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2022年02月10日

【新型コロナ】健康的な食事で新型コロナのリスクを減少 植物ベースの食事で血糖値も低下

 健康的な食事スタイルにより、新型コロナの発症リスクと重症化リスクを、それぞれ減少できるという調査結果が発表された。

 植物ベースの食事を増やすと、新型コロナによる重症化と死亡のリスクを減少できるという研究も報告されている。

 肥満・糖尿病・高血圧などが新型コロナのリスクを上昇させるが、植物ベースの食事により血糖値やコレステロール値が低下するという。

 「新型コロナとの戦いで勝利をおさめるために、ワクチン接種を受けることと、健康的な食事と組み合わせることが必要です」と、医師は注意を呼びかけている。

健康的な食事スタイルで新型コロナに対策

 英国のキングス カレッジ ロンドンや、米国のハーバード大学医学大学院などの研究によると、健康的で質の高い食事をしている人は、新型コロナを発症したり、重症化するリスクが低くなる。逆に、質の低い食事をしている人は、新型コロナのより高いリスクにさらされることになる。

 「健康的な食事スタイルが、新型コロナの発症リスクを減らすことが示されました。より多くの人が健康的な食品にアクセスできるよう、社会整備を進めることが重要です。とくに経済的に恵まれない地域に住む人々にとっては、このことは深刻です」と、同大学のライフコース科学・栄養学のサラ ベリー氏は言う。

 研究グループは、専用のスマホアプリを使い約60万人を対象に、新型コロナな食事についての縦断研究を行った。新型コロナのパンデミックが起こる前の2020年2月から調査を始め、感染が拡大している時期を通して調査を継続した。

健康的な食事により重症化リスクが40%減少

 その結果、調査に協力した人の19%が新型コロナに感染したが、もっとも健康的で質の高い食事をしている人は、もっとも質の低い食事をしている人に比べ、新型コロナを発症するリスクが10%低く、重症化するリスクが40%低いことが明らかになった。

 健康的な食事は、野菜・全粒穀物・豆類・ナッツ類・大豆・果物などの植物性食品に加え、健康的な油が含まれる魚、加工度の少ない食品、吸収の遅い糖質が含まれる食品などを多く摂る食事スタイルと関連していた。

 逆に不健康な食事は、高カロリーの超加工食品や動物性食品を多く食べ、植物性食品をあまり食べない食事スタイルと関連していた。

植物ベースの食事を増やすと新型コロナのリスクが低下

 健康に配慮して、動物性食品を食べる機会を減らしたり、家畜の飼育で大量の飼料や水が使われることもあり、環境保全にも配慮して、肉類を敬遠する人は世界的に増えている。

 オミクロン株が世界的に記録的な数の感染を引き起こしているのを受け、米ワシントンを拠点に活動している「責任ある医療のための医師委員会(PCRM)」は、「植物ベースの食事を増やすと、新型コロナによる重症化と死亡のリスクを減少できる可能性があります」と呼びかけている。

 「食事で植物性食品を増やすことは、毎日の生活で実行しやすく、費用効果の高いアプローチとなります。新型コロナと戦うために、ワクチン接種を受けることと、健康的な食事と組み合わせることは必要です」と、同医師委員会の臨床研究ディレクターであるハナ カレオワ氏らは言う。

肥満・糖尿病・高血圧などが新型コロナのリスクを上昇

 新型コロナのワクチンの有効性は、肥満・高血圧・脂質異常症・喫煙などの影響を受け、大幅に低下する可能性があるという。また、過体重・心臓病・高血圧・2型糖尿病・肺疾患など慢性疾患があると、新型コロナは重症化しやすくなり死亡リスクも上昇することが知られている。

 「こうした疾患は、食事スタイルや生活スタイルの影響を強く受けています。食事スタイルは改善することが可能であり、実際に健康的な食事をしている人は、新型コロナのウイルスに対し保護されているという報告があります」と、カレオワ氏らは言う。

 たとえば、6ヵ国(フランス・ドイツ・イタリア・スペイン・英国・米国)の医療従事者を対象とした調査では、568人の新型コロナの症例群と2,316人の対照群を比べた結果、植物ベースの食事スタイルによって、中等度から重度の新型コロナのリスクが73%低くなることが示された。

