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2009年12月08日

「食事をよく味わいながら規則正しく」が血糖上昇を防ぐ 生理学研究所

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医療の進歩 食事療法
 食事を味わいながら規則正しくとることで、脳の中で食欲などに関わるホルモンの放出が促され、血糖の上昇を防げるという研究が発表された。研究グループは「食習慣と健康との関係を生理学的に解明する成果だ」としている。

 自然科学研究機構・生理学研究所(愛知県岡崎市)の箕越靖彦教授の研究グループは、味わいながら食事をおいしく規則正しくとることで、脳の中のホルモン「オレキシン」を放出するオレキシン神経が活性化、筋肉の代謝を促進して、血糖の上がりすぎを防ぐことをマウスの実験であきらかにした。この研究は、米国の医学誌「Cell Metabolism」に発表された。
規則的な食事がホルモン活発化、高血糖を抑制
 研究グループは、脳の中のホルモンである「オレキシン」を放出するオレキシン神経に着目。オレキシンは、脳の視床下部と呼ばれる部分で作用する食欲や睡眠、体内リズムなどに関わるホルモンで、1998年に発見された。

 「食事をよく味わいながら、おいしく、規則正しくとる」ことで、オレキシンを放出するオレキシン神経が活性化し、視床下部内へのオレキシンの放出が促される。その結果、食事で同量のカロリーを摂取したときでも筋肉での糖の利用が活発になり、血糖の上昇を抑えられるという。

 「決まった時間に食事をし、よく噛んで食べることが健康に良い」とされているが、研究ではこうした食習慣がオレキシン神経とそれに伴う筋肉での糖代謝の活性化を促し、結果として中性脂肪が脂肪細胞に過剰に貯められるのを防ぎ、肥満防止につながる説明している。

 「夜寝る前に食事をすると、同じカロリーをとっても太りやすくなる」ともいわれている。オレキシン神経は、睡眠と覚醒のリズムを作りだす脳の働きに関わっており、主に睡眠時に抑制され、覚醒時に活性化される。夜中に食事をしてすぐ寝てしまうと、オレキシン神経が活性化されず、オレキシンによって促される筋肉での糖の利用が抑制される考えられている。

 味覚刺激とその期待感により、オレキシン神経は活性化する。実験で人口甘味料をマウスに与えるとオレキシン神経が活性化し、マウスを3日間運動させるとオレキシン神経の活性化がより明白になった。マウスに「糖を口から投与し味覚刺激を与えた時」と、「糖をお腹に直接投与し味覚刺激を与えない時」を比較したところ、味覚刺激を与えた場合の方が糖を摂取してから30分後の血糖値が低く抑えられ、視床下部でのオレキシンの働きを薬物で阻害すると効果がなくなった。

 箕越教授は、「オレキシンの分泌は強い動機を伴う行動において活発になる。したがって、おいしい食事による味覚刺激やそれに対する期待感だけでなく、肉食動物が餌を捕獲するときや、運動の開始時などでも、オレキシンによる筋肉での糖の利用が活性化され、食事によって得たカロリーを効率よく筋肉のエネルギーに変えられる可能性がある」と話している。

決まった時間に良く噛んで食事をすることは健康に良い
決まった時間に良く噛んで食事をすることは健康に良い
  • オレキシン神経が活性化されることによって放出されるオレキシンの働きで、筋肉での糖の利用が促進され、インスリン分泌に影響することなく、血糖値上昇が抑えられる。
  • オレキシン神経の活性化は、味覚刺激、すなわち“味わうこと”と摂食への期待感、すなわち“規則正しく食事をすることで、「その時間に食事ができる」と感じること”が関与する。
  • オレキシン神経から放出されたオレキシンの働きを薬物で阻害すると、摂食時の糖代謝が悪化する。

摂食と血糖に関するオレキシンとインスリンの関係
摂食と血糖に関するオレキシンとインスリンの関係

自然科学研究機構 生理学研究所
Hypothalamic orexin stimulates feeding-associated glucose utilization in skeletal muscle via sympathetic nervous system
Cell Metabolism, Volume 10, Issue 6, 466-480, 2009.

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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