ニュース

2023年05月15日

「食の多様性」は糖尿病と認知症のリスクを下げる 多様な食品を食べる食事スタイルは体と脳に良い

 毎日の食事で多様な種類の食品を摂取していると、将来の認知症を予防するのに効果的であることが、日本人を対象とした大規模な調査で示された。

 1日に多様な種類の食品を摂取することが、⼼筋梗塞や脳卒中などの循環器疾患の予防や、死亡リスクを減少するために良いことは、これまでの調査でも示されている。

 いろいろな食品を食べる食事スタイルは、糖尿病のリスクも低下することも、海外の大規模な調査で確かめられている。

 多様な種類の食品を食べている人は、栄養バランスが良好になり、脳や体の栄養状態が良くなりやすいとみられている。

「食の多様性」の高いと認知症リスクが減少

 「いろいろなものを食べると健康に良い」と言われることが多く、食品摂取の多様性は良好な栄養バランスにつながりやすいと考えられている。

 「××が体に良い、××を食べるのは健康的」などといった話を耳にして、そればかりを集中的に食べる人もいるが、そうしたやり方は決して体に良いとは言えない。

 毎日の食事で多様な種類の食品を摂取していると、将来の認知症を予防するのに効果的であることが、日本人を対象とした大規模な調査で示された。

 「JPHC研究」は、日本人を対象に、さまざまな生活習慣と、がん・2型糖尿病・脳卒中・心筋梗塞などとの関係を明らかにする目的で、国立がん研究センターを中心に実施されている多目的コホート研究。20年以上にわたり、追跡調査が行われている。

 研究グループは1995年と1998年に、秋田、長野、沖縄、茨城、高知の5地域に在住していた、虚血性心疾患・脳卒中・がんの既往のない45~74歳の男女3万8,797人を対象に調査した。

 133項目の食品や飲料について、1日に何種類摂取しているのかを「食多様性スコア」として得点化し、このスコアとその後の認知症の発症との関連を調べた。

 その結果、「食多様性スコア」がもっとも高い、つまり1日に摂取する食品の種類がもっとも多い女性では、もっとも少ない女性に比べて、認知症の発症リスクは33%減少していた。

1人暮らしの男性でも認知症リスクは減少

 一方、男性全体では、食の多様性と認知症との関連はみられなったものの、1人暮らしの男性に限ってみると、やはり多様な食品の摂取が認知症リスクの低下と関連していることが示された。

 1人暮らしの男性でも、1日に摂取する食品の種類がもっとも多いと、もっとも少ない場合に比べて、認知症の発症リスクは低下していた。

 「食の多様性が高い人では、さまざまな栄養素の摂取状況が好ましいため、多様な食品の摂取により脳内の栄養状態が良くなり、認知症発症が予防された可能性があります」と、研究者はコメントしている。

 「食の多様性の高い食事をとるための食行動(たとえば料理をする、献立を考える)が、認知機能の維持、ひいては認知症の発症予防につながっていることも考えられます」としている。

「食の多様性」の高い女性では認知症の発症リスクが減少
食多様性(食品群/日)5群と要介護認知症発症リスクとの関連

出典:国立がん研究センター、2023年

「食の多様性」は糖尿病リスクも低下

いろいろなものを食べる食事スタイルが糖尿病リスクを低下

 いろいろな食品を食べる食事スタイルは、糖尿病のリスクも低下することが、海外の大規模な調査でも確かめられている。

 これは、英国のケンブリッジ大学などが、デンマーク・フランス・ドイツ・イタリア・オランダ・スペイン・スウェーデン・英国の8ヵ国で実施している国際的な研究「EPIC-InterAct」研究で得られた成果。

 研究グループは、2型糖尿病のある1万363人の成人を含む、2万3,649人を対象に食事調査を行った。▼野菜、▼肉類、▼動物性タンパク質、▼植物性タンパク質、▼食物繊維などを含む、5つのグループの食品群の摂取と、2型糖尿病の発症リスクとの関連を調べた。

