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2011年05月04日
虚血性心疾患の発症リスク:糖尿病の人では3倍に 日本人3万人を調査
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- 糖尿病合併症
糖尿病の人が血糖コントロール不良で、血糖値が高い状態が続くと、脳卒中や心筋梗塞といった動脈硬化を要因とする病気になりやすいことが知られている。糖尿病型では虚血性心疾患の発症リスクが正常群に比べ3倍に高まり、糖尿病予備群と呼ばれる境界群でも1.5倍に上昇することが、日本人3万人を対象の大規模臨床研究であきらかになった。
日本人の死因でもっとも多いのは「がん」、「心疾患」、「脳血管疾患」。日本人の約6割は3つの疾患のいずれかで亡くなる計算になる(2009年人口動態統計)。いずれも糖尿病とも関連の深い病気で、高血糖が続くとそうでない場合に比べ、発症の危険性が高くなるとみられている。
日本人は欧米人に比べ、虚血性心疾患の発症率がかなり低いとされる。欧米では糖尿病の人は虚血性心疾患を発症しやすいという研究報告が多数あるが、日本人を対象とした大規模臨床研究の件数は少ない。血糖コントロールを改善すれば、心疾患の危険性を下げられることが、多くの研究で示されている。しかし日本人では、血糖値と心疾患の発症との関連について不明の点も多い。
糖尿病群で虚血性心疾患の発症リスクが3倍に上昇
この研究は、日本人約3万人を約13年間、追跡して調査した多目的コホート研究「JPHC研究」。研究チームは岩手、秋田、長野、沖縄、茨城、新潟、高知、長崎、沖縄の9保健所管内に在住していた循環器病やがんと診断されたことのない40〜69歳の男女約3万1000人に参加してもらい、2006年まで平均12.9年間、追跡して調査した。
研究チームはベースライン調査で、空腹時あるいは随時血糖検査から、「正常群」、「境界群」、「糖尿病群」に分類し、その後の虚血性心疾患の発症との関連を調べた。 *
* 「正常群」は空腹時血糖値100mg/dL未満、随時血糖値140mg/dL未満、「境界群」は空腹時血糖値100〜125mg/dL、随時血糖値140〜199mg/dL、「糖尿病群」は空腹時血糖値126mg/dL以上、随時血糖値200mg/dL以上、もしくは糖尿病を治療を受けている者とした。
期間中に266人で非致死性あるいは致死性の虚血性心疾患発症が確認された。虚血性心疾患の発症は男性で多く女性で少ない。虚血性心疾患の発症率を性別にみたところ、男性正常群に比べ、男性では境界群1.37倍、糖尿病群2.06倍となった(女性ではそれぞれ0.30倍、0.29倍、1.02倍)。
性、年齢、採血時間、地域、肥満度、高血圧、脂質異常、生活習慣(喫煙、飲酒、運動)の影響を考慮し解析した結果、全虚血性心疾患の発症の割合は、正常群を1とした場合、糖尿病群で3.05倍に高まることが分かった。
また、空腹時血糖値100〜125mg/dLの境界群でも1.65倍、心疾患の危険性は糖尿病境界型の段階でも高まることが示された。
研究チームは、ベースライン時点で糖尿病の治療を受けていた人を除き、空腹時血糖値、あるいは随時血糖値のレベル別に、虚血性心疾患発症リスクとの関連も調べた。空腹時血糖値は100mg/dL未満、100〜125mg/dL、126mg/dL以上の3群に分類し、随時血糖値は140mg/dL未満、140〜199mg/dL、200mg/dL以上の群に分類した。
その結果、空腹時血糖値が100mg/dL未満の群に比べ、100〜125mg/dLの群では1.61倍になり、空腹時血糖値126mg/dL以上の群では4.05倍まで上昇した。肥満度や高血圧などの危険因子の影響を調整した後も、空腹時血糖値が高くなるにつれ虚血性心疾患の危険性が高まることがあきからになった。
随時血糖値と虚血性心疾患発症の危険性の関連を調べたところ、随時血糖値が140mg/dL未満の群に比べ、140〜199mg/dLの群で心疾患発症の割合が上昇し、随時血糖値が高くなるにつれ危険性も高まることも分かった。
この研究は、医学誌「Atherosclerosis」2011年5月号に発表された。
多目的コホート研究(JPHC Study) 国立がん研究センター がん予防・検診研究センター 予防研究部
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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