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2021年01月27日

【新型コロナ】コロナ禍でも通院を続ける理由 糖尿病を悪化させないために治療をストップしない

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大の影響を受けた2020年に、HbA1c検査の実施数が減っていたことが、東京大学などが国内186の病院を対象に行った調査で明らかになった。透析予防やフットケアなど、重症化予防の糖尿病ケアの実施数も減った。
 一方で、コロナ禍の前後で、通院の頻度が「変わらない」という患者では、HbA1cが悪化しないという調査結果も発表されている。
 糖尿病のコントロールを悪くしないために、感染防止の十分な注意をしながら、かかりつけの医療機関への受診を継続していくことが重要であることがあらためて示された。
コロナ禍でHbA1c検査の実施数が減少 重症化予防の検査も減少
 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の2020年の流行時、糖尿病のケアが重症化予防(透析予防、フットケアなど)も含めて減少していことが、大規模診療データベースを用いた分析で明らかになった。

 研究は、東京大学大学院医学系研究科・公衆衛生学教室の宮脇敦士助教、池洲諒医師(博士課程)、小林廉毅教授のチームが、メディカル・データ・ビジョンの中村正樹氏、データックの二宮英樹氏、および国立国際医療研究センター研究所 糖尿病情報センターの杉山雄大室長と共同で行ったもの。研究の詳細は、米国の総合内科雑誌「Journal of General Internal Medicine」に掲載された。

 COVID-19の感染リスクを警戒して、2020年4月に1回目の緊急事態宣言が発令される前後には、糖尿病患者が定期受診を延期するケースがみられた。糖尿病ケアの実施数が減少すると、公衆衛生上、重大な影響を与える可能性があるが、糖尿病ケアの実施数が実際にどの程度、減少していたかは分かっていなかった。

 そこで研究グループは、メディカル・データ・ビジョンが構築した国内最大規模の急性期病院の診療データベースを使用し、2020年年初にあたる同年第2~8週と、同年の同緊急宣言が発令されていた期間の前半を含む第9~17週目の間に、外来診療で実施された1週間当たりの糖尿病患者の定期検査およびケアの実施数を186の病院で比較した。

 その結果、糖尿病患者が定期的な血液検査で測定されるHbA1c検査の1週間あたりの実施数は、2020年第2~8週に5万2392件/週だったのが、同年第9~17週には4万4406件/週となり、15.2%減少した。HbA1cは過去1~2ヵ月の血糖値の平均を反映しており、血糖コントロールの指標となる。

 その他にも、血清クレアチニン検査、尿タンパク検査、眼底検査、糖尿病フットケアサービス、および糖尿病腎ケアサービス(透析予防)を含むすべての検査およびケアの実施数も減少したことが明らかになった。

コロナ禍で糖尿病のケアが重症化予防(透析予防、フットケアなど)も含めて減少
出典:データック、2021年
ビッグデータがより良い医療体制づくりに役立つ
 「COVID-19の感染拡大にともない、COVID-19以外に関する医療提供体制や患者受診行動に大きな変化が起きました。それらの変化の中には"感染収束後には戻る一時的な変化"と"感染収束後も続く永続的変化"があります」と、二宮医師は述べている。

 「後者に関しては、例えばオンライン診療やウェアラブルデータを用いた診療など、将来的に起きつつある変化が、今回を契機に一気に加速したものも含まれています」。

 「リアルワールドデータは万能ではありませんが、私たちは医療の変化を定量的に捉えることで、より良い医療提供体制や政策に対して貢献をしていきたいです」としている。

 「(コロナ禍の前後で)糖尿病患者の血糖値コントロールがどのくらい悪くなったのか(それとも変わっていないのか)が今後の検討課題になります」と、東大大学院の宮脇助教はコメントしている。
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かかりつけ医への受診を継続していくことが重要
 一方で、新型コロナ感染症が拡大する前後で、通院の頻度が「変わらない」という患者では、HbA1cの悪化がみられなかったという調査も発表されている。

 感染症が蔓延しているなかでも、治療を効果的に行うため、感染防止の十分な注意をしながら、かかりつけ医への受診を継続していくことが重要であることがあらためて示された。

 これは、⽇本医師会総合政策研究機構(⽇医総研)が公表したもので、各地のかかりつけ医が参加協力している日本医師会かかりつけ医データベース研究事業(J-DOME)の症例データを用いて、糖尿病患者の受診控えの影響を分析した。

