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2022年04月07日

コロナ禍で「脂肪肝」が増加 糖尿病などの代謝異常が関わる新たな脂肪肝「MAFLD」とは?

 肝臓に中性脂肪がたまる「脂肪肝」は、健康診断で多くの人にみつかる病気だ。

 不健康な食事・運動不足・アルコールの飲み過ぎ、ストレスなど、生活スタイルの乱れを背景に、脂肪肝は増えている。

 新型コロナの拡大の影響で、肥満や2型糖尿病などの代謝異常が関わる脂肪肝「MAFLD」が増えていることが、大阪市立大学の調査で明らかになった。

コロナ禍で運動不足や食べ過ぎが増えた

 新型コロナの拡大の影響で、外出を自粛したり、リモートワークが増え、交流が制限された結果、多くの人が長時間座ったまま過ごす時間を増やし、運動不足になっているとみられる。

 とくに若い世代で、座ったままパソコンやスマホ、テレビを見て過ごす時間が長く、また高カロリーのジャンクフードの摂取が増え、過食や肥満になる危険性が高まっているという調査結果も報告されている。

 新型コロナの拡大は、多くの人にとってストレスになっている。その影響で、多くの人が飲酒量を増やしているという調査結果もある。アルコールの飲み過ぎは、脂肪肝のひとつだ。

 「仕事で座ったままの時間が長かったり、パソコンやテレビなどを長時間見るときには、30分ごとに立ち上がり、職場や自宅の近くを歩いたり、体操やストレッチなどで体を動かすよう努めるべきです。運動はストレス解消にも役立ちます」と、研究者はアドバイスしている。

コロナ禍で生活スタイルが変化 脂肪肝が増加

出典:大阪市立大学、2022年

糖尿病や肥満などの代謝異常があると脂肪肝はより危ない?

 肝臓に中性脂肪がたまる「脂肪肝」は、健康診断で多くの人にみつかる病気だ。食べ過ぎ・飲み過ぎ・運動不足などにより、中性脂肪が肝臓に多くたまった状態で、放置していると、動脈硬化・心筋梗塞・脳卒中などのリスクが高まり、肝硬変や肝がんに進展する場合もある。

 新型コロナの流行の前後で、健康診断を受診した人のデータを解析した結果、「代謝異常関連脂肪肝(MAFLD)」の患者が増えていることが、大阪市立大学の調査で明らかになった。

 MAFLDは、脂肪肝と代謝異常を合わせた新しい捉え方で、"危ない脂肪肝"を早期に発見して治療をするために提唱された。肥満や2型糖尿病などの代謝異常があると、脂肪肝はさらに進みやすくなるとみられている。

コロナ禍でMAFLDが増加 何が原因か?

 「代謝異常関連脂肪肝(MAFLD)」は、世界22ヵ国の国際パネルによって2020年に、脂肪肝の新たな診断基準として提唱された。

 MAFLDは、脂肪肝に加えて、(a) 2型糖尿病、(b) BMI(肥満指数)が23以上の過体重/肥満、(c) 代謝異常の3項目のいずれかが1つ以上ある状態と定義されているという。

 MAFLDは、食事や運動、ストレスなどの生活スタイルと密接に関連すると考えられているが、比較的新しい捉え方であり、どのような生活スタイルの人がなりやすいかはよく分かっていない。

 さらに、新型コロナの流行の前後で、MAFLD患者数が増加している可能性があるが、どのような生活スタイルの変化が関連しているかも不明だ。

MAFLD患者の増加に夜食・飲酒・欠食が関連

 そこで大阪市立大学は、健診受診者の新型コロナの流行の前後での、臨床検査データや生活習慣に関するアンケート結果を解析し、コロナ禍の影響でMAFLD患者が増えていることや、それには夜食・飲酒・欠食が関わっていることを明らかにした。

 研究グループは、あべのハルカスにある同大学医学部附属病院先端予防医療部附属クリニックMedCity21を、新型コロナの流行の前(2018~2019年)と後(2019~2020年)に、合計3回受診した973人の臨床データを縦断的に解析した。

 流行前には22人の、後には44人のMAFLD患者が、それぞれ新たに確認された。流行前には夜食(ハザード比2.54)が、流行後には飲酒(ハザード比1.03)がMAFLDの発生に関与していた。

 興味深いことに、60歳未満の人では、流行後に食事の欠食(1日2食のみ)をする人の割合が増えていた。

生活スタイルを見直すことでMAFLDは改善できる

 肥満や2型糖尿病などの代謝異常は、食事や運動、ストレス、適正体重の維持など、生活スタイルを見直すことで改善が可能だ。

 研究は、大阪市立大学大学院医学研究科先端予防医療学の藤井英樹講師、渡辺俊雄教授、肝胆膵病態内科学の河田則文教授らの研究グループによるもの。研究結果は、医学誌「Liver International」にオンライン掲載された。

 研究結果より、新型コロナの流行が続いている現在、とくに若い世代の人の生活スタイルの変化を注意深く観察し、乱れている人には積極的に指導を行うことが望まれるとしている。

 「コロナ禍になってから、外来診療で『運動が減って、太りました』という患者さんは増えています。今回の研究で、新たに飲酒や食生活の乱れがMAFLD発症に関連する可能性が示されました。最近、脂肪肝(とくにMAFLD)と言われた方は、ぜひこれらの点も確認してみて下さい」と、藤井氏は述べている。

糖尿病や肥満などの代謝異常が関わる脂肪肝「MAFLD」

出典:大阪市立大学、2022年

大阪市立大学先端予防医療学
Lifestyle changes during the coronavirus disease 2019 pandemic impact metabolic dysfunction-associated fatty liver disease (Liver International 2022年1月7日)
【特集】新型コロナウイルス感染症
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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