 その結果、もっとも多様な種類の食品を食べている人は、もっとも食の多様性の乏しい人に比べ、2型糖尿病の発症リスクが14%低いことが明らかになった。

 糖尿病リスクは、野菜をよく食べている人で10%減少し、とくに植物性タンパク質をよく食べている人では22%減少した。

 逆に、動物性タンパク質を食べ過ぎている人では、多様な動物性食品を食べていても、2型糖尿病のリスクは1.39倍に上昇することが示された。

野菜や全粒穀物を食べている人は糖尿病リスクが低い

 英国政府が推奨している5つのグループの食品群は、▼小麦や米などの炭水化物の多い食品、▼野菜や果物、▼肉や魚、卵などのタンパク質の多い食品、▼牛乳やチーズ、ヨーグルトなどの乳製品、▼植物油などの油脂。

 「5つのグループの食品群を適度に食べることで、食事の炭水化物・脂質・タンパク質・ミネラル・ビタミンのバランスが良くなります」と、カナダのブリティッシュコロンビア大学で栄養学を研究しているハディス モザファリ氏は言う。

 「EPIC-InterAct」研究の過去の成果では、野菜や果物、全粒粉のパンや玄米などの「全粒穀物」を食べていると、糖尿病リスクが低下することも示されている。

 さらに、野菜や果物を十分に食べていて、これらに含まれるビタミンCやカロテノイドの血中濃度が高い人は、2型糖尿病のリスクが50%低くなることが報告されている。

 野菜と果物に含まれるビタミンCとカロテノイドには、活性酸素の有害作用を抑える抗酸化作用がある。野菜と果物には食物繊維やカリウムなども含まれ、これらが動脈硬化を抑制し、心臓病や脳卒中のリスクを減少させるとみられている。

 「これまで食の多様性を維持することは、2型糖尿病だけでなく、がん、うつ病、喘息、食物アレルギー、肥満・メタボリックシンドロームなどのリスク低下とも関連していることが示されています」と、モザファリ氏は指摘している。

5つのグループの食品群[炭水化物の多い食品・野菜や果物・タンパク質の多い食品・乳製品・植物油など]をバランス良く食べることが大切
英国の食事ガイドより

出典:The Eatwell Guide

多目的コホート研究「JPHC Study」(国立がん研究センター がん対策研究所 予防関連プロジェクト)
Dietary diversity and risk of late-life disabling dementia in middle-aged and older adults (Clinical Nutrition journal 2023年2月8日)
Association of dietary diversity with total mortality and major causes of mortality in the Japanese population: JPHC study (European Journal of Clinical Nutrition 2019年3月19日)
MRC疫学ユニット「EPIC-Interact」 (ケンブリッジ大学)
Is Eating a Greater Diversity of Foods Associated with Lower Incidence of Type 2 Diabetes?: Prospective Analysis of the EPIC-InterAct Case-Cohort Study (Current Developments in Nutrition 2022年6月14日)
The Eatwell Guide (英国政府 2018年9月25日)
The Eatwell Guide (英国国民保健サービス 2022年11月29日)
Adding variety to your diet lowers disease risk. But what does variety mean? (Conversation 2019年9月25日)
Higher fruit, vegetable and whole grain intake linked to lower risk of diabetes (BMJ 2020年7月8日)
Association of plasma biomarkers of fruit and vegetable intake with incident type 2 diabetes: EPIC-InterAct case-cohort study in eight European countries(BMJ 2020年7月8日)
Intake of whole grain foods and risk of type 2 diabetes: results from three prospective cohort studies(BMJ 2020年7月8日)
Increasing dietary fibre may reduce the risk of developing diabetes(ケンブリッジ大学 2015年5月27日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

食事療法の関連記事

play_circle_filled 記事の二次利用について

このページの
TOPへ ▲