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2023年07月10日

糖尿病の人は「心房細動」にご注意 脳梗塞や心不全の原因にも 悪化を防ぐための注意点は?

 「心房細動」は、心臓の心房の収縮が不規則になり、細かく震えるようになる不整脈のこと。患者数は増加傾向にあり、糖尿病の人も血糖管理が良好でないと、心房細動のリスクが高いことが知られている。

 心房細動の危険因子となるのは、高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満、慢性腎臓病、喫煙、大量の飲酒、塩分や脂肪のとりすぎ、運動不足など。これらのリスクを減らしていくことが大切になる。

 「悪化を防ぐための注意点」「治療にあたっての注意点」なども公開されている。

心房細動を早期発見 無症状であることも多い

 「不整脈」は、心臓を動かしている電気系統が何らかの原因で乱れ、リズミカルな収縮を行えなくなっている状態。

 そのうち「心房細動」は、心房の電気信号が異常を起こしている頻脈で、心臓から血液を送り出す能力に影響があらわれる。

 心房細動になると、心房のなかで血液がよどむようになり、血栓ができやすくなる。血栓が血流によって脳に運ばれると「脳梗塞」を引き起こす。

 とくに、心不全を起こしたことがある人、高齢の人、高血圧や糖尿病のある人、一過性脳虚血発作を起こしたことがある人などは、脳梗塞を起こす危険性が高い。

 しかし、心房細動の患者の4割は無症状で、たとえ症状が起きたとしてもすぐに治まることも多いため、早期発見が難しいとされている。

脈のリズムが不規則なのは、心房細動のサインかも?

 心臓病についての知識普及などを展開している日本心臓財団は、ACジャパンの「支援広告キャンペーン」による啓発活動を開始した。リスクの高い不整脈である「心房細動」の早期発見をテーマにした啓発広告を展開している。

 心房細動は、加齢や高血圧、2型糖尿病などの生活習慣病、さらにはストレスにより発症リスクが上昇する。超高齢社会の影響で、患者数は増加傾向にある。

 心房細動を放置すると、心原性脳梗塞や心不全の原因となるため、早期発見が重要となる。

 CMでは、同財団の活動に賛同しているTRFのメンバーであるDJ KOOさんが、CMオリジナルのビート「EZ DO(イージードゥ)検脈!」とともに、「脈のリズムが不規則なのは、心房細動のサインかも?」などと呼びかけている。

日本心臓財団「EZ DO(イージードゥー)検脈!」篇

悪化を防ぐための注意点は? 心臓病に負けず健康長寿を目指そう

制作:公益財団法人 日本心臓財団 バイエル薬品株式会社

 日本心臓財団とバイエル薬品は、心臓病に関する共同事業の一環として、心房細動および心不全について、一般・患者向けの啓発ビデオを公開している。

 いずれも、各疾患について5分程度の3編構成になっており、専門医が司会者の質問に答えるかたちで、分かりやすく解説している。

 ▼病気の仕組みとその原因、▼放っておくと大変なことになる、▼悪化したときのサイン、▼悪化を防ぐための注意点、▼治療にあたっての注意点などの内容

 心房細動の患者数は2050年に約103万人、心不全の患者数は2030年に130万人に、それぞれ増加すると推計されており、健康寿命を脅かす重大な疾患となっている。

 心臓病のある人は、新型コロナに感染すると重症になる可能性があることから、新型コロナの予防や注意事項についてもアドバイスしている。
専門医による心臓病ビデオ講座

【心房細動1】病気のしくみとその原因は?

【心不全1】病気のしくみとその原因は?

 両者は、リーフレット「心不全に負けず健康長寿を目指そう」(監修:堀正二・大阪大学名誉教授)も公開している。

 心不全は、全身に血液をおくりだすポンプの働きをしている心臓が、うまく働かなくなった状態。普通に歩いていたり、ちょっとした動作をしていても、動悸や息切れがしたり、疲れやすい、さらには、むくみが出るなどの症状が起こる。

 「心房細動は、脳卒中の原因となる不整脈で加齢や飲酒、喫煙などがリスクとなります。また心不全は高血圧や糖尿病、弁膜症、心房細動が原因で、心臓の動きが悪くなり、息切れやむくみが起きて生命を縮める病気です」と、同財団の矢﨑義雄理事長が解説。

