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2011年05月01日
肥満のあるシニアでは食事と運動の組合せがベスト
高齢者では食事療法と運動療法を組合わせて行うと、身体能力が改善し体力低下も抑えられ、もっとも効果が大きいとする研究が米国で発表された。食事と運動のどちらか一方を行うよりも、両方を行った方がより良い成果を得られるという。
米国では肥満が、若い世代と同様に、高齢者でも増えている。65歳以上の人の約2割は肥満で、その割合はベビーブーマーが高齢化するにつれ上昇するとみられている。体重増加の原因として、日常での身体活動の減少、乗用車の普及などで歩く機会がなくなっていること、身体能力や体力の低下などが指摘されている。 高血圧症や心疾患、糖尿病などのある高齢者が、安全に運動をするために配慮が必要となるが、これに肥満が重なるとさらに運動療法を行いにくくなる。
肥満がQOLを低下 食事+運動で対策するともっとも効果的
「年配の方が肥満によって身体能力が低下すると、転倒や寝たきりの原因になり、結果として生活の質(QOL)の低下をまねきやすい。肥満は高齢者でも増えている。より健康に、より自律的に生活していくのを支援する方法をみつけることが重要だ」と米ワシントン大学医学部のDennis T. Villareal氏(老年・栄養学)は話す。
研究は、65歳以上の肥満者(BMI30以上)107人の参加を得て、1年間にわたり行われた。もともとは肥満のある高齢者での食事療法と運動療法を別々に検討するのが目的で、参加者を(1)食事療法による減量を行う群、(2)運動療法を行う群、(3)食事と運動を組合わせて行う群、(4)どちらも行わない群に無作為にふり分けて比較した。
食事療法の群では、低カロリー食による減量支援、運動療法の群では、バランスワーク、レジスタンス運動、有酸素運動を含む週3回の運動指導が中心となった。
その結果、身体能力のベースラインからの改善率は(1)は12%、(2)は15%だった。しかし、もっとも身体能力が向上したのは(3)の食事療法と運動療法を組合わせて行った群で、なんと21%も向上した。
身体能力テストは50フィート(約15メートル)のウォーキングや日常の動作(コートを置いたり移動させる、椅子から立ち上がる、ペニー銅貨を拾う、階段上り、本を持ち上げる)などで行った。
さらに、トレッドミルを使ったウォーキングでの最大酸素消費量の測定も行った。食事と運動を行った参加者の改善率は平均17%でもっとも高く、食事のみの群は10%、運動のみの群は8%にとどまった。
食事+運動で筋力が向上 骨密度の低下も抑制
研究チームは生活の質(QOL)のスコアについても調査を行った。ここでももっとも大きく改善したのは食事と運動を組合わせて行った群で、食事のみの群が10%、運動のみの群が14%だったのに比べ、15%も改善した。筋力、平衡感覚、歩行機能についても、一貫して改善していた。
「運動と体重コントロールを組み合わせて行うことで得られる恩恵は大きい。肥満のある年配の方では、心疾患の危険因子をみるだけでなく、身体能力を改善しQOLを向上することも重要となる。高齢者が運動をすることでQOLを向上し、寝たきりや転倒、骨折などを予防し、健康寿命を延ばすことにつながる」とVillareal氏は話す。
「肥満のある高齢者で、ただちに減量が勧められるかについては検討が必要だろう。高齢者の減量には、脂肪や筋肉、骨の減少という潜在的な欠点がともなうことがある。高齢者の減量と死亡率との関連を指摘した研究も報告されている」と述べている。
研究では、食事のみで減量した高齢者では、脂肪組織と骨密度が低下している傾向がみられた。食事のみの群では体格指数(BMI)が5%低下したが、股関節部の骨密度も3%低下した。一方、食事と運動を組合わせて行った群では、体格指数(BMI)が3%低下したが、股関節部の骨密度の減少は1%に抑えられた。
この研究は、米ワシントン大学医学部らの研究チームによるもので、医学誌「New England Journal of Medicine」3月31日号に発表された。
Diet-exercise combo best for obese seniors(ワシントン大学医学部、2011年3月30日)Villareal DT et al. Weight loss, exercise, or both and physical function in obese older adults
NEJM, 2011 Mar 31;364(13):1218-29
Diet and Exercise for Obese Older Adults(NEJM)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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