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2021年07月05日

糖尿病の人は「良い睡眠」をとれないと死亡リスクが上昇 睡眠を改善する5つの方法

 糖尿病の人が寝付くのが難しかったり、良い睡眠をとれなくなると、死亡リスクが大幅に上昇するというショッキングな研究が発表された。
 ただし、人生の早い段階で、睡眠障害を改善できたら、死亡リスクを低下できる可能性がある。
 概日リズムを刻む「体内時計」に異常があらわれると、睡眠にも影響する。「睡眠を改善する方法」も公開されている。
糖尿病の人には良い睡眠が必要
 糖尿病の人が睡眠障害になったり、良い睡眠をとれなくなると、死亡リスクが大幅に上昇するというショッキングな研究が発表された。米ノースウェスタン大学医学部などが、約50万人の中年の英国人のデータを解析したものだ。

 9年間の調査により、糖尿病の人は睡眠障害があると、そうでない人に比べ、何らかの原因で死亡する危険性が87%も上昇することが分かった。

 「糖尿病でない人でも睡眠障害が死亡リスクの増加と関連していますが、糖尿病の人ではその関連がより強くなるようです。糖尿病患者を診療している医師は、患者の睡眠状況にも気を配り、必要に応じてアドバイスや治療を行うべきでしょう」と、同大学のクリステン ナッツソン教授は述べている。
糖尿病と睡眠障害があると死亡リスクが大幅上昇
 この研究は、英国の大規模ヘルスケアデータベース「UKバイオバンク」に登録されている48万7,728人のデータを解析したもの。「寝付くのが難しかったり、夜中に目が覚めたりする」ことが、「ときどきある」という人は48%で、「よくある」という人は28.0%だった。

 平均8.9年の追跡期間に、睡眠障害のみがある人はそうでない人に比べ、死亡リスクが11%上昇することが分かった。糖尿病があり、睡眠障害のない人の死亡リスクは67%上昇した。さらに、糖尿病と睡眠障害の両方のある人の死亡リスクは87%上昇した。

 「人生の早い段階で、睡眠障害を改善できたら、死亡リスクを低下させることも可能です。睡眠の問題について、他の危険因子と同じくらい真剣に受け止めるべきです。患者とともに、全体的なリスクを軽減する工夫をすることが必要です」と、ナッツソン教授は指摘している。
高脂肪の食事が「体内時計」を乱す 睡眠にも影響
 高脂肪の食事を摂り過ぎると、概日リズムを刻む「体内時計」に異常があらわれるという研究も発表された。体内時計が狂ってしまうと、睡眠習慣も乱れやすくなる。

 ヒトの体の生命機能(睡眠、活動、ホルモン分泌、体温、免疫機能、消化機能など)は約24時間のリズムをもっている。こうした全身のさまざまなリズムは、「概日リズム(サーカディアン リズム)」と呼ばれている。

 概日リズムの異常は、睡眠障害などのリズム障害を引き起こすだけでなく、肥満やメタボ、2型糖尿病、がん、うつ病などのメンタルヘルスとも関連していると考えられている。
「体内時計」を良好に保つために
 米テキサス大学ヒューストン医療科学センターの研究によると、不健康や食生活により概日リズムが乱れると、生涯を通じて体脂肪の付き方にも影響があらわれる可能性がある。

 研究グループは、マウスに高脂肪食を与え続けると、エネルギーを熱に変換するリズムを制御している脂肪細胞に異常があらわれ、体内時計のリズミカルなパターンが乱れることを突き止めた。

 「高脂肪食を摂り続けると、健康な脂肪細胞が減り、概日リズムにも異常があらわれます。異常が起きてから元に戻すのは難しくなります。生涯を通じて、24時間のリズムを良好に保つことが大切です」と、研究者は述べている。

 「理想的には、健康的な睡眠と覚醒のサイクルを維持し、なるべく毎日同じ時間帯に食事をして、就寝や起床の時刻が遅くならないようにすることが大切です。これに、高脂肪食を摂り過ぎないことが付け加えられます」としている。
睡眠を改善する5つの方法
 米ピッツバーグ大学医学部によると、次のことを実行すると睡眠を改善しやすい。

快眠はまずは規則正しい生活から

 規則正しい生活によって、体内時計がホルモンの分泌や生理的な活動を調節し、睡眠に備えて準備してくれる。この準備は自分の意志ではコントロールできない。体内時計を整え、体を睡眠に導くために、毎日同じ時刻にベッドに入ると効果的だ。

夜遅い時間に食事しない

 体内時計を整えるために規則正しい食事が望ましい。食事で摂取した食べ物が消化・吸収されるまでに2~3時間が必要となる。夜遅い時間に夕食をとると、胃の消化活動が活発になり、大脳皮質や肝臓の働きが活性化し、結果として睡眠が妨げられる。

適度な運動が良い睡眠をもたらす

 日中に体をアクティブに動かし運動する習慣のある人は、質の良い睡眠を得られるという調査結果がある。30分のウォーキングなどの運動を毎日続けよう。運動の習慣化は、睡眠の質を高めるだけでなく、肥満や2型糖尿病の予防にもつながる。

入浴して深部体温を上げる

 寝る少し前に体の奥の体温である「深部体温」をいったん上げると、その後に下がって、眠りに入りやすくなる。入浴には加温効果があり、運動と同じように体温を一時的に上げる。就寝1~2時間前に入浴すると深部体温が上がり、その後に睡眠に入りやすくなる。

光で体内時計を整える

 朝に太陽光を浴びると体内時計が24時間周期にリセットされる。起きたらまずカーテンを開けて、自然の光を部屋の中に取り込むと効果的だ。
 反対に夜に強い光を浴びると睡眠が妨げられる。夜の光には体内時計を遅らせる作用があり、時刻が遅くなるほどその力は強まる。照度が100~200ルクスの家庭照明であっても、長時間浴びると体内時計が乱れる原因になる。
 スマートフォンやパソコンの画面にも注意が必要だ。スマートフォンなどの画面に含まれるバックライトには波長の短いブルーライトが含まれており、体内時計に影響を与えやすい。スマートフォンは目のすぐ近くで操作するのでとくに影響が強い。寝る前にはスマートフォンを操作しないようにしよう。

People Who Have Trouble Sleeping Are At A Higher Risk Of Dying - Especially People With Diabetes(サリー大学 2021年6月8日)
Associations Between Sleep Disturbances, Diabetes And Mortality In The Uk Biobank Cohort: A Prospective Population-Based Study(Journal of Sleep Research 2021年6月8日)
Healthy Fat Impacted By Change In Diet And Circadian Clock, Study Finds(テキサス大学ヒューストン医療科学センター 2021年6月8日)
Cellular and physiological circadian mechanisms drive diurnal cell proliferation and expansion of white adipose tissue(Nature Communications 2021年6月9日)
The Social Jet Lag Study(ピッツバーグ大学)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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