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2023年11月07日

週に1回注射のインスリンが糖尿病治療を変える 注射回数を減らせば糖尿病の人の負担を減らせる

 週1回の注射でインスリンの基礎分泌を補う、超長時間作用型のインスリン製剤の開発が、世界で進められている。

 発表された新しい研究によると、1型糖尿病の人が、この新しい週1回注射のインスリン製剤を利用したところ、毎日の注射を必要とする従来の持効型溶解インスリン製剤と同じくらいの効果をえられることが示された。

週1回の注射で治療効果のあるインスリンを開発中

 週1回の注射でインスリンの基礎分泌を補う、超長時間作用型のインスリン製剤の開発が、世界で進められている。

 英国のサリー大学が発表した新しい研究によると、1型糖尿病の人が、この新しい週1回注射のインスリン製剤を利用したところ、毎日の注射を必要とする従来の持効型溶解インスリン製剤と同じくらいの効果をえられることが示された。研究成果は、医学誌「ランセット」に発表された。

 「1年間にわたる第3相臨床試験の結果は、この週1回注射のインスリン製剤が、糖尿病治療の将来に大きな変化をもたらす可能性を示しています」と、同大学糖尿病・内分泌学部のデビッド ラッセル ジョーンズ教授は言う。

 「新しいインスリンを、世界の数百万もの人々が糖尿病の管理をより良く実行するために役立てられるようになることを期待しています」としている。

注射回数を減らせば糖尿病患者の負担を減らせる

 インスリンの基礎分泌を補うインスリン製剤は、1日の血糖値を全体的に下げて、空腹時血糖の上昇を抑える作用がある。

 週1回注射のインスリン製剤の登場により、注射の回数を減らすことができ、糖尿病患者の負担を減らすことができるとみられている。

 「糖尿病は、患者さん自らによる長期的な管理が必要な疾患であり、多くの人はその管理が難しいと感じています」と、ラッセル ジョーンズ教授は言う。

 「インスリン注射を行うことは重要ですが、注射をし忘れてしまう患者が少なくなくありません。注射忘れは血糖管理に大きな影響をもたらす可能性があります」としている。

週1回の注射で「インスリンの打ち忘れ」をなくせると期待

 インスリン注射を必要としている人が、注射をしないでいると、糖尿病の急性合併症である糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)の危険性が高まる。

 インスリンが不足した状態では、血糖をエネルギー源として利用できないため、脂肪の分解が高まる。その結果、ケトン体という物質が著しく増え、血液が酸性に傾き、ケトアシド-シスと呼ばれる状態になる。

 ケトアシドーシスでは、高度の脱水状態になり、口渇・多飲・多尿・体重減少・全身倦怠感などの症状が急激に起こり、さらに悪化すると、呼吸困難、速くて深い呼吸、意識障害などが起こり、危険な状態になる。

 「新しい製剤を使えるようになると、インスリン注射の頻度を減らすことができます。治療の負担を軽減でき、注射忘れをなくせると期待しています。血糖管理を改善できる可能性があります」と、ラッセル ジョーンズ教授は指摘する。

週1回のインスリン注射で深刻な低血糖が起きないことも確認

 ラッセル ジョーンズ教授らは、12ヵ国の99の医療施設で1型糖尿病患者582人を対象に、この週1回注射の長時間作用型のインスリン製剤の有効性と安全性を検証し、それを従来の毎日の注射が必要なインスリン製剤と比較した。

 参加者を、従来の持効型溶解インスリン製剤を使用する群(毎日注射で100U/mL)と、新しい週1回注射のインスリン製剤を使用する群(週1回注射で700U/mL)に分け比較した。どちらの群も、食事による血糖値の上昇を抑える短時間作用型のインスリン製剤を併用した。

 26週間後、1~2ヵ月の血糖値の平均が反映されるHbA1cの平均は、従来の治療を受けた群では7.15%で、新しいインスリン製剤を使用した群では7.59%になり、同等であることが示された。週1回注射のインスリンにより、注射頻度は大幅に減少した。

 血糖値を下げる薬の使用により、血糖値が下がりすぎる低血糖が起こることがあるが、低血糖の発生率はどちらの群でも低く、ほとんどはブドウ糖の摂取などで対処できるものだった。

 週1回注射のインスリン製剤を使用した群では、54mg/dLを下回る低血糖が起きた時間は、試験開始22~26週後に推奨される目標値に達し、48~52週後には目標を下回った。

1型糖尿病とともに生きる人の負担を軽減したい

 1型糖尿病は、膵臓のインスリンを分泌するβ細胞が壊されてしまうことで発症する。1型糖尿病の発症には、免疫反応が正しく働かないことで、自分の細胞を攻撃してしまう「自己免疫」が関わっていると考えられている。

 1型糖尿病は、運動や食事などの生活スタイルが大きく関わる2型糖尿病とは、発症の原因や治療のあり方はまったく異なる。β細胞からインスリンがほとんど出なくなることが多く、インスリンが不足しているため、生命を維持するために体外からインスリンを補う治療が必要となる。

 「1型糖尿病とともに生きる人の、インスリン注射による負担を軽減し、糖尿病の管理を改善することが求められています」と、ラッセル ジョーンズ教授は言う。

 「今回の第3相臨床試験の結果は非常に希望をもてるものですが、今後も持続血糖モニターのデータを分析するなど、さらなる検討が必要です」としている。

Weekly insulin injections have the potential to be as effective in diabetes management as now-common daily injection regimes (サリー大学 2023年10月30日)
Once-weekly insulin icodec versus once-daily insulin degludec as part of a basal-bolus regimen in individuals with type 1 diabetes (ONWARDS 6): a phase 3a, randomised, open-label, treat-to-target trial (ランセット 2023年10月17日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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