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2024年06月25日

【1型糖尿病の最新情報】1型糖尿病の人の寿命は延びている 精神的負担を軽減し血糖管理を改善 針を使わずにインスリンを投与

 1型糖尿病のマネジメントとケアは進歩している。1型糖尿病とともに生きる人の寿命は延びていることが、200以上の国と地域のデータを分析した研究で明らかになった。

 1型糖尿病とともに生きる人に、精神的な負担を軽減することに着目した教育プログラムを提供すると、糖尿病がもたらす苦痛は半減し、血糖管理が改善することも分かった。

 インスリン注射による負担を減らすために、針や注射器を使わずに、痛みをともなわずにインスリンを注入できる新しい技術の開発も、急ピッチで進められている。

1型糖尿病とともに生きる人の寿命は延びている
マネジメントやケアが進歩

 1型糖尿病とともに生きる人の寿命は延びている。研究は、中国医科大学などが200以上の国と地域のデータを分析したもので、研究成果は、医学誌「ブリティッシュ メディカル ジャーナル」に掲載された。

 世界で1型糖尿病とともに生きる65歳以上の人の数は、1990年の130万人から2019年には370万人に、ほぼ3倍に増加したことが分かった。

 死亡率も、1990年には10万人あたり4.7人だったが、2019年には3.5人に25%減少した。1型糖尿病は過去には、寿命を著しく縮める可能性があると考えられていたが、1型糖尿病のマネジメントやケアは進歩しており、長生きする人は大幅に増えている。

 医療の質を定量化するために、「障害調整生存年(DALY)」という指標が使われている。これは、疾病や障害により失われた年数をあらわすもの。

 1型糖尿病による年齢標準化DALYは、1990年には人口10万人あたり113だったのが、2019年には103になり、8.9%減少した。これは、1型糖尿病がもたらす損失が減ってきていることを意味している。

 ただし、先進国と低・中所得国や紛争地域などの医療格差は深刻で、1型糖尿病の寿命が延びているのは、主に北米、西ヨーロッパ、日本、オーストラリアなどの医療水準の高い先進国だという。

 「1型糖尿病の高齢者の平均余命は、1990年代以降延びており、それにともない死亡率とDALYも大幅に改善しています。ただし、1型糖尿病のある人にとって、血糖値の管理は依然として大きな課題であり、的を絞った診療ガイドラインが求められています」と、同大学内分泌・代謝科および内分泌代謝研究所のヨンゼ リー教授らは述べている。

1型糖尿病とともに生きる人の精神的負担を軽減
糖尿病がもたらす苦痛を減らすために

 1型糖尿病とともに生きる人に、精神的な負担を軽減することに着目した教育プログラムを提供すると、糖尿病がもたらす苦痛は半減し、血糖管理も改善することが、米カリフォルニア大学が1型糖尿病の成人を対象とした研究で明らかになった。

 研究は、米国国立糖尿病・消化器・腎臓病研究所(NIDDK)の支援を得て行われたもの。研究成果は、「Diabetes Care」に掲載された。

 「糖尿病がもたらす苦痛や困難」(Diabetes distress:DD)は、1型糖尿病の成人の最大75%に影響を及ぼしており、インスリン治療や血糖測定などの自己管理が困難になったり、高血糖や低血糖の増加、生活の質(QOL)の低下などの原因になっているとしている。

 試験には、糖尿病の管理や日常の生活などに対するストレスのある1型糖尿病の成人276人が参加。(1) 糖尿病の管理と教育に焦点をあてたプログラム、(2) 糖尿病とともに生きることの精神的側面に焦点をあてたプログラム、(3) 2つのアプローチを組み合わせたプログラムをそれぞれ提供した。

 その結果、3つのプログラムのすべてで糖尿病がもたらす苦痛は減少し、血糖管理の指標となるHbA1cも低下したが、精神的側面に焦点をあてたプログラムも提供した患者はとくに効果が高かった。

 各プログラムには、3~4ヵ月の一連のオンラインミーティングや、グループワークショップ、グループ対話、インストラクターとの1対1の対話などが含まれていた。

 「提供した教育プログラムには、ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)の要素と戦略が組み込まれています。これは、行動理論をベースとした認知行動療法のひとつで、ネガティブな思考や感情にとらわれることが、行動を妨げている可能性があるという理解を促し、柔軟さを取り戻すためのものです」と、同大学でコミュニティ医療を研究しているダニエル ジョーンズ教授は述べている。

痛みのないインスリン療法
針や注射器を使わずにインスリンを投与する技術を開発

 針や注射器を使わずに、痛みをともなわずにインスリンを投与する新しい技術が実現に近づいたと、欧州共同体(EC)や糖尿病研究・健康財団(DRWF)が発表した。

 オランダのトゥウェンテ大学などが、欧州連合(EU)や欧州研究会議(ERC)などの支援を得て進めている研究プロジェクトで開発した「バブルガン(BuBbleGun)」という技術は、マイクロ流体デバイスとサーモキャビテーションを使用して、インスリン製剤を投与するというもの。

 バブルガンは、連続波レーザーを利用して、インスリン製剤を高い精度でマイクロジェット噴射するという新しい技術で、2025年までにプロトタイプを完成させることを目指している。ヒトを対象とした臨床試験は今年後半に開始する予定だという。

 「針を使わない注射を可能にし、インスリン治療の侵襲性を最小限に抑え、安全性と精度が高い、環境にも優しいデバイスを開発し、1日の頻回のインスリン注射を毎日行わなければならない人々の生活を改善したいと考えています」と、同大学生物工学部のデイビッド フェルナンデス リバス教授は述べている。

 25年前に1型糖尿病と診断され、現在54歳のリー キャラディンさんは、次のように語っている。

インスリン注射を長年続けていて、注射に嫌悪を感じることはありませんが、毎日の頻回注射はいまでも負担になっています。
インスリンを同じ部位に繰り返し注射すると、"インスリンボール"という、しこり(硬結)ができることがあります。インスリンボールに注射すると、インスリンが吸収されにくくなってしまいます。
新たに開発されているインスリン投与の技術は、そうしたインスリン注射の欠点を克服するものだと期待しています。

Number of over 65s with type 1 diabetes has almost tripled in 30 years (BMJ GROUP 2024年6月12日)
Global burden of type 1 diabetes in adults aged 65 years and older, 1990-2019: population based study (ブリティッシュ メディカル ジャーナル 2024年6月12日)
For Type 1 Diabetes Distress, Focus First on Managing Emotions (カリフォルニア大学サンフランシスコ校 2024年6月10日)
EMBARK: A Randomized, Controlled Trial Comparing Three Approaches to Reducing Diabetes Distress and Improving HbA1c in Adults With Type 1 Diabetes (Diabetes Care 2024年5月29日)
For diabetes patients, needle-free insulin injections are on the way (欧州連合 2024年3月28日)
Needle-free insulin injections under the microscope (糖尿病研究・健康財団 2024年4月5日)
Bubblegun - Towards controlled needle-free injections
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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