沖縄はかつて長寿国「ブルーゾーン」だった

 タンパク質は、肉・卵・牛乳・魚などに多く含まれる「動物性タンパク質」と、大豆・全粒穀物・豆類、ナッツ類・野菜などに含まれる「植物性タンパク質」に分けられる。

 タンパク質は動物性と植物性をバランス良く摂ることが大切だが、注意したいのは、動物性食品を食べ過ぎないようにした方が良いということだ。

 動物性タンパク質はアミノ酸スコアが高く、良質なタンパク源になるが、食べ過ぎると、体に悪い脂肪(飽和脂肪酸)やコレステロールが増えるおそれがある。

 植物性食品を中心とした食事スタイルの例として、同医師委員会は伝統的な沖縄の料理を挙げている。沖縄では、ハンバーガーなどの米国スタイルのファストフードが普及するまでは、緑黄色野菜、サツマイモや玄米など食物繊維が豊富に含まれる炭水化物食品、大豆などを多く食べ、豚肉なども脂肪をしっかり落として調理していた。

 沖縄は長く世界的にも平均寿命の長い地域だった。同医師委員会では、こうした健康的な食事スタイルにより長寿を実現している地域を、「ブルーゾーン」と呼んでいる。

植物ベースの食事により血糖値やコレステロール値が低下

 同医師委員会が最近に実施した臨床研究では、コロナ禍での植物ベースの食事は、米ワシントンDCの病院で働く人の健康と生活の質を改善するのに役立つことが示された。研究成果は、医学誌「American Journal of Medicine」に発表された。

 「植物ベースの食事は、病院で働く人の血圧値とコレステロール値の上昇を防ぐのに役立つことが示されました。これは、新型コロナの重症化と死亡のリスクを抑制することに関連し、医療従事者が良好な健康状態を維持することは、患者により良いサービスを提供するために重要です」と、同医師委員会のディレクターであるハナ カレオバ氏は言う。

 研究グループは、ワシントンDCのシブリー記念病院で働く人に、通常の食事を12週間続けてもらい、続く12週間の介入フェーズでは、低脂肪の植物ベースの食事に加えて、食事療法についてのクラスを受講してもらった。

 その結果、植物ベースの食事をしている期間は、体重・血圧・コレステロール・血糖値が大幅に低下した。平均すると、体重は5.7kg、空腹時血糖値は11.4mg/dL、悪玉のLDLコレステロールは30.7mg/dL、拡張期血圧(最低血圧)は8.5mmHg、それぞれ減少した。

 さらに、職場でのストレスと新型コロナのパンデミックによる過剰なストレスがあるにもかかわらず、植物ベースの食事により、生活の質と食事に対する全体的な満足度が向上した。

Eating a plant rich diet reduces risk of developing COVID-19 (キングス カレッジ ロンドン 2021年9月8日)
Diet quality and risk and severity of COVID-19: a prospective cohort study (Gut 2021年9月6日)
ZOE COVID Study - Help slow the spread of COVID-19
責任ある医療のための医師委員会 (Physicians Committee for Responsible Medicine)
As Omicron Variant Surges, Plant-Based Diet Is 'Booster' for Fighting Severe COVID-19, Say Doctors in New Commentary (責任ある医療のための医師委員会 2022年1月21日)
Can a plant-based diet help mitigate Covid-19? (European Journal of Clinical Nutrition 2022年1月21日)
Plant-based diets, pescatarian diets and COVID-19 severity: a population-based case-control study in six countries (BMJ Nutrition, Prevention & Health 2021月6月)
New Study: During the COVID-19 Pandemic, Hospital Workers Improved Heart Health and Quality of Life With a Plant-Based Diet (責任ある医療のための医師委員会 2021年11月12日)
Nutrition for Hospital Workers During a Crisis: Effect of a Plant-Based Dietary Intervention on Cardiometabolic Outcomes and Quality of Life in Healthcare Employees During the COVID-19 Pandemic (American Journal of Lifestyle Medicine November 2021年11月5日)
【特集】新型コロナウイルス感染症
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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