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2023年07月07日

「植物性食品」が糖尿病の人の血糖値を下げ体重を減らす 「植物性ヨーグルト」がおすすめ

 「植物性食品」が中心の食事スタイルにより、2型糖尿病の人の血糖値が下がり、血糖管理が改善し、肥満のある人では体重が減るという研究が発表された。

 大豆やアーモンドなどを原料にした「植物性ヨーグルト」の栄養価は高いことも明らかになった。

 植物ベースと動物ベースの両方を使用した「ハイブリッド食品」は、栄養を改善し、食に対する満足度を上げ、環境への負荷もより小さいと期待されている。

「植物性食品」が中心の食事スタイルで糖尿病や肥満が改善

 植物性食品は、植物由来の原料で作られた食品で、世界的に人気が高まっている。大豆や野菜などを使い、肉の食感を再現した「大豆ミート」などのニーズは増えている。

 植物性食品が中心の食事スタイルにより、2型糖尿病の人は血糖値が下がり、血糖管理が改善し、肥満のある人は体重が減る可能性があるという研究を、欧州肥満学会(EASO)が発表した。研究成果は、5月にオランダで開催された欧州肥満会議(ECO)で発表された。

 野菜・大豆・豆類・ナッツ類、果物などの植物性食品を豊富に含む食事スタイルを12週間以上続けると、体重・BMI・血糖値・総コレステロール・悪玉のLDLコレステロール値が・それぞれ改善することが示された。

 「植物性食品は、体に悪い脂肪はあまりありませんが、食物繊維は多く含まれます。植物性食品を食事の中心にすると、全体のカロリー摂取量が減少し、体重減少につながる可能性があることも示されました」と、デンマークのコペンハーゲン大学ステノ糖尿病センターのアンネ ディッテ テルマンセン氏は言う。

「植物性食品」に代えると体重が減少し血糖値が改善

 研究グループは、BMIが25以上の肥満のある人、あるいは2型糖尿病のある人の計796人(平均年齢は48~61歳)を対象とした11件の介入試験のデータを分析した。

 その結果、植物性食品が中心の食事を12週間以上(平均は19週間)続けた人は、食事を変えなかった人に比べて、平均して、体重は4.1kg、BMIは1.38、血糖値は0.18%ポイント、総コレステロール値は2.7mg/dL、悪玉のLDLコレステロール値は2.16mg/dL、それぞれより減少した。

 「植物性食品が中心の食事を12週間以上続けると、臨床的に意味のある体重減少と血糖値の改善をもたらされる可能性が示されました」と、テルマンセン氏は指摘する。

関連情報

動物性食品の一部を植物性食品に置き代え

 ただし、肉類はタンパク質の主要な供給源にもなる。タンパク質を構成するアミノ酸のなかには、「BCAA(分岐鎖アミノ酸)」と呼ばれるものがあり、筋肉を作るために欠かせない栄養素だ。

 魚・鶏肉・豚肉・牛肉などにはBCAAが多く含まれ、大切なタンパク源になる。

 一方で、動物性食品には飽和脂肪酸も多く含まれる。飽和脂肪酸をとりすぎると、血液中の悪玉コレステロールが増え、動脈硬化の原因となる。

 テルマンセン氏は「今回の研究は規模が大きくなく、植物性食品の心臓血管の健康への影響についてはまだよく分かっていません」として、「肉類などの動物性食品を食べるのが絶対に良くないということではありません」と付け加えている。

 「多くの人は肉類を食べすぎている傾向があります。動物性食品の一部を植物性食品に置き代えることで、過体重や肥満、2型糖尿病の管理が改善することを期待できます」としている。

「植物性ヨーグルト」の人気が上昇

「植物性ヨーグルト」は栄養価が高い

 植物ベースの食品に対する人気は世界的に高まっており、大豆やアーモンドなどを原料とした植物性ヨーグルトの種類が増えている。植物性ヨーグルトの栄養価は高いことが、米マサチューセッツ大学による別の研究で明らかになった。

 米国の植物性ヨーグルトの市場は、2021年の16億ドルから2030年には65億ドルへと、爆発的に成長すると予想されている。

 植物性食品は動物性食品に比べ、製造過程での環境への負荷も少なく、二酸化炭素ガスの排出や水不足、森林破壊などの面でも有利とみられている。

 「植物ベースの食事スタイルに対する人気は高まっています。動物ベースから植物ベースに移行するのは大きな変化です」と、同大学食品科学部のアリッサ ノルデン氏は言う。

「アーモンドヨーグルト」は栄養密度がもっとも高い

 研究グループが今回、乳製品のヨーグルトと植物ベースのヨーグルトを比べ、全体的な栄養密度などを調べた結果、ヨーグルトのなかでもっとも栄養密度が高いのは、「アーモンドヨーグルト」であることが明らかになった。

 アーモンドヨーグルトは、アーモンドミルクや食物繊維などを発酵した植物性のヨーグルト。糖質や塩分、飽和脂肪酸など、とりすぎを控えたい栄養は少ないが、体に良い不飽和脂肪酸や食物繊維などは豊富に含まれている。

「植物性食品」と「動物性食品」をバランス良く

 「植物ベースのヨーグルトは、乳製品に比べ、糖質や塩分が少なく、食物繊維は多く含まれます」と、同大学食・農・環境センターのアストリッド ダンドレア氏は説明する。

 ただし、タンパク質やカルシウム、カリウムなど十分にとりたい栄養は、植物ベースのヨーグルトは乳製品のヨーグルトよりも少なめだ。

 「動物性食品は、タンパク質やカルシウムなどのすぐれた供給源にもなりえます。植物ベースにすれば、必ず栄養価が高いというわけではないことに注意する必要があります」。

 しかし、多くの人が動物性食品をとりすぎており、とくに米国人は全体的に動物性食品をとりすぎている傾向があるという。

 「動物性食品と植物性食品のそれぞれにメリットがあるので、バランスよくとることが勧められます」としている。

植物ベースと動物ベースの両方を生かした「ハイブリッド食品」

 研究グループは今回、食品データベースを使い、612種類のヨーグルトの栄養情報を収集した。食品の栄養密度にもとづき、高栄養価スコアを作成し、増やしたい栄養素[タンパク質、食物繊維、カルシウム、鉄分、カリウム、ビタミンDなど]と、減らしたい栄養素[飽和脂肪酸、糖質、塩分]について比較した。

 植物ベースのヨーグルトの原料となっているのは、ココナッツ、アーモンド、カシューナッツ、オーツ麦、大豆などだった。

 研究グループは、新しい選択肢として、植物ベースと動物ベースの両方を使用したハイブリッドの食品を作ることを提案している。

 これにより、糖質・塩分・飽和脂肪酸などを最小限に抑えながら、タンパク質・ビタミンB12・カルシウムなどを十分に摂取できるようになるとしている。

 「植物ベースのヨーグルトと乳製品のヨーグルトをブレンドすることで、より優れた栄養プロファイルを実現しながら、食に対する満足度を上げ、環境への負荷はより小さくすることができます」と、ノルデン氏は指摘している。

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A comparison of the nutritional profile and nutrient density of commercially available plant-based and dairy yogurts in the United States (Frontiers 2023年5月25日)
Plant-based low-carbohydrate diet linked with lower risk of premature death for people with type 2 diabetes (ハーバード公衆衛生大学院 2023年2月28日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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