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2021年01月21日

【新型コロナ】糖尿病の人はワクチン接種が優先される 発熱などの症状が出たらすぐに医療機関に連絡を

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について、日本医学会連合と日本医学会は「注意喚起」を公表した。
 糖尿病などの基礎疾患をもった患者や、重症化リスクの高い人々に対し、発熱や息苦しさなどの症状が出た場合は、速やかに受診中の医療機関に連絡し、相談するよう呼びかけている。
 新型コロナのワクチン接種は、日本でも2021年3ヵ月内に開始されることが期待されている。
 日本感染症学会は、「国民1人ひとりが、ワクチンの利益とリスクを正しく評価して、接種するかどうかを自分で判断することが必要です」と提言している。
発熱などの症状が出たらすぐに受診中の医療機関に連絡
 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行が拡大するなか、不安な気持ちで過ごしている人が多い。COVID-19は、高齢者や基礎疾患(慢性閉塞性肺疾患・慢性腎臓病・糖尿病・高血圧・脳心血管疾患・肥満症など)をもつ人、妊娠中の人、がんなどの悪性腫瘍で闘病中の人、免疫不全状態にある人などが、感染すると重症化する危険性が高いことが分かっている。

 そこで、日本医学会連合と日本医学会は1月13日、「新型コロナウイルス感染症に関する注意喚起」を公表した。高齢者や基礎疾患をもった患者、妊婦など、重症化リスクの高い人々に対し、発熱や息苦しさなどの症状が出た場合は、次の通り、速やかに受診中の医療機関に連絡し、相談するよう呼びかけている。

 感染した場合、重症化しないためには、専門家によるできるだけ早期の確実な診断と適切な治療を受けることが大切です。新型コロナウイルスを含む感染症は、医療機関で医師による診察と検査を受けることではじめて診断されますが、肺炎などの症状がみられればPCR検査などの結果を待たずに、必要な治療が開始されます。発熱や息苦しさなどの症状が出た場合には、速やかに受診中の医療機関に連絡してどのようにすれば良いかご相談ください。

 また、受診中の医療機関が休診の場合であっても、「主治医に事前にきちんと相談をして、緊急時の救急車による受診中の医療機関への搬送を指示されていれば、受け入れ先の調整の時間短縮につながり、また経過や投薬内容に基づいた適切な治療が可能になります」とアドバイスしている。

 また、ステロイド・免疫抑制剤や生物学的製剤などを服用中に、新型コロナに感染した場合について、自己判断で休薬せず、どのようにしたらよいかについて、受診先の医師や医療機関に相談しておくよう求めている。

 これまでとくに病気と言われていない高齢者や肥満の方も、地域の保健師や職場の産業医・保健師などの相談先を確認しておきましょう。重症化する可能性のある方は、とくに医師・医療従事者とよく連携をとって、この困難な時期を乗り切りましょう。
新型コロナのワクチンはゼロリスクではない
 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチンの接種が、日本でも2021年3ヵ月内に開始されることが期待されている。欧米では高い有効性が伝えられている一方、従来にない手法を用いて極めて短期間に開発されたこともあり、接種にともなうリスクの可能性も指摘されている。

 日本感染症学会ワクチン委員会では、学会会員および国民に対し、現在海外で接種が開始されているCOVID-19ワクチンの有効性と安全性に関する科学的な情報を提供し、それぞれが接種の必要性を判断する際の参考にしてもらうべく、「COVID-19ワクチンに関する提言(第1版)」の公開を、2020年12月に開始した。今後、COVID-19ワクチンの国内外における状況の変化にともない、内容を随時更新する予定という。

 同学会は「ワクチンも他の薬剤と同様にゼロリスクはありえません。病気を予防するという利益と副反応のリスクを比較して、利益がリスクを大きく上回る場合に接種が推奨されます」としたうえで、「国が奨めるから接種するというのではなく、国民1人ひとりがその利益とリスクを正しく評価して、接種するかどうかを自分で判断することが必要です」と提言している。
【特集】新型コロナウイルス感染症
ワクチンの「有効率90%以上」はどういう意味か
 有効性について、ファイザーとモデルナのワクチンは、臨床試験で90%以上の有効率がみられた。インフルエンザワクチンの65歳未満の成人での有効率が52.9%(2015/16シーズン)であることを考えると、「予想以上の結果」としている。アストラゼネカ社のワクチンは、1回目低用量、2回目標準用量では90%、1、2回目とも標準用量の試験では62%だった。

 「有効率90%」の意味について、提言では次のように分かりやすく解説している。

 ワクチンの有効率90%というのは「90%の人には有効で、10%の人には効かない」もしくは「接種した人の90%は罹らないが、10%の人は罹る」という意味ではありません。接種群と非接種群(対照群)の発症率を比較して、「非接種群の発症率よりも接種群の発症率のほうが90%少なかった」という意味です。発症リスクが、0.1倍つまり10分の1になるとも言えます。

 提言はまた、いずれの試験でも重症者数が限られているため、重症化予防効果の評価は今後の課題であること、75歳以上への効果は対象者が少なく評価できないこと、試験期間が100~150日と短いため、免疫がどれくらい持続できるかの評価がまだできないことなどの、注意を促している。
糖尿病の人はワクチン接種が優先される
 厚生労働省は2020年10月に、COVID-19ワクチンの優先接種対象者として、(1)医療関係者、(2)高齢者、(3)基礎疾患を有する者に決定した。その後、高齢者などが入所・居住する社会福祉施設で利用者に直接接する職員も含める方向で協議されている。

