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2024年06月27日

糖尿病の人は腰痛リスクが高い ウォーキング・ヨガ・太極拳・気功は腰痛に効く 体を動かすことが大切

 2型糖尿病のある人は、腰痛のリスクが高いことが明らかになった。血糖管理を良好に維持することは、腰痛を予防したり悪化を防ぐためにも必要だ。

 最新の研究で、腰痛対策の運動は効果が高いことが分かった。腰痛を経験した人は、ウォーキングを行うことを習慣にすると、再発しない期間がほぼ2倍になるという。

 ヨガ、太極拳、気功などの身体活動も、腰痛対策の効果があることが明らかになっている。

 「ほとんどの人は、一生のあいだに腰痛を経験していますが、幸いなことに、腰痛のほとんどは適切なケアを行うことで回復できると考えられています」と、専門家は指摘している。

ほとんどの人が一生のあいだに腰痛を経験

 腰痛は、よくみられる身体的な障害で、世界中で5億7,000万人以上が悩まされているという。腰痛は生活の質を低下させるだけでなく、関連する医療費は米国だけでも1996~2016年には21.4兆円(1,345億ドル)に上り、医療経済への影響も深刻だ。

 「ほとんどの人は、一生のあいだに腰痛を経験していますが、幸いなことに、腰痛のほとんどは適切なケアを行うことで回復できると考えられています」と、南オーストラリア大学で理学療法や疼痛医療について研究しているロリマー モーズリー教授は言う。

 「ただし残念なことに、腰痛からいったん回復した人でも、10人に7人が1年以内に再発しているという報告があります。また腰痛が数ヵ月以上続くようだと、慢性化している可能性が高くなります」としている。

糖尿病の人は腰痛リスクが高い

 2型糖尿病のある人は、腰痛や椎間板に関連する障害を経験するリスクが高いことが、米カリフォルニア大学による研究で示された。椎間板は背骨にあり、骨と骨のあいだでクッションのような役割をしている。腰痛は椎間板変性と関連することが多い。

 コラーゲンは細胞をつなぎ合わせて、関節の動きの滑らかさなどを維持する役割をになうタンパク質。椎間板の中心にある髄核のまわりを、線維性のコラーゲンが囲んでおり、椎間板が圧縮力を吸収するのを助けている。

 健康であると、椎間板に圧力がかかると、この線維性のコラーゲンが働き、椎間板が圧力を効果的に消散できるが、血糖値が高い状態が続くと、コラーゲンの回転と伸びが減少し、圧力に耐える力が低下することが示された。

 血糖管理を良好に維持することは、腰痛を予防したり悪化を防ぐためにも必要だとしている。

ウォーキングなどの運動で腰痛に対策

 腰痛は、痛みの強い急性期には、無理をしないで安静にし、医療機関に相談する必要がある場合があるが、体を動かせるのであれば運動をした方が、再発や慢性化を防ぐのに効果的であることが分かってきた。

 最新の研究で、腰痛対策の運動は効果が高いことが分かった。腰痛を経験した人は、ウォーキングを行うことを習慣にすると、再発しない期間がほぼ2倍になることが、オーストラリアのマッコーリー大学の研究で示された。

 「ウォーキングには、特別なスキルは必要なく、低コストで手軽にはじめることができ、続けやすいというメリットがあります」と、同大学の理学療法学部のマーク ハンコック教授は言う。

 「なぜウォーキングが腰痛対策に良いのかは、正確には分かっていませんが、体におだやかな振動を加える運動であり、脊椎や筋肉に負荷をかけ強くし、さらにはリラクゼーションやストレス解消の効果もあることが影響していると考えられます」。

運動をすると鎮痛作用をもたらす物質が増える

 参加者には、6ヵ月にわたり、ウォーキングなどの運動を週に5回行い、時間は30分にまで増やすことを求めた。参加者のほとんどは3か月後には、週に3~5日、週全体で平均130分歩くようになっていた。

 「ウォーキングをはじめるときには、最初は短い散歩からはじめ、徐々に時間と頻度を増やしていくことが大切です。これによりケガのリスクも減らせます」と、ハンコック教授は指摘している。

 「ウォーキングをすることで、脳内で機能する神経伝達物質であるエンドルフィンが放出される可能性もあります。エンドルフィンは、脳や脊髄にある受容体に結合し、痛みを脳に伝える神経の活動を抑制して、鎮痛作用をもたらします」としている。

 研究グループは、腰痛を発症し回復した成人701人を対象に、6ヵ月間の個別のウォーキングプログラムと理学療法士が指導する6回の教育セッションに参加する介入群と、プログラムに参加しない対照群に無作為に割り付けた。その後、1年から3年にわたって追跡調査を行った。

 その結果、介入群は対照群に比べて、活動を制限するような痛みの発生が少なく、再発までの平均期間も長く、中央値は対照群の112日に対して介入群は208日だった。

 「歩くことは腰痛対策になるだけでなく、健康的な体重の維持、心臓血管や骨の健康、メンタルヘルスの改善など、多くの健康上のメリットをもたらします」と、ハンコック教授は指摘している。

ヨガ・太極拳・気功にも腰痛対策の効果が

 ウォーキングだけでなく、人気の高いヨガ、太極拳、気功などの身体活動も、腰痛対策の効果があることが、米国のフロリダ アトランティック大学の研究で明らかになっている。

 「腰痛は痛みだけでなく、うつ病や不安などのメンタルヘルス不調、睡眠障害、さらには社会的孤立とも関連しており深刻です」と、同大学社会デザイン研究学部のジュヨン パーク教授は言う。

 「腰痛を治療するために、運動や心身活動が勧められることが多いのですが、ヨガ、太極拳、気功なども慢性的な腰痛に対して効果があることが示されました」としている。

 研究グループは、慢性的な腰痛、心理的要因、生活の質の低下に対する、運動ベースの心身介入の効果を検証した32件の研究を解析した。対象となったのは、33~73歳の成人3,484人だった。

 調査した研究のうち2件は、米国の軍人や退役軍人が直面する健康問題を対処する心身へのアプローチを検討したもので、とくにヨガやストレッチはストレス対策にもなり、腰痛に対して効果があることが示された。

 「腰痛の治療として、痛みと炎症をやわらげるために、医療機関で薬物療法も行われています。ヨガ、太極拳、気功は、そうした投薬治療や神経ブロック療法などの代替として活用できる可能性があります」と、パーク氏は指摘している。

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[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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