ニュース
2024年06月13日
糖尿病の治療を続けて生涯にわたり健康生活 40年後も合併症リスクが大幅減少 最長の糖尿病研究「UKPDS」で明らかに
- キーワード
- 医療の進歩 医薬品/インスリン 糖尿病の検査(HbA1c 他)
2型糖尿病と診断され、すぐに積極的な治療を開始し、続けている人は、その40年後も糖尿病の合併症のリスクが軽減されていることが、世界最長の大規模研究のひとつである「UKPDS」で明らかになった。
2型糖尿病の診断後にすぐに治療を開始し、血糖値が目標範囲におさまるよう積極的な治療をした人は、その後も最長42年間にわたり、合併症のリスクが低くおさえられ、より長く健康的に生活できることが示された。
糖尿病の治療を早期に開始し継続している人は合併症リスクが大幅に低下
2型糖尿病と診断され、すぐに積極的な治療を開始し、続けている人は、その40年後も糖尿病の合併症のリスクが軽減されていることが、大規模な研究で明らかになった。 研究は、英国のオックスフォード大学とエディンバラ大学が発表したもので、2型糖尿病の人を対象に、世界でももっとも長く続けられている2型糖尿病の大規模臨床研究のひとつである「UKPDS」の、40年以上にわたるデータを分析したもの。 その結果、2型糖尿病の診断後にすぐに治療を開始し、血糖値が目標範囲におさまるよう積極的な治療をした人は、その後も最長42年間にわたり、合併症のリスクが低くおさえられ、より長く健康的に生活できることが示された。 食事療法や運動療法、血糖値を下げる飲み薬やインスリンによるしっかりとした治療を早期に開始した人は、心筋梗塞や狭心症などによる心臓発作は17%減少し、腎不全や視力喪失などの細小血管症は26%減少し、死亡リスクは10%減少した。 とくに糖尿病治療薬のひとつであるメトホルミンによる早期治療を開始した人は、食事や運動のみにより糖尿病の管理した人に比べ、心筋梗塞は31%減少し、死亡リスクも20%減少した。早くから血糖管理を良好に維持すれば後年の合併症を減少できる レガシー効果
糖尿病が恐ろしいのは、自覚症状がないうちに糖尿病の合併症が進行してしまうからだ。主な合併症として、腎臓病・網膜症・神経障害などの「細小血管障害」と、心筋梗塞・脳梗塞・末梢動脈疾患・足病変などの「大血管障害」がある。 1~2ヵ月の血糖値の平均が反映されるHbA1cを、7%未満に管理できていれば、合併症を予防できることが分かっている。 「UKPDS」は、1977年に開始された世界的に有名な大規模臨床研究。この研究は20年間続けられ、1998年には画期的な発見が発表された。 血糖管理をしっかりと続けていれば、細小血管障害と大血管障害のリスクを大幅に減らすことができることが明らかになった。 糖尿病と診断されてからすぐに、適切な治療をはじめて、血糖管理を良好に維持していれば、後年の合併症の発症を減少できることは、「レガシー効果(遺産効果)」と呼ばれるようになり、世界中の糖尿病の診療ガイドラインに取り入れられた。 「UKPDS」は20年間続けられ、その後も参加者の健康状態が継続的にチェックされた。そして今回、糖尿病治療の「レガシー効果」は、最長で42年間持続することが明らかになった。レガシー効果は最長で42年間持続 生涯にわたりプラスの影響
「2型糖尿病を早期に発見し、適切な治療を行い糖尿病を管理し、血糖値や血圧値などを目標内に維持することが、合併症を予防するための鍵となることが、あらためて示されました」と、オックスフォード大学糖尿病治験ユニットの創設ディレクターであるルーリー ホルマン教授は言う。 「2型糖尿病は、初期の段階では自覚症状がないことが多く、症状があらわれるとしても、ゆっくりと少しずつあらわれます。自覚症状がないと、ついつい安心してしまい、油断しがちになります」。 多くの患者は2型糖尿病の診断を受けるまでの数年間、適切な治療を受けずに放置されている可能性があるという。糖尿病の診断を受けたときには、病状がかなり進んでしまっていることは少なくない。糖尿病を早期発見するために、検査を定期的に受けることが重要だ。 「今回の研究で、2型糖尿病を早期発見し、集中的な糖尿病の管理を行えば、ほぼ生涯にわたり死亡や心筋梗塞などのリスクを軽減できることが分かりました。2型糖尿病の診断後、すぐに正常血糖に近い状態に管理することは、糖尿病の合併症の生涯リスクを可能な限り最小限に抑えるためにとても重要です」と、ホルマン教授は強調する。 「糖尿病の合併症の発生率を減少できれば、患者さんの生活の質(QOL)に、生涯にわたり全体的なプラスの影響があらわれます」としている。 Early blood sugar management for people with type 2 diabetes has lifelong benefits (英国糖尿病学会 2024年5月23日)Early blood glucose control for people with type 2 diabetes is crucial for reducing complications and prolonging life (オックスフォード大学 2024年5月20日)
Post-trial monitoring of a randomised controlled trial of intensive glycaemic control in type 2 diabetes extended from 10 years to 24 years (UKPDS 91) (Lancet 2024年5月17日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
医薬品/インスリンの関連記事
- 【1型糖尿病の最新情報】1型糖尿病の人の寿命は延びている 精神的負担を軽減し血糖管理を改善 針を使わずにインスリンを投与
- 糖尿病の治療を続けて生涯にわたり健康生活 40年後も合併症リスクが大幅減少 最長の糖尿病研究「UKPDS」で明らかに
- インスリンを飲み薬に 「経口インスリン」の開発が前進 糖尿病の人の負担を減らすために
- 1型糖尿病の人の4人に1人が摂食障害? 注射のスキップなど 若年だけでなく成人もケアが必要
- 糖尿病の人は腎臓病のリスクが高い 腎臓を守るために何が必要? 「糖尿病・腎臓病アトラス」を公開
- 糖尿病は治る病気? 大幅な体重減少を達成した人は糖尿病が「寛解」 体重を増やさないことが大切
- 1型糖尿病の根治を目指す「バイオ⼈⼯膵島移植」 研究を支援し「サイエンスフォーラム」も開催 ⽇本IDDMネットワーク
- 糖尿病のある人は「がんのリスク」が高い 飲み薬のメトホルミンがリスクを減少 がん予防で必要なことは?
- 糖尿病と高血圧のある腎不全の男性を透析から解放 世界初の「異種移植」が成功
- 1型糖尿病患者に「CGM+インスリンポンプ」を提供 必要とする人が使えるように 英国で5ヵ年戦略を開始