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2009年10月01日

「生活を楽しむ意識」が高いと、循環器病のリスクが低くなる 厚労省研究班

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糖尿病合併症
 厚生労働省研究班(主任研究者:津金昌一郎・国立がんセンター予防研究部長)は、「生活を楽しんでいる」という意識の高い男性ほど、心筋梗塞などの循環器病になったり、循環器病が原因で死亡するリスクが低くなるという調査結果を発表した。

 食事や運動、喫煙習慣といった生活習慣に加え、嬉しい、楽しい、おもしろいなどのポジティブな気持ちや、楽天的な性格傾向などの心理要因も、健康に良い影響を及ぼすようだ。逆に、ストレスや怒りの感情、イライラしやすい性格といった要因は、悪い影響を及ぼすと考えられている。

 磯博康・大阪大学教授ら研究班は、1990年に岩手、秋田、長野、沖縄の4地域、1993年に茨城、新潟、高知、長崎、沖縄の5地域、計9地域の40歳から69歳の循環器病やがんの既往のない約8万8175人を対象に、生活習慣や生活の意識についての調査を実施した。

 2006年末まで約12年間、追跡して調査した。期間中に3523人が脳卒中や心筋梗塞などの心疾患を発症。脳卒中を発症した人は2786人、虚血性心疾患を発症した人は686人で、このうち1860人が死亡した。

心理的にポジティブな人の方が病気に強い
 調査時点に「生活を楽しんでいると思うか」との質問に答えてもらい、生活を楽しむ意識によって「高群・中群・低群」の3グループに分け、循環器病の発症と死亡のリスクを比較した。

 その結果、男性では、生活を楽しむ意識が「高い」グループに比べ、「低い」グループでは1.23倍になった。脳卒中と心疾患に分けて比べたところ、「低い」グループではそれぞれ1.28倍と1.22倍になった。

 死亡リスクについても同様の結果になり、生活を楽しむ意識が「高い」グループに比べ、「低い」グループでは1.61倍になった。脳卒中と心疾患については、1.75倍と1.91倍になった。

 いずれも、男性では生活を楽しむ意識が高いほど、循環器病の発症が増え、死亡リスクも高くなるという結果になったが、女性ではこうした関連はみられなかった。

生活を楽しんでいる意識と循環器病リスクの関連(男性)
生活を楽しんでいる意識と循環器病リスクの関連(男性)
「高群」を1とした場合の相対リスク(比率)。厚生労働省研究班調べ

 こうした調査では、生活を楽しむ意識の影響で病気の発症や進行が抑えられたのか、逆に、病気の影響で気持ちが沈み生活を楽しめなくなったのか、判別が難しい点がある。そこで研究班は、調査を開始してから1年目から6年目までに死亡した人を除いて分析を行ったが、結果は同様だった。

 また、生活を楽しむ意識の高いグループでは、週1回以上の運動習慣のある人が多く、また男性では喫煙者が少ないなど、健康的な生活習慣を維持してい傾向が強かった。

 生活を楽しむ意識が高い男性では、健康的な生活を送ろうと行動変容を始めることに積極的になれたり、もともと健康的な生活習慣を維持できているために、結果として病気の発症や進行が抑えられる場合が多い可能性がある。

 研究者らは、「困難な出来事やつらいことがあっても、それが心身に影響を及ぼすストレスとなる人もいれば、全くストレスと感じない人もいる。心理的にポジティブな状態にある人は、“なんとかできる”と負担にならない考え方ができたり、代りに解決してくれる友人や頼りになる同僚がいたりと、周囲にストレスにならないで済む環境があるかもしれない」と述べている。

 一方で、女性はストレスに対する対処の方法や、自覚されたストレスが心身に与える影響が男女で異なるという研究も報告されており、「男女差に関するメカニズムは今後さらに研究を進める必要性がある」としている。

厚生労働省研究班「多目的コホート研究(JPHC研究)」

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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