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2012年04月05日
魚をよく食べる食事スタイルが糖尿病の危険性を下げる
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脂肪にはいくつかの種類があり、それぞれ性質や含まれる食品が違う。脂肪は大きく飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分けられる。そして、不飽和脂肪酸は一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸に分けられ、さらに、多価不飽和脂肪酸はn-3系とn-6系に分けられる。
青魚(イワシ、サバ、ニシン、サンマ)やマグロなどに多く含まれるn-3系不飽和脂肪酸には、体に良い効果があると注目されている。n-3系不飽和脂肪酸は中性脂肪を下げ、血栓(血のかたまり)ができるのを防ぎ、動脈硬化を予防する働きをする。
一方で、牛肉や豚肉、ハム、ソーセージなどには飽和脂肪酸という脂肪が多く含まれる。この脂肪をとりすぎると血液中の悪玉(LDL)コレステロールが高くなりやすくなる。
魚をよく食べる食事スタイルが糖尿病の危険性を低下させるという研究が世界中で発表されている。ひとつめは、スペイン保健省の支援を受け実施されている多施設共同研究「PREDIMED」であきらかになったもの。地中海ダイエットは野菜や果物、魚、ナッツ類、オリーブオイルなどをふんだんにとる食事スタイルで、健康的な食事として世界的に有名だ。
研究者らは、スペインの地中海に面するバレンシア州に在住している55〜80歳の男女945人(男性340人、女性605人)の食生活について調査した。対象者は心臓病の危険性が高いと判定されていた。地中海ダイエットと心臓病の危険因子の関連を調べたところ、魚をよく食べる人では糖尿病の発症や体重増加が減ることが分かった。
赤身肉の食べすぎにより、高血圧や2型糖尿病が増え、がんや心臓病を発症する危険性が高まる。逆に地中海ダイエットは、心臓を守る効果があるという。「魚をよく食べる人では、血糖値が低く、インスリンの効きが悪くなるインスリン抵抗性も抑えられていた。研究の対象者は肉もよく食べていた。肉食の頻度は1日1回程度だったが、火でよくあぶって油を落として食べる人が多かった」とPREDIMED研究を主導したMercedes Sotos Prieto氏は話す。
「地中海沿岸の地域では、伝統的に魚をよく食べる食生活が続けられていたが、この数十年で多くの人で食事スタイルは大きく変化している。ファストフードなどで赤身肉をよく食べる食事に変わってきた」とPrieto氏は話す。
研究者らは「魚に含まれるn-3系不飽和脂肪酸がインスリン抵抗性を改善する。魚の油をとることで、2型糖尿病の発症を低下できる。魚を食べる食生活を奨励すべきだ」と述べている。
出産年齢の女性を対象とした8年続けられた集団ベース研究で、魚を食べることを習慣としている女性では、心臓病の危険性が低下することが確かめられた。この研究は15〜49歳の女性4万9,000人を対象とした大規模なものだ。
8年間に5人の死亡を含む577人で心血管イベントが認められた。328人が高血圧性疾患、脳血管疾患が146人、虚血性心疾患が103人に上った。心疾患による入院患者と外来患者の数は、ほとんど魚を食べない女性では、よく食べる女性に比べ3倍に上昇していた。
「これは出産年齢の女性を対象としたはじめての大規模研究だ。魚から脂肪をとることは、女性にとっても有益であることが確かめられた。女性は週に2回は魚を食べた方がいい」とコペンハーゲンのStatens Serum Institute社のMarin Strom氏は話す。
魚を好む女性はサケ、ニシン、イワシ、サバなどをよく食べていた。これらの魚に含まれるn-3系不飽和脂肪酸が心臓を保護する働きをする。「男性と女性では心臓病の危険因子を同じだが、女性では血管炎症、高コレステロール、高中性脂肪の影響がより強い可能性がある」としている。
Eating fish can reduce the risk of diabetes
Young women may reduce heart disease risk eating fish with omega 3 fatty acids
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