 基礎疾患については、慢性呼吸器疾患、慢性心疾患、慢性腎疾患、慢性肝疾患、神経疾患・神経筋疾患、血液疾患、糖尿病、疾患や治療にともなう免疫抑制状態(悪性腫瘍、関節リウマチ・膠原病、肥満を含む内分泌疾患、消化器疾患、HIV 感染症など)などが検討されている。

医療の最前線で治療にあたる医療従事者が
新型コロナのワクチン接種を受けている様子

米ヴァンダービルト医療センター
どのような体制で接種が行われるか
 高齢者や基礎疾患のある人の接種は、市町村からの文書(接種クーポン券)などによる通知が計画されており、それにもとづいて医療機関や市町村設置会場で接種が行われる。市町村設置会場での集団接種は最近では実施されていないので、「実施体制をあらためて確認し、とくにアナフィラキシーへの緊急対応ができる薬剤の準備など、医療体制整備が欠かせない」としている。

 なお、すでに報道されているように、mRNAはRNA分解酵素で壊れやすいことから、ファイザーのmRNAワクチンの保管には-60~80℃を保てる冷凍庫が必要で、輸送にもドライアイスを用いる。モデルナのmRNAワクチンは長期保管に-15~25℃の冷凍庫が必要となる。一方、アストラゼネカのウイルスベクターワクチンは、既存のワクチンと同様に冷蔵で保管する。

 新しく導入されるワクチンは、数百万人規模に接種された後に新たな副反応が判明することも考えられることから、数年にわたる長期的な有害事象の観察が重要だ。

 接種を受けた人が発症した場合に、症状がより重くなるワクチン関連疾患増悪(VAED)や、ワクチンによってできた抗体によって感染が増強する抗体依存性増強(ADE)にも、将来的に注意深い観察が必要だとしている。
糖尿病の人は新型コロナに感染すると、どれくらいリスクが高いのか
 医学誌「ランセット」に『1型および2型糖尿病に対するCOVID-19ワクチンの優先順位』と題した、米ヴァンダービルト大学医療センター ヴァンダービルト糖尿病センターなどによる論文が掲載された。

 1型糖尿病と2型糖尿病の患者がCOVID-19に感染した場合の相対リスクは類似している。糖尿病のない人と比較して、2型糖尿病患者は入院リスクは3.36倍、重症化リスクは3.42倍、院内死亡リスクは2.02倍に上昇する。これに対し、1型糖尿病患者では入院リスクは3.90倍、重症化リスクは3.35倍、院内死亡リスクは3.51倍に上昇すると報告されている。

 一方で、1型および2型糖尿病の40歳未満の人では、死亡リスクは低いことも示された。また、1~2ヵ月の血糖値の平均値を反映するHbA1cが良好な人も、死亡リスクは非常に低い傾向がみられた。血糖コントロールがどの程度良好であれば、新型コロナに感染した場合の重症化リスクを抑制できるかについては、引き続き調査が行われているものの結果はまだ出ていない。

 米国疾病予防管理センター(CDC)は現在、1型糖尿病と2型糖尿病を、COVID-19の重症化リスクに関して異なる方法で分類している。2型糖尿病は「重度化リスクが高い」、1型糖尿病は「重症化リスクが高い可能性がある」とし、米国の100万人以上の1型糖尿病患者を、2型糖尿病患者と同じ優先順位のカテゴリーに分類している。

 研究者らは、糖尿病患者のワクチンの優先順位付けに関する推奨事項の作成について、米国の公衆衛生当局と知事、および他の国の関連する政策立案者に、慎重に検討するよう呼びかけている。

海外で開発されている新型コロナウイルスのワクチン

ファイザー
mRNAワクチン
2020年7月から米などで第3相試験を実施。12月から英米などで接種開始。
日本でも治験を2020年10月から実施。同年12月に承認申請。

アストラゼネカ、オックスフォード大学
ウイルスベクターワクチン
2020年5月から英で第2/3相試験を実施。8月から米で第3相試験を実施。2021年1月から英で接種開始。
日本でも治験を2020年8月下旬から実施中。

モデルナ
mRNAワクチン
2020年7月から米で第3相試験を実施。12月から米で接種開始。
日本でも治験の実施を準備中。

ジョンソン&ジョンソン(ヤンセン)
ウイルスベクターワクチン
2020年9月から米などで第3相試験を実施。11月から英などで第3相試験を実施。
日本でも治験を2020年9月から実施中。

サノフィ
組換えタンパクワクチン、mRNAワクチン
組換えタンパクワクチンは、2020年9月から米で第1/2相試験を実施。mRNAワクチンは、2021年第1四半期に第1/2相試験開始を目指す。

ノババックス
組換えタンパクワクチン
2020年9月から英で第3相試験を実施。
日本でも治験の実施を準備中。

日本で開発されている新型コロナウイルスのワクチン

塩野義製薬、国立感染症研究所、UMNファーマ
組換えタンパクワクチン
2020年12月から第1/2相試験を実施。

第一三共、東京大学医科学研究所
mRNAワクチン
最短で2021年3月から臨床試験を開始。

アンジェス、大阪大学、タカラバイオ
DNAワクチン
第1/2相試験を開始、第2/3相試験を開始、大規模第3相試験を2021年内に開始。

KMバイオロジクス、東京大学医科学研究所、国立感染症研究所、医薬基盤研究所
不活化ワクチン
最短で2021年1月から臨床試験を開始。

IDファーマ、国立感染症研究所
ウイルスベクターワクチン
最短で2021年3月から臨床試験を開始。

日本医学会連合

日本医学会

日本感染症学会

Researchers urge priority vaccination for individuals with diabetes due to increased COVID-19 impact(ヴァンダービルト大学医療センター 2020年12月4日)
COVID-19 vaccine prioritisation for type 1 and type 2 diabetes(ランセット 2021年1月18日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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