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2012年04月03日
職場の理解が糖尿病治療を後押し 企業規模で取組みに差
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- 糖尿病合併症
糖尿病とともに生きる人の数は増加の一途をたどっており、就業と糖尿病療養を両立している人も多い。就労糖尿病患者の現状を調査した研究で、企業の規模により糖尿病有病率に大きな差があり、大企業ほど糖尿病患者の検査・指導に熱心である現状が浮き彫りになった。
糖尿病の主治医と企業関係者の連携度が低い
職場で糖尿病療養について相談できる産業医や看護師などの医療スタッフのいる企業ほど、企業側から従業員に対する検査や指導などの働きかけが多く、従業員の治療状況を把握できている傾向があることが、労働者健康福祉機構の研究班(班長:佐野隆久・中部労災病院職場復帰両立支援[糖尿病]研究センター)の調査で分かった。
同機構は労災疾病など13分野の医学研究・開発・普及プロジェクトを平成16年より開始し、この調査はその1つとして平成21年度よりスタートした。
平成20年度患者調査によると、糖尿病の治療を継続的に受けている患者数は約237万人(男性131万人、女性106万人)に上る。一方で、糖尿病の通院治療を中断してしまった人も多い。通院を中断した理由は「仕事が忙しかった」(51%)がもっとも多いことが調査で示されている。職場での糖尿病への取組みが必要だ。
企業の規模と糖尿病の関連を調べたところ、糖尿病の有病率は従業員300人以上の大企業で39.4%、50〜299人の中企業では47.0%、50人未満の小企業では63%だった。中小企業で有病率が高い傾向があることが分かった。
糖尿病の診断基準となるHbA1c値の判定基準値も、“正常範囲”と“要治療範囲”の両方で企業間にばらつきがあった。また、要治療範囲と判定された従業員に対する定期的な検査や指導についても大企業ほど実施率が高かった。中小企業では、平日は受診しにくいなど治療継続が難しく、勤務と治療の両立に苦労する人が多いとみられる。
労働安全衛生法に基づき、大企業の多くは産業医が常勤している。「糖尿病の治療や検査が必要」と判定された従業員に医療機関への受診を勧める割合は、産業医が常勤している企業では94%だった一方で、産業医が常勤していないケースが多い中小企業では50%台にとどまった。中小企業ほど糖尿病有病率が高いが受診勧告率が低い現状が浮き彫りになった。
糖尿病をもつ従業員の治療状況を比較的良く把握しているとみられる大企業においても、糖尿病の治療に関する把握方法は患者本人からの申告によるものが77%で、主治医との連絡の基づいているケースは15%以下という結果になった。企業関係者と主治医の連携の緊密度が低いことが示された。また、糖尿病に関して就業制限を実施している割合は大企業で35%、中企業で9%だった。
糖尿病の相談相手としての産業医の存在が大きい
企業の規模や取り組みによって、有病率に差があることが判明したのは今回の調査がはじめて。糖尿病をもつ勤労者の就労を難しくしている一因として重篤な糖尿病合併症の併発が挙げられる。
研究班によると、背景に職場の環境に問題が潜むことが少なくなく、原因として▽定期的に通院し治療を継続するのが困難な場合がある、▽良好な血糖コントロールを維持するのが難しい、▽職場環境からのストレスなどを挙げている。研究班は「職場での糖尿病への理解の欠如の影響は大きい。勤務と治療の両立を後押しする仕組みづくりが必要だ」と話す。
通院中の糖尿病患者185人を対象にアンケート調査も行った。職場で糖尿病について相談できる人として“産業医”を挙げた患者が42%ともっとも多く、上司(21%)、同僚(21%)は少なかった。「誰にも相談できない」も36%と多かった。「糖尿病であることを仕事上で負担に感じている」として人は、インスリン治療法など注射で治療を行っている患者では41%と高率で、注射以外の治療を行っている患者の7%を大幅に上回った。
一般ではインスリン療法がどのようなものか理解されておらず「インスリン療法に対する社会の認識が低い」と研究班は説明する。糖尿病の発症に遺伝的背景が関わる患者が多いにもかかわらず、職場では“悪い生活習慣が糖尿病の原因”といった誤解や偏見をもたれることが多い。糖尿病をもつ従業員が業務内容や昇進が制約を受けるのを恐れて病気を公表しないことも少なくないという。
研究班は「企業の医療スタッフと主治医との情報交換がもっと必要だ。職場を中心に糖尿病の正しい理解を拡大し、糖尿病患者が仕事に従事しながら安全に良いコントロールを継続できるようにする環境をづくりを促す対策が求められている」と述べている。
就労と治療の両立・職場復帰支援(糖尿病)研究中間報告(平成23年度)治療と職業生活の両立等の支援に関する検討会(厚生労働省)
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[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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