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2024年05月20日
なぜ男性は女性よりも糖尿病リスクが高い? メカニズムを解明 男性はインスリンの働きを高める対策が必要
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- 糖尿病と肥満 糖尿病の検査(HbA1c 他) 糖尿病合併症
心血管疾患・糖尿病網膜症・腎臓病・足病変といった糖尿病の合併症の発症率は、いずれも男性の方が女性よりも高いことが、45歳以上の約27万人を対象とした大規模な調査で明らかになった。
男性の方が女性よりも、糖尿病リスクが高いことが多いのは、脂肪組織でのインスリンに対する反応に男女で違いがあるからだという研究も発表された。
とくに肥満のある男性は、血糖値を下げるインスリンの作用が低下しやすく、血中の遊離脂肪酸のレベルが高くなりやすいことが分かった。
「男性であっても女性であっても、糖尿病と診断されたら、合併症の予防に的を絞った効果的な治療と生活改善を行う必要があります」と、研究者は指摘している。
男性は女性よりも糖尿病合併症のリスクが高い
心血管疾患・糖尿病網膜症・腎臓病・足病変といった糖尿病の合併症の発症率は、いずれも男性の方が女性よりも高いことが、45歳以上の約27万人を対象とした大規模な調査で明らかになった。 糖尿病の罹患歴が10年以上かそれ未満かに関係なく、糖尿病の合併症の発症率は、男性の方が女性よりも高いとしている。 シドニー大学などの研究グループは今回、ニューサウスウェールズ州に住む45歳以上の男女26万7,357人を対象に、大規模な前向き研究を実施した。うち、2万5,713人は1型糖尿病あるいは2型糖尿病がある人だった。 糖尿病のある人は平均10年間に、男性の44%が心血管疾患を、57%が眼の合併症を、25%が足の合併症を、35%が腎臓病を経験した。女性の31%が心血管疾患を、61%が眼の合併症を、18%が足の合併症を、25%が腎臓病を経験した。 全体として、男性は女性に比べて、心血管疾患は51%高く、足の合併症は47%、腎臓病は55%、それぞれ発症する可能性が高かった。糖尿病網膜症も、男性は女性よりも発症リスクが14%高かった。 なお、対象となった人のほぼ半数は60~74歳で、57%が男性、糖尿病の罹患歴が10年未満の人は男性の39%、女性の36%で、男性の75%と女性の71%が過体重か肥満だった。男性は生活スタイルを改善するのが苦手?
「長年に身についた生活スタイルを変えるのは、誰にとっても簡単なことではありませんが、男性は女性に比べて、食事や運動、治療薬の服用、検査を定期的に受けることなど、生活スタイルを改善するのを苦手にしている人が多いようです」と、同大学医学健康学部のアリス ギブソン氏は言う。 「糖尿病の男性は、女性にくらべて、とくに心血管疾患、腎臓病、足などの合併症を発症するリスクが高いことが分かりました。ただし、女性であれば糖尿病の合併症を予防できているというわけではありません」。 「男性であっても女性であっても、糖尿病と診断されたら、合併症の予防に的を絞った効果的な治療と生活改善を行う必要があります」としている。なぜ男性は女性より糖尿病リスクが高い?
脂肪組織のインスリンに対する反応に男女で違いが
男性は脂肪組織でインスリン抵抗性が起こりやすい
中性脂肪(トリグリセリド)は、体内にある脂質のひとつで、いわゆる「体脂肪」に多く含まれる。活動のエネルギー源になり、生きていくうえで欠かせないものだが、増えすぎるとさまざまな健康上の問題を引き起こす。 さらに、食べすぎや運動不足による肥満などがあると、インスリンは体内で作られているけれども、その効果を発揮できない「インスリン抵抗性」という状態になりやすい。 脂肪組織は過剰なエネルギーを貯蔵する主要な器官で、インスリンは脂肪細胞や筋肉のブドウ糖の取り込みを促す働きをする。エネルギーが過剰になると通常は、トリグリセリドの分解(脂肪分解)と血液への遊離脂肪酸の放出が減り、脂肪細胞内でトリグリセリドとしてエネルギーの貯蔵(脂肪生成)が促される。 「インスリン抵抗性のある人は、脂肪組織のインスリンに対する感受性が低下しており、こうしたプロセスが損なわれていることが多くあります。これにより、血流中の脂質が増加し、2型糖尿病のリスクが高まります」と、アンダーソン氏は説明する。 「男性は女性よりも、脂肪組織でインスリン抵抗性が起こりやすく、それが男性が2型糖尿病のリスクが高くなりやすい原因である可能性があります」としている。男性は生活スタイルを見直してインスリンの働きを高める対策が必要
研究グループは今回、平均年齢が44歳で肥満のある女性 2,344人と男性 787人を対象に、「AdipolR」などを測定した。これは、脂肪細胞のインスリン感受性を知るための尺度で、値が高いほどインスリン抵抗性が高いことを示す。 その結果、男性は女性よりも全体として、とくに肥満のある人でAdipoIRの値が高かった。 肥満のある女性 259人と男性 54人で構成されるサブグループの解析では、トリグリセリドの脂肪酸への分解を抑制するために、より多くのインスリンが必要であることも分かった。 「男女を比べたところ、肥満のある男性は脂肪組織のインスリン抵抗性が高く、血中の遊離脂肪酸のレベルが高いことが分かりました。男性と女性のあいだにみられる違いに、とくに男性では、脂肪細胞から遊離脂肪酸が放出されるのを抑制し、脂質を脂肪細胞に貯蔵させるインスリンの作用が低下しやすいことが影響していると考えられます」と、アンダーソン氏は指摘する。 「2型糖尿病や肥満のある人は、体内で利用できるエネルギーが過剰であることが多く、インスリンは脂肪酸の放出を減らし、脂肪組織での脂質の貯蔵を増やし、体内を循環する遊離脂肪酸を減らす働きをしていと考えられます」。 「肥満のある人では、脂肪組織のインスリン抵抗性は男性の方が女性よりも深刻です。とくに男性は、血糖値を下げるインスリンの働きを高めるために、食事や運動などの生活スタイルを見直すとともに、効果的な治療を行う必要があります」としている。Sex differences in risk of incident microvascular and macrovascular complications: a population-based data-linkage study among 25 713 people with diabetes (Journal of Epidemiology & Community Health 2024年5月16日)
Do sex differences in how adipose tissue responds to insulin explain why type 2 diabetes is more common in men? (欧州肥満学会 2024年5月10日)
Sex differences in adipose insulin resistance are linked to obesity, lipolysis and insulin receptor substrate 1 (International Journal of Obesity 2024年3月15日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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