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2021年07月02日

【新型コロナ】糖尿病患者はコロナ禍にどう向き合うべきか 困難を乗り越えるために 米国糖尿病学会

第81回米国糖尿病学会年次学術集会(ADA2021)

 「第81回米国糖尿病学会年次学術集会(ADA2021)」が6月25日~29日にWeb開催された。
 「糖尿病と新型コロナウイルス感染症(COVID-19)」についての発表が相次ぎ、新型コロナの拡大がもたらした未曾有の危機に、糖尿病の患者と医療従事者がどう立ち向かうべきかについて話し合われた。
糖尿病は新型コロナを重症化する最大の危険因子
 米国糖尿病学会(ADA)は、「第81回米国糖尿病学会年次学術集会(ADA2021)」で、5つの包括的なパネルシンポジウムを開催し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と糖尿病についての最新の所見を発表した。

 米国では2021年6月時点で、3,300万人以上が新型コロナに感染し、60万人以上が死亡している。

 糖尿病であり、さらに血糖コントロールが良好でなかったり、治療を受けていないと、新型コロナに感染し発症すると重症化しやすい。

 糖尿病とともに生きる人が、新型コロナの感染拡大に備えるときに、もっとも重要なのは必要な糖尿病の治療を受け、血糖コントロールを良好に保つことであることが、多くの調査で明らかになっている。

 糖尿病などの基礎疾患のある患者が新型コロナに感染すると、入院が必要になる割合が6倍に上昇することが示された。

 新型コロナに感染し死亡した米国人の40%で高血糖がみられ、新型コロナで入院した患者が糖尿病であると、10人に1人が1週間以内で死亡したという衝撃的な調査結果も公表されている。
血糖コントロールが良好であれば重症化しにくい
 テキサス大学代謝・栄養・運動研究所の所長であるスディップ バイペイ氏らが、369人の糖尿病患者を対象に行った調査でも、血糖コントロールが良好でない患者は新型コロナが重症化しやすいことが明らかになっている。

 逆に、血糖値が低くコントロールされている患者は、新型コロナが重症化しにくく、重篤な合併症も少なく、入院期間が短い傾向があることも確認された。

 米国は経済格差が大きく、富裕層に比べ貧困層では糖尿病の治療を十分な治療を受けられていない。この経済格差が、コロナ禍にも大きく影響している。

 新型コロナに感染して重症化した患者の多くは、糖尿病の治療を受けておらず、血糖コントロールが良好でない貧困層に多いことが明らかになった。

 コロナ禍の影響で収入が減り、米国人の5人に1人近くが必要な医薬品などを購入するのを困難に感じているという。とくにヒスパニック系やラテン系の米国人ではこの傾向が強い。

 「米国人の健康を改善するためには、健康格差を減らすことが必要で、そのために医療システムを改革する必要があります。医療上の不平等が家族や地域社会に与える影響をなるべくなくすことが必要です」と、米国糖尿病学会(ADA)のトレーシー ブラウン会長は述べている。
困難な状況下でも健康的な生活スタイルを維持することが必要
 新型コロナの拡大により、外出の自粛やリモートワークが増え、運動や身体活動が制限されたり、パソコン・テレビ・スマホなどの画面を見ている時間が増え、座ったままの時間が長くなり、不眠や不健康な加工食品の摂取が増えるなど、2型糖尿病の危険因子を増やした人が多い。

 コロナ禍により糖尿病のコントロールが困難になり、体重を増やした人も少なくない。糖尿病とともに生きる米国人の4人に1人以上が、健康的な食品にアクセスするのが難しくなったと感じているという調査結果もある。

 体重を短期間に少し増やしただけでも、2型糖尿病や心血管疾患などのリスクが長期的に上昇する可能性がある。

 新型コロナの拡大は、成人だけでなく小児の患者にも深刻な影響をもたらした。

 ロサンゼルスのレイク小児病院が2型糖尿病の小児患者を対象に行った調査によると、2019年とコロナ禍が始まった2020年を比べると、小児患者の入院率は上昇し、HbA1cも高い傾向があり、糖尿病性ケトアシドーシスや高浸透圧高血糖症候群により集中治療室での治療を必要となったケースも増えた。

 「残念ながら、新型コロナは私たちが理解しているよりも多くの方面で私たちの生活を混乱させています。このような困難な状況下でも、健康的な生活スタイルを維持することが重要であることが示されています。このことは、成人だけでなく、子供にもあてはまります」と、ペニントン生物医学研究センターのダニエル シア氏は述べている。
いまこそ力をひとつに集めるべき
 「この16ヵ月間で、糖尿病が新型コロナを重篤化するもっとも重要な危険因子のひとつであることが明らかになり、糖尿病の治療が重要であるという意識がより強く求められるようになりました」と、ADAの医療科学部門の最高責任者であるロバート ガッベイ氏は述べている。

 「新型コロナのパンデミックにより、糖尿病とともに生きる人々は深刻な打撃を受けています。また、この新型コロナ時代に、糖尿病とともに生きる人々を助けるために、世界中の研究者が、新型コロナの影響とどのような介入が効果的かを明らかにするため、精力的に研究に取り組んでいます」。

 「わたしたちは、これまでの新型コロナに関する研究成果を共有し、糖尿病の治療をより前進させるために、力をひとつに集めるべきです」としている。

米国糖尿病学会(ADA)
【特集】新型コロナウイルス感染症
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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