新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染した糖尿病患者は、血糖値が良好にコントロールされていると重症化リスクは上昇しないが、コントロールが不良であると死亡リスクが9倍近くに上昇するという調査結果を、ドイツ糖尿病研究センターやハインリッヒハイネ大学ライプニッツ糖尿病研究センターなどが発表した。

　研究グループは、22件の研究から1万7,687人の糖尿病患者を対象に分析。研究成果は欧州糖尿病学会(EASD)が発行する医学誌「Diabetologia」に掲載された。

　糖尿病は、新型コロナの重症化にかかわる危険因子のひとつと考えられている。糖尿病と新型コロナに関するいくつかの研究で、糖尿病の人はそうでない人に比べ、新型コロナに感染した場合の死亡リスクが2〜3倍に上昇することが示されている。

　しかし、リスクが高いのは血糖コントロールが不良な場合で、血糖コントロールが良好であれば、新型コロナの重症化リスクは糖尿病でない人に比べ変わらないという報告がある。

　「糖尿病のコントロールを良好に行っていれば、COVID-19に感染した場合の重症化リスクを抑えられると考えられます。逆に、糖尿病に関連する健康の状態が良好でない状態で感染すると、病状が重くなるおそれがあります。1型糖尿病や2型糖尿病といった糖尿病のタイプ、年齢、合併症の有無に関わらず、糖尿病を良好にコントロールするために、ふだんから治療に取組むことが重要です」と、米国糖尿病学会(ADA)では述べている。 　今回の研究は、血糖値が108mg/dLと良好にコントロールされていると、重症化リスクは上昇しないが、入院時および死亡時に血糖値が198mg/dLとコントロールが不良であると、新型コロナによる死亡リスクが8.6倍に上昇するという結果になった(2件の研究から)。

　さらに、新型コロナによる死亡リスクは、糖尿病の男性は女性に比べ28％高く、65歳以上の高齢者では3倍以上高いことが示された。高齢者の加齢の影響は大きく、年齢が5年上がるごとに、新型コロナ関連死の相対リスクは43％上昇した。

　さらに、血糖降下薬のメトホルミンで治療を受けている2型糖尿病患者は、そうでない患者に比べ、新型コロナで死亡する可能性が50％低かった(4件の研究から)。メトホルミンは多くの国で2型糖尿病の第一選択薬になっている。

　一方、インスリンを使用している患者は、そうでない患者に比べ、新型コロナで死亡する可能性が75％高いことも分かった(5件の研究から)。2型糖尿病の多くで、インスリンの使用は糖尿病の経過が進行していることを示している。

　糖尿病以外にも、新型コロナの重症化リスクを高める危険因子として、心血管疾患(56％上昇)、慢性腎臓病(CKD)(93％上昇)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)(40％上昇)などが挙げられた。

　ドイツ糖尿病センターのサブリナ シュレシンジャー氏は「今回の研究は、COVID-19と糖尿病の関連について、現時点での調査結果を示したもので、今後新しい報告があると更新されえるものです。糖尿病の状態や治療内容、罹病期間などの要因がCOVID-19の重症化にどのように関わっているかを知るために、さらに研究が必要です」と述べている。

　「今回の研究では、糖尿病の治療の状態が良好でなかったり、男性・高齢者であると、重症化リスクが上昇することが示されました」としている。

　「糖尿病などの基礎疾患のある方は、新型コロナに対策するためにも、ふだんから治療を受け、状態を良好に保つことが重要です」と指摘している。

Risk factors for a severe course of COVID-19 in people with diabetes(ドイツ糖尿病研究センター DZD 2021年4月29日)
Risk phenotypes of diabetes and association with COVID-19 severity and death: a living systematic review and meta-analysis(Diabetologia 2021年4月28日)
Diabetes and Coronavirus (COVID-19)(米国糖尿病学会)