ニュース

2021年01月26日

スマホの運動アプリで1日の歩数を2000歩増やせる 糖尿病の運動療法にも応用

 スマートフォンの運動アプリや活動量計を使うことで、ウォーキングの1日歩数を2,000歩近く増やせることが、オーストラリアのシドニー大学の研究で明らかになった。
 歩数を2,000歩増やしただけでも、心血管疾患、2型糖尿病、ある種のがんなどの慢性疾患のリスクを下げることができる。
 新型コロナの拡大の影響で、ウォーキングなどの運動への関心は世界中で、オンラインでかつてないほど高まっていることも分かった。
スマホアプリでウォーキングの歩数を2,000歩近く増やせる
 スマホの運動アプリと活動量計を使うことで、ウォーキングの1日歩数を2,000歩近く増やせることが、オーストラリアのシドニー大学の研究で明らかになった。

 多くの人が日常で利用しているスマホとアプリを使うことで、身体活動を効果的に増やせるのは魅力的だ。

 最近の調査によると、オーストラリア人の91%がスマートフォンを所有し、22%が活動量計を所有しており、4分の1がアプリやウェブサイトを利用してウォーキングなどの身体活動の記録をとっているという。

 スマホの運動アプリを利用すれば、毎日の歩数、中程度~活発な身体活動の1週間の分数、1週間の運動日数、1週間の総身体活動時間、運動中の酸素摂取量の推定値など、さまざまな身体活動を測定できる。

 歩数などを記録できるアプリに加えて、最近は、ウォーキングに取り組むユーザーをオンラインで結び、歩数を増やすことを互いに励ましあったりする機能のついたアプリも出ている。

 「かつての単純な機能しか付いていない歩数計や加速度計に比べ、現在のスマホやアプリは、驚くほど多彩な機能が盛り込まれています。これらを運動習慣の促進や、生活スタイルの改善に利用すれば、1日あたりの歩数を2,000歩増やすことが可能だと分かりました」と、シドニー大学医学・健康学のリリアナ ラランホ氏は言う。
応援メッセージを送信する機能のあるアプリも
 研究グループは、運動アプリと活動量計を使いランダム化比較試験を行った28件の研究を解析。参加者は計7,454人で、年齢は18〜65歳、28%が女性だった。

 その結果、運動アプリと活動量計を同時に使った人は、それらを使わなかった人に比べ、1日の歩数を平均1,850歩増やしたことが示された。研究成果は、医学誌「ブリティッシュ ジャーナル オブ スポーツ メディシン」に掲載された。

 「歩数を1日2,000歩増やしただけでも、心血管疾患、2型糖尿病、ある種のがんなどの慢性疾患のリスクを下げることができます。さらには、生活の質(QOL)を改善し、早死のリスクを低減できます」と、ラランホ氏は言う。

 「アプリによっては、励ましの応援メッセージを毎日送信する機能などが備わったものがあり、今回対象としたほとんどの研究でも、個別化やテキスト メッセージングなどの機能のあるアプリを使っていました。こうした特定の機能が、身体活動を増加させるのに効果的である可能性があります」。
COVID-19の拡大をきっかけに、運動への関心は世界中で高まっている
 「今回の研究は、個々の身体活動の改善に介入するために、どのような設計と実施が効果的であるかを示したものです。運動療法を処方し、患者の行動変容をサポートしている臨床医にとっても価値があるものです」と、シドニー大学チャールズ パーキンス センターの行動変容医学が専門のメロディ ディング准教授は言う。

 ディング准教授らが医学誌「ブリティッシュ ジャーナル オブ スポーツ メディシン」に発表した別の研究によると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックの影響で、運動への関心は世界中で、オンラインでかつてないほど高まっている。

 COVID-19の拡大を受け、都市閉鎖(ロックダウン)が、オーストラリアや英国、米国などで2020年3月に開始された。その時期に合わせて、Googleで「運動」「室内でできる運動」といったキーワードが多く検索され、「テレビ視聴」「テレビ番組」といったキーワードの検索数を上回った国も出た。

 オーストラリアと英国では、都市封鎖の後の最初の2週間は、「運動」という言葉の検索回数は「テレビ番組」を上回った。また、Googleトレンドの記録によると、「運動」に対する人口レベルの関心は、2020年4月の時点で、2004年以降で最高に高まった。

新型コロナのパンデミックの影響で、多くの国で
グーグルでの「運動」の検索は「テレビ視聴」を上回った

出典:シドニー大学、2020年
多くの人々が少しずつリスクを軽減
 「新型コロナの拡大により、世界中に深刻な混乱がもたらされました。しかしこれは、スマホのアプリや活動量計で得られる行動変化のサポートとともに、運動に対する関心を高めることで、コミュニティの身体活動を後押しできる絶好の機会が到来しているともいえます」と、ディング准教授は述べている。

 「心臓病や糖尿病などの主要な慢性疾患を予防するために、ポピュレーション アプローチ、すなわち多くの人々が少しずつリスクを軽減することで、集団全体に多大な恩恵をもたらすことが求められます」。

 英ケンブリッジ大学などが168ヵ国のデータをもとにまとめた研究によると、週にウォーキングなどの活発な運動を150分、あるいは強度の高めの運動を75分行うことで、毎年390万人以上の早期死亡を防ぐことができる。

 「現在は、ガーミンなどの小型・防水のウェアラブル機器を多くの人が利用しており、これらの多くにフィットネスとウェルネスの機能が搭載されています。こうしたスマホのアプリや活動量計を上手に活用し、身体活動レベルの大幅に高めることが期待されます」と、ディング准教授は指摘している。

Physical activity levels increased by smartphone apps and fitness trackers(シドニー大学 2020年12月22日)
Do smartphone applications and activity trackers increase physical activity in adults? Systematic review, meta-analysis and metaregression(British Journal of Sports Medicine 2020年12月22日)
Has COVID-19 boosted interest in physical activity?(シドニー大学 2020年7月2日)
Is the COVID-19 lockdown nudging people to be more active: a big data analysis(British Journal of Sports Medicine 2020年12月22日)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

play_circle_filled 記事の二次利用について

このページの
TOPへ ▲