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2012年02月29日

禁煙しても5年間は糖尿病に注意 6万人調査で判明 JPHC研究

 喫煙は糖尿病に悪影響をもたらすことが知られているが、たとえ禁煙しても、一定期間は糖尿病の危険性が高い状態が続くことが、国立がん研究センターと国立国際医療研究センターのグループが、全国約6万人を対象に行った大規模コホート研究であきらかにした。「禁煙に伴う体重増加が原因のひとつとみられるが、体重が増えていない人でも、禁煙から少なくとも5年間は健診などで体調に配慮することが大切だ」と研究者は述べている。
禁煙に伴う体重増加がないグループでも糖尿病リスクは上昇
 喫煙者はたばこを吸わない人に比べ糖尿病になりやすく、禁煙しても5年未満だと糖尿病を発症する危険性は高いことが、国立がん研究センターと国立国際医療研究センターの研究グループによる全国約6万人の調査で判明した。

 調査は、1990年と93年に、岩手、秋田、長野、沖縄、東京、茨城、新潟、高知、長崎、沖縄、大阪の11保健所管内に在住していた40〜69歳の男女約6万人を対象に行われた。5年間追跡した調査結果にもとづき、喫煙の状況と糖尿病発症との関連を調べた。

 その結果、禁煙した人は男女ともに一定期間、たばこを吸わない人と比べて糖尿病を発症するリスクが高い傾向があることが裏付けられた。禁煙した人が糖尿病になる危険性は、たばこを吸わない人に比べ、男性で1.42倍。女性で2.84倍になった。

 糖尿病発症の危険性が高い傾向は、喫煙量の多かった男性で特にはっきりとみられた。禁煙前に1日25本以上のたばこを吸っていた男性が糖尿病を発症する危険性は、たばこを吸わない男性の2.15倍と高かった。

 一方、禁煙5年後以降は、非喫煙者との差はほとんどなくなることも分かった。禁煙後5年未満の男性では、その後5年間の糖尿病の発症のリスクが、非喫煙者の男性に比べて1.41倍上昇していたが、禁煙後5年以上の男性では、リスクの高まりはみられなかった。

 禁煙前に比べ体重の増加が少ない男性でも、たばこを吸わない男性に比べ糖尿病の危険性が高まった。禁煙を開始した前後計5年間の体重増加が3kg未満であった男性の糖尿病発症のリスクは、体重増加が3kg未満の非喫煙者の男性に比べて1.46倍だった。

 「禁煙をした人にも一定期間の糖尿病リスクの高まる理由のひとつは、禁煙に伴う体重増加とみられていたが、今回の研究では体重が増えないグループでもリスクが上がっていた。禁煙による食事摂取量の増加と代謝率の低下の関連が示唆される」と研究者らは話す。

 「禁煙に成功した人もすぐに安心することなく、しばらくは糖尿病発症リスクの高まる場合があることに注意して欲しい。特に喫煙量の多かった人は、禁煙後少なくとも5年間は、健診をきちんと受診するなど、健康管理に配慮する必要がある」と強調している。

 この研究は米科学誌「PLoS ONE」に発表された。

多目的コホート研究(JPHC Study)(国立がん研究センター がん予防・検診研究センター)

2012年3月1日訂正

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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