⾨・管理職従事者は、通勤を回避しオンラインで働くなど、よりフレキシブルな働き⽅が可能である職種であることが関連していると考えられる。年代、配偶関係、都市規模、従業上の地位の違いは、不安の程度とは関連がみられなかった。
社会経済的に不利な状況にある⼈が不安を感じやすい
 さらに、「収⼊の減少にともなう⽣活への⽀援」について調べたところ、どのような⼈が収⼊減による⽣活への⽀援に関して不安に感じているのかを分析した。

 収⼊減にともなう経済⾯の不安は、不安全般とは異なり、男性の⽅が⼥性よりも不安を感じやすい傾向があることが分かった。

 学歴に関しては、⾼学歴層で経済不安は低く、中学・⾼校学歴の低学歴層は、⼤学・⼤学院の⾼学歴層に⽐べて、経済的な不安を1.7倍感じやすい。

 また、雇⽤状況が経済不安に関連しており、現職が「⾮正規(パート・派遣・請負)」「⾃営・家族従業者」である場合には、「経営者・正規社員」である場合に⽐べ、経済不安を感じやすいことが分かった。

 ブルーカラー職の場合は、専⾨・管理職に比べ経済不安を感じやすく、とくに「⾃営・家族従業者」は、「経営者・正規社員」に⽐べ、経済的不安を2.6倍感じやすい。これは、緊急事態宣⾔下の時短営業などの影響が直接的にあらわれていると考えられる。

 低学歴層や⾮正規労働者を含め、社会経済的に不利な状況にある⼈の⽅が、経済不安度が明らかに⾼いことが示された。
コロナ禍で健康と⽣活意識はこう変化した
 2020年ウェブ特別調査では、2019年1⽉~3⽉の調査と、2020年1⽉~3⽉の調査を比較し、同⼀の調査項⽬について、変化の軌跡も明らかにしている。

 研究グループは、主観的な健康状態について質問した。「あなたは⾃分の健康状態についてどのように感じていますか」という質問に対し、ほぼ半数が「変化がなかった」と感じているのに対し、「良くなった」という人は3割弱、逆に「悪くなった」という人は2割弱に上った。

同様に、6つの健康関連項⽬と5つの⽣活関連項⽬について質問した。▼精神的健康、▼健康上の理由により家事や仕事などの活動の制限(活動制限)、▼⽣活の将来展望、▼将来の⾃分の仕事や⽣活への希望、▼現在の暮らし向きなどについて質問した。

 その結果、どの項⽬も「変化なし」と感じているひとがほぼ半数かそれ以上だったが、「悪い⽅向で変化した」が「良い⽅向で変化した」に⽐べ明らかに多かった項⽬として、「楽しい気分だった」「⽣活満⾜度」「将来の仕事や⽣活に希望」の3つが浮かび上がった。

 新型コロナウイルス感染症が拡⼤しても、必ずしも健康・⽣活の領域のすべてで悪化の⽅向に傾いたわけではないことが示された。
コロナ禍で健康と⽣活が⼤きく損なわれたわけではない
 研究グループは、新型コロナウイルス感染症の拡⼤の時期のインパクトがどれだけあったかを知るために、2019年1⽉~3⽉の時点と2020年1⽉~3⽉の時点の間の変化についてもパターンを調べた。

 その結果、どの項⽬も「変化なし」がもっとも多く、悪い⽅向に変化したのが多かった項⽬は、「楽しい気分であった」「10年後の暮らし向き」の2つだけだった。

 新型コロナウイルスの感染症が拡⼤する以前には、「10年後の暮らし向き」「仕事満⾜度」「健康により家事や仕事などが制限されたこと」の項⽬で、「悪くなった⽐率」が相対的に⾼かった。

 それに対し、コロナ禍を経験した後には、「⽣活満⾜度」「かなり神経質であったこと」の項⽬が相対的に⾼くなったものの、全体的にみると、コロナ禍で健康と⽣活に関わる状況が⼤きく損なわれたという結果にはなっていない。
コロナ禍で社会的孤⽴の問題がより深刻に
 研究グループは、コロナ禍での「社会的孤立」のリスクの格差の蓄積についても調査した。

 社会的孤⽴とは、他者とのあいだに⼀切、あるいはほとんど社会的なつながりのない状態を指す。社会的なつながりにはさまざまなものがあり、個⼈的な友⼈関係、家族・親族といった⾎縁、近隣などとの地縁、仕事上の⼈間関係が典型例だ。

 これらの多種多様な社会的なつながり全体のことを社会ネットワークと呼んでいるが、それが⽋如した状態が社会的孤⽴といえる。これは、とくに⾼齢者にとって深刻で、他者との交流がないことにより、外出が少なくなり⽇常的な運動不⾜におちいり、話し相⼿がいないことによるストレスなどを通じ、⼼⾝の健康悪化を引き起こす可能性がある。

