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2024年06月26日
糖尿病の人にとってアルコールは良い? 軽度の飲酒は健康に良い? 飲みすぎると健康効果は消失
「酒は百薬の長」ということわざがある通り、ほどよいアルコールはストレス解消やリラックス効果をもたらす。
適度な飲酒は、心臓の健康に良い影響を与え、脳のストレス活動を軽減することが示された。
一方で、アルコールを飲むのを習慣にしていると、血圧が上昇する可能性があるという研究も発表された。
アルコールに対する欲求を軽減し、飲みすぎないようにする治療法の開発も進められている。
糖尿病の人にとってアルコールは良い?
「酒は百薬の長」ということわざがある通り、ほどよいアルコールは健康に良いとみられている。適度の飲酒は、ストレス解消やリラックス効果をもたらす。 しかし、アルコールを適量を超えて飲みすぎてしまうと、その健康効果はすぐに打ち消されてしまう。アルコールの過剰摂取により、糖尿病や肥満をはじめとする、さまざまな疾患のリスクが上昇する。 アルコール摂取量と糖尿病や関連する疾患のリスクは、「Uカーブ」の関係にあることが示されている。つまり適度な飲酒をしていると、血糖コントロールの状態はむしろ良くなり、糖尿病合併症も減るという報告がある。 日本人を対象とした大規模調査「NIPPON DATA」でも、2型糖尿病では、適度な飲酒をする習慣のある人は、まったく飲まない人に比べ、心血管疾患などの死亡リスクはむしろ低いという結果が報告されている。軽度のアルコールは心臓に良くストレスも軽減
適度な飲酒は、心臓の健康に良い影響を与え、脳のストレス活動を軽減することが、米国のマサチューセッツ総合病院が5万人以上のデータを解析した研究で示された。 軽度のアルコール(1日に男性は1~2ドリンク、女性は1ドリンク)を摂取している人は、心筋梗塞などの心血管疾患のリスクが低い傾向があることが示された。 同病院の研究グループはさらに、以前にPET/CT脳画像検査を受けた754人を対象に、アルコール摂取が脳のストレスに関連する神経ネットワーク活動におよぼす影響を調べた。 対象者のうち、49%(366人)が軽度、46.0%(347人)が中程度、5.4%(41人)が多量の飲酒をする習慣があった。 その結果、軽度のアルコール摂取をしている人は、ほとんど飲まない人に比べて、ストレス反応に関連する脳領域である扁桃体でのストレスシグナル伝達が減少していることが示された。 扁桃体が過度に緊張していると、交感神経系の反応が高まり、血圧が上昇し、心拍数が増え、炎症が起こりやすくなるおそれがあるという。 関連情報アルコールを飲みすぎると健康効果は消失
アルコールを飲みすぎると血圧が上昇
アルコールは、適度に飲んでいると、むしろ健康効果をもたらすという報告は多い。しかし、注意しなければならないのは、アルコールを飲みすぎてしまうと、そうした効果はすぐに打ち消されてしまうことだ。 アルコールを飲みすぎると、血糖値を下げるインスリンが十分に働かなくなるインスリン抵抗性の原因になり、糖尿病の管理が難しくなり、高血圧や肥満のリスクも上昇する。肝臓病や脳卒中、心臓病、がんなどのリスクも高くなる。 米国糖尿病学会(AHA)は、アルコールを飲むのを習慣にしていると、高血圧のない成人でも血圧が上昇する可能性があるという別の研究結果を発表した。 これは、米国・韓国・日本の成人1万9,000人以上を対象とした7件の研究をデータ分析したもの。アルコール摂取量が少ない場合でも、血圧値の上昇がみられ、心血管イベントのリスクが高まる可能性が示された。飲酒のメリットとリスクについて相談
「アルコールが高血圧の唯一の原因ではないにしても、影響があることは明らかです。高血圧のない成人でも、毎日の飲酒量が増えると、血圧値は年々上昇することが示されました」と、イタリアのモデナ大学疫学・公衆衛生学部のマルコ・ヴィンチェティ教授は言う。 「アルコールを飲む習慣のない人は、無理して飲まないようにして、飲む習慣のある人は、過剰な摂取を避けることが必要です。とくに高血圧や糖尿病などの疾患のある人は、飲酒のメリットとリスクについて、かかりつけの医師や栄養士と相談してください」と、AHAはアドバイスしている。 「健康的な食事をとり、運動するのを習慣にして、喫煙せず、十分な睡眠をとり、健康的な体重を維持し、コレステロール・血糖・血圧のそれぞれの値を良好にマネジメントすることが大切です」としている。アルコールに対する欲求を軽減する治療法を開発
とくに肥満のある人のアルコールに対する欲求を軽減し、アルコール摂取量を減らす治療法の開発も進められている。
GLP-1受容体作動薬は、2型糖尿病や肥満症の治療薬として利用されている。この薬は、膵臓に作用してインスリン分泌を促すが、胃にも作用して胃の動きを抑え、脳にも作用して食欲を抑える。そのため、体重を増やしたくない、減らしたいという人にも向いている。
米国のバージニア工科大学が、肥満があり、GLP-1受容体作動薬を利用している153人の成人を対象に調査したところ、この薬を利用していない人に比べ、飲酒量の平均が減少していることが示された。
ケース ウェスタン リザーブ大学が、8万人超の肥満症の患者を対象に行った調査でも、GLP-1受容体作動薬による治療は、アルコール使用障害を軽減することが示された。
薬や治療法の効果を確かめるためには、研究の対象者を2つ以上のグループにランダムに分け、効果と安全性を適正に検証するランダム化比較試験が必要になる。
「GLP-1受容体作動薬の長期的な作用と副作用については、まだ十分に研究されていません。今後、ランダム化比較試験を実施することが望まれます」と、研究者は述べている。
「アルコールの飲みすぎにより健康への悪影響があらわれている人や、アルコール摂取の制限、あるいはまったく飲まないことが勧められている人のために、将来に効果的な治療法が開発されることを期待しています」としている。
Alcohol as a risk factor for type 2 diabetes:A systematic review and meta-analysis (Diabetes Care 2009年11月)
Mass General Hospital Researchers Uncover Why Light-to-Moderate Drinking Is Tied to Better Heart Health (マサチューセッツ総合病院 2023年6月12日)
Reduced Stress-Related Neural Network Activity Mediates the Effect of Alcohol on Cardiovascular Risk (Journal of the American College of Cardiology 2023年6月)
Virginia Tech researchers find drugs used to treat Type 2 diabetes reduce alcohol cravings, use in individuals with obesity (バージニア工科大学 2024年1月5日)
Semaglutide and Tirzepatide reduce alcohol consumption in individuals with obesity (Scientific Reports 2023年11月28日)
Retrospective study based on electronic health records finds popular diabetes and weight-loss drugs associated with reduction in incidence and recurrence of alcohol-use disorder by at least half (ケース ウェスタン リザーブ大学 2024年6月3日)
Associations of semaglutide with incidence and recurrence of alcohol use disorder in real-world population (Nature Communications 2024年5月28日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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