 具体的には、かかりつけ医に定期通院している2型糖尿病患者の2年分のデータから、対面の通院回数の減少が血糖コントロール(HbA1c値)に与えた影響を把握した。J-DOMEの糖尿病症例のうち、2019年4月~12月の間と2020年4月~9月の間の両方に登録がある症例を分析対象とした。

 対象となる症例数は907となった。それらの症例を対象に通院回数が「大きく減少」「やや減少」「変わらない」症例についてHbA1c値などの検査結果値の変化を調べた。
通院が「変わらない」糖尿病患者のHbA1cは悪化しない
出典:⽇本医師会総合政策研究機構、2020年
 その結果、新型コロナ感染症が蔓延する2020年4月~9月の間に通院が「大きく減少した」症例は4.9%を占めた。「やや減少した」が13.1%、「変わらない」が82.0%を占めた。

 通院が大きく減少した症例のHbA1cは2019年に平均7.20%であったが、2020年に0.55%増加し7.75%に悪化した。通院がやや減少した症例では-0.04%変化、通院が変わらない症例は-0.07%変化し、HbA1cの悪化がみられなかった。これら3群のHbA1cの変化量には有意差がみられた。

 通院回数が大きく減少した群では女性が50%を占め、他群に比べて高い傾向がみられた。大きく減少した群の平均年齢は60.7歳、やや減少した群は63.7歳、変わらない群は67.2歳で、通院の減少は年齢の若い糖尿病患者に多いことが示唆された。

 また収縮期血圧、拡張期血圧の1年後の変化量も、通院回数の変化による差がみられ、通院が大きく減少した群ではより悪化の傾向がみられた。
かかりつけ医との継続的なコミュニケーションが重要
 ⽇医総研では「コロナ禍にあっても患者の継続的な受診が、効果的な治療には重要であることが示唆されました。通院が大きく減少した群の悪化理由は、処方や指導が行われず治療薬の継続性が失われた可能性や、直近の血液検査値がわからず治療への意識が下がったことなどが推測されます」と考察している。

 「また、女性患者の受診回数の減少が顕著にみられたのは、既存の調査でも示されているように、女性のほうがコロナ禍で医療機関受診を控える傾向が強いことも影響していると考えられます」。

 「医師と患者の間での情報共有を行うためにも、かかりつけ医との継続的なコミュニケーションが重要であることが、あらためて示されました」としている。
9割超が予定通り受診「病院が感染対策を徹底しているので不安はない」
 メディカル・データ・ビジョンが、COVID-19拡大で政府が発令した2度目の緊急事態宣言をふまえて、患者対象に行ったアンケートでは、「病院が感染対策を徹底しているので不安はない」などとして、9割超が予定通り医療機関を受診する意向であることが示された。

 調査は、同宣言が発令された2021年1月7日~12日までの6日間、健康・医療情報を自ら管理できるPHR(パーソナルヘルスレコード)システム「カルテコ」の利用者を対象にウェブで実施。

 同宣言発令後の医療機関の受診をどうするかを849人に聞いたところ、「予定通り受診する」が93.6%だった。

 その理由として、「前回(昨年4月)の緊急事態宣言発令では延期したが、結局は受診しなくてはならなかったため」「病院は感染防止対策を徹底しているから不安はない」「処方されている薬がなくなると困るため」「病気の悪化、再発が心配なため」「病院で採血して現在の検査値を知りたいから」などといった声が聞かれた。

 医療機関に行かなくていい電話やPCなどを通じたオンライン診療の利用を検討しているかどうかについて聞いたところ、「検討している」が約4割で、「検討していない」は3割弱だった。

メディカル・データ・ビジョン調べ
出典:メディカル・データ・ビジョン、2021年

Trends in Diabetes Care during the COVID-19 Outbreak in Japan: an Observational Study(Journal of General Internal Medicine 2021年1月19日)

東京大学大学院医学系研究科・公衆衛生学教室

メディカル・データ・ビジョン

データック

国立国際医療研究センター研究所 糖尿病情報センター

⽇本医師会総合政策研究機構(⽇医総研)

日本医師会 J-DOME:Japan medical association Database Of clinical MEdicine
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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