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2011年05月01日

心疾患など非感染性疾患「多くは予防できる」 WHO報告書

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 糖尿病や心疾患、脳卒中、がん、慢性呼吸器疾患といった「非感染性の慢性疾患(NCD)」が世界で増えており、2008年に世界で亡くなった人の約6割(3600万人)がこれらの疾患で亡くなったとする報告書を、世界保健機関(WHO)がまとめた。
生活習慣を改善すれば「多くは予防・改善できる」
WHOレポート
非感染性疾患(NCD)の世界情勢
 世界保健機関(WHO)がこのほど発表した「WHOレポート:非感染性疾患(NCD)の世界情勢」によると、2008年に心疾患や脳卒中、慢性呼吸器疾患、がん、2型糖尿病などの生活習慣病が原因で亡くなった人は世界で3600万人に上り、その8割は低・中所得の国に集中し、増加しているという。有効な対策をしないと、2030年までに死者は世界で5200万人に膨らむと推計している。

 うち心疾患は1700万人の死亡の原因となっており特に深刻だ。死亡数の多い疾患は、がん(760万)、呼吸器疾患(420万)、糖尿病(130万)。これらの4つの疾病が、非感染性疾患による死亡の8割を占める。

 WHOのマーガレット・チャン長官は「多くの国で起きている非感染性疾患の増加は、喫緊の対策を必要とする災害のようなものだ。これらの疾患により、人々の健康が損なわれるだけではない。社会や国とっても経済的な負担が大きい。非感染性疾患による負担は数十億ドルにも上る」と言う。

 一方で、「非感染性疾患の多くは、生活習慣の改善により予防できる」と強調している。非感染性疾患の要因として、(1)「喫煙」、(2)「運動や身体活動の不足」、(3)「過度の飲酒」、(4)「不健康な食事」を挙げている。

 「政府や民間、市民が協力し、喫煙習慣のある人に禁煙を促し、過度のアルコール摂取や不健康な食事、運動不足を改善し、健康的な生活習慣を促進する対策をすれば、何百万もの死を防ぐことができる」としている。

 「“生活習慣病が増えるのは、生活の豊かな富裕国であり、低・中所得の国ではあまり問題にならない”という話は、もはや現実からかけ離れている。非感染性疾患で亡くなる人の約80%は、低・中所得の国に集中している。疾患を発症することで経済的な負担が増え、それが不健康な生活習慣を増長し、さらに発症が増えるという悪循環を生みだしている。発症拡大は経済成長の大きな足かせにもなっている」と分析している。

 生活習慣病の予防・対策に国ごとで取り組むことが、数百万人の命を救い、医療費を節約につながる。WHOは2008〜2013年の保健アクション・プランを実行するよう、加入している各国の保健機関に求めている。

 プランには例えば、禁煙を促すために、たばこの広告を禁止し、課税を増やし価格を高くし、公共の場所での喫煙を禁止する法律を制定することなどが盛り込まれた。また、食品からの塩分の摂取量を抑え、高脂肪・高カロリーで不健康な食品や、子供の高カロリーの清涼飲料の消費を促す広告・宣伝などを抑える方針などが示されている。

New WHO report: deaths from noncommunicable diseases on the rise, with developing world hit hardest(世界保健機関 2011年4月27日)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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