 これらの問題は若年・壮年者にあてはまらないわけではない。⾼齢者に⽐べて社会的孤⽴が⽣じにくいライフステージにいるので、問題として認知されにくいが、孤⽴による潜在的な⽣活上のリスクはありうる。

 社会的孤⽴のリスクは、コロナ禍でより深刻化している可能性がある。この感染症が人々の⾝体的接触により広がることから、世界中の都市でロックダウンが実施され、⽇本でも緊急事態宣⾔が実施されたため、社会的、経済的活動が⼤きく制限された。

 外出⾃粛が強く呼びかけられ、全国的に多くの⼈々が要請を積極的に受け⼊れた結果、対⾯でコミュニケーションをとることが激減し、社会的孤⽴のリスクが広く⽣じている可能性がある。
オンラインでは対⾯でのコミュニケーションを補完できない?
 研究グループは今回の調査で、社会ネットワークサイズのコロナ禍前後での推移を分析し、孤⽴リスクの変化についてどのような格差があるかを検証した。

 社会ネットワークサイズについて、「直接会ってあいさつや会話をする⼈」(対⾯)、「電話・携帯により会話をする⼈」(通話)、「携帯・パソコンなどによりメールをする⼈」(メール・メッセージ)の3種類の⼈数を尋ねた。

 その結果、対⾯のネットワークサイズの分布は、コロナ禍の前後で明確に異なり、コロナ禍で減少したことが分かった。「6~10⼈」以上のカテゴリでのパーセンテージが減少し、「4~5⼈」以下の割合が上昇したことが分かった。

 新型コロナウイルス感染症の拡大とともに「3密」(密集、密閉、密接)を避けるよう呼びかけられ、ソーシャル・ディスタンシングの遵守が求められた結果、在宅勤務などにより職場の同僚と会う機会や、地域や個⼈的な交友関係のなかでの会合が減り、対⾯で接触する⼈数が少なくなったと考えられる。

 さらに、メッセージアプリの通話機能や、コロナ禍で急速に普及したビデオ通話アプリなど、オンラインで維持されるネットワークについても、ネットワークサイズの減少を緩和させていないことも示された。通話のネットワークサイズは、調査時点を通じて「2~3⼈」以下であり、「0⼈」という回答も多かった。

 これらは対⾯でのコミュニケーションを補完する役割を果たすことが期待されていたが、実際には対⾯のネットワークサイズの減少を補ってはいないことが示された。

 さらに、コロナ禍での通話のネットワークサイズがゼロである者の割合は、それ以前の調査時期と⽐べても⼤きくなっており、直前の2020年1~3⽉の21%よりも13ポイント上昇し、34%に上った。

 多くの⼈々が対⾯でのコミュニケーションがとれなくなり、⾳声ないしビデオでの通話によるやり取りに切り替えたが、メール・メッセージによるネットワークは社会ネットワーク全体を補完するものではなく、⼈々の通話によるネットワークはむしろ縮⼩している。

 ⽇本社会では、社会ネットワークの基盤は依然として職業⽣活、家庭⽣活などでの役割関係にもとづいており、対⾯を前提せずオンラインで⾃⼰完結するコミュニティはまだ⼀般的ではない可能性がある。
日本人の多くがCOVID-19のリスクを過大に見積もっている
 さらに、海外では、新型コロナウイルス感染症のリスクを過⼤に⾒積もる⼈が、ソーシャル・ディスタンシング(SD)を守らないという「宿命的効果」が指摘されているが、日本でもこの効果が観察されるのかが調査された。

 その結果、日本では多くの人(約87%)が実効再生産数(COVID-19に対するリスク認知)を過大に見積もる傾向があり、そうした人は換気をしたり、外食を控えるなどの対策をしている傾向があることが分かった。

 日本では、実効再⽣産数の過⼤な認知がSDやCOVID-19の備えを抑制するという「宿命的効果」はみられず、むしろ実効再⽣産数の過⼤な認知はこうした⾏動を促進することが示された。

 「新型コロナウイルス感染症に焦点を当てた社会調査はすでに散⾒されるものの、コロナ前の情報を活⽤できる調査データはまだ多くありません。JLPSは、コロナ前の仕事や⽇常⽣活についての状況が、コロナ禍の経験にどのような影響を与えたのかを検証するうえでも有⼒といえます」と、研究者は述べている。

東京大学社会科学研究所
東京大学社会科学研究所附属 社会調査・データアーカイブ研究センター
働き方とライフスタイルの変化に関する全国調査
[ Terahata ]

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