 「心房細動と心不全はお互いに悪い影響を与える病気ですので、ぜひビデオをよく見て、予防や治療の正しい知識をえてください」としている。

コロナ禍でAEDによる救命活動が減少

心室細動は命にかかわる危険な状態

 不整脈のなかでも、とくに心臓の血液を全身におくりだす心室がブルブル震えて(細動)、血液をおくりだせなくなった状態が「心室細動」。

 心室細動になると、心停止の状態になり、脳を含めた全身への血液供給が止まり、意識を消失する。日本心臓財団によると、人が倒れて意識を失った場合、心臓が心室細動を起こしている可能性がある。

 脳や腎臓、肝臓など重要な臓器にも血液がいかなくなり、やがて心臓が完全に停止してしまうと、死につながる危険な状態だ。

 心室細動を起こした人が、救急車を待っていたのでは、助かる確率が低くなる。倒れた場所の近くにいた人が、AEDを操作し救命活動を行うと、助かる可能性は大幅に高くなる。

心室細動で心停止 AEDを使った救命活動

 AED(自動体外式除細動器)は、心臓がけいれん(細動)したときに、心臓に電気ショックを与えることで、それを取り除き(除細動)、心臓を正常なリズムに戻すための医療機器。

 AEDは、小型の器械で、胸の上に貼った電極のついたパッドから、自動的に心臓の状態を判断する。もし心室細動という不整脈を起こしていれば、電流を一瞬流して心臓にショックを与えることで(電気ショック)、心臓の状態を正常に戻す働きをする。

 2004年から一般の人もAEDを使えるようなり、救命活動を行えるようになっている。救命時に必要な操作を音声や光で案内するAEDが、多くの人が訪れる商業施設、駅、市役所、学校などの公共施設に設置されている。

 心停止による死亡は、交通事故や火災などに比べて発生件数が少ないにもかかわらず、死亡者数は大幅に多い。救急車が到着するまでのあいだ、現場でAEDを使ったいち早い救命活動が重要になる。

 消防本部などが実施する応急手当講習など、一般市民に対する普及啓発活動も行われている。コロナ禍以前は、救急現場に居合わせた一般市民により、AEDによる除細動などの応急手当が実施された件数は増えていた。

コロナ禍でAED使用率が急激に低下

 そのAED使用率が、新型コロナに対して発出された緊急事態宣言後には、急激に低下していたことが、国立循環器病研究センターの調査で明らかになった。

 新型コロナの拡大は、肺炎・急性心筋梗塞などによる死亡など、直接的な影響が注目されているが、感染を恐れるために、一般市民による心停止患者へのAED使用に遅れが生じるなど、間接的な影響も深刻であることが示された。

 研究グループは、総務省消防庁による救急蘇生統計データを用いて、2020年に発出された新型コロナに対する緊急事態宣言がもたらした間接的な影響を調査した。

 2017年~2020年の院外心停止患者のうち約2万例を解析した結果、AED使用の割合は、緊急事態宣言発出後に0.60倍に低下していることが示された。それにともない、良好な神経学的転帰も0.79倍に低下した。

 他の先進国に比べ、新型コロナによる死亡率が極めて低い日本でも、人々の行動および意識に変容をおよぼした緊急事態宣言は、市民によるAED使用と、良好な神経学的転帰に、それぞれ減少を引き起こしたことが示された。

 研究は、熊本大学病院医療情報経営企画部の石井正将氏、循環器内科の辻田賢教授らが、東京大学、日本循環器学会蘇生科学検討会などの研究チームと共同で行ったもの。研究成果は、「JAMA Network Open」に掲載された。

 「心停止の患者さんへの救命活動の普及と予後改善が求められています。より多くの人々が救命措置を行えるようにするための啓発活動や教育も重要です」と、研究者は述べている。

緊急事態宣言後にAED使用率が急激に低下
より多くの人々が救命措置を行えるようにするための啓発活動や教育が必要

出典:国立循環器病研究センター、2023年

公益財団法人 日本心臓財団

公益財団法人日本心臓財団、バイエル薬品株式会社

国立循環器病研究センター
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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