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2023年05月25日

牛乳を1日に1~2杯を飲むのは糖尿病にも良い 乳製品が糖尿病・心臓病・脳卒中のリスクを低下

 牛乳やチーズ、ヨーグルトなどの乳製品を摂取している人は、⼼筋梗塞や脳卒中などの死亡リスクが低いことが、9万人超の日本人を対象とした調査で明らかになった。

 牛乳やヨーグルトなどの乳製品を摂取していると、2型糖尿病・高血圧・肥満・メタボのリスクが低下することが、海外の大規模な調査でも示されている。

 多くの人にとって、牛乳を1日にコップ1~2杯を飲む習慣は健康的とみられている。栄養が豊富に含まれる牛乳やチーズ、ヨーグルトなどの乳製品は、毎日利用したい食品だ。

牛乳などを摂取している人は⼼筋梗塞や脳卒中などのリスクが低い

 牛乳やチーズ、ヨーグルトなどの乳製品には、タンパク質、脂肪、カルシウムなどのミネラル、ビタミンなどが豊富に含まれている。

 牛乳などの乳製品を摂取している男性は、⼼筋梗塞や脳卒中などの死亡リスクが低いことが、9万人超の日本人を対象とした調査で明らかになった。

 牛乳を1日にコップ1~2杯を飲んでいる女性は、脳卒中のリスクが低下するという調査結果も発表されている。

 海外には、牛乳やヨーグルトなどの乳製品を摂取していると、2型糖尿病や高血圧、肥満のリスクが低下し、心臓病や脳卒中のリスクの低下を期待できるという報告もある。

 乳製品には、カルシウムなどに含めて、血圧を下げる働きのある栄養素が含まれるとしている。牛乳を1日にコップ1~2杯を飲む習慣は健康的とみられている。

「牛乳は心臓血管疾患のリスクを高める」は誤解?

 牛乳などの乳製品には、糖質や飽和脂肪酸も含まれる。飽和脂肪酸を多く含む動物性の食品を食べ過ぎると、血液中に悪玉コレステロールをとどこおらせ、動脈硬化や心筋梗塞などの心臓血管疾患などのリスクが高まるとみられている。

 このことから、「牛乳を飲み過ぎると心臓血管疾患のリスクが増えるのではないか?」と疑われていた時期もある。

 しかし、最近の研究では、牛乳などは適量を摂っていると、むしろそうした疾患や、2型糖尿病や高血圧などの生活習慣病のリスクを減らすことが分かってきた。

 ただし、動物性の脂肪の摂り過ぎが気になる人は、牛乳の脂肪分を調整した「低脂肪乳」を利用する方法もある。

乳製品を摂取している人は死亡リスクが低い 日本人を調査

 「JPHC研究」は、日本人を対象に、さまざまな生活習慣と、がん・2型糖尿病・脳卒中・心筋梗塞などとの関係を明らかにする目的で、国立がん研究センターを中心に実施されている多目的コホート研究。20年以上にわたり、追跡調査が行われている。

 研究グループは1995年と1998年に、岩手、秋田、長野、沖縄、東京、茨城、新潟、高知、長崎、大阪の11保健所管内に在住していた45~74歳の男女9万3,310人を対象に、2018年まで追跡して調査した。

 研究グループは、参加者の食事調査票の回答をもとに、牛乳・チーズ・醗酵乳製品(ヨーグルトなど)から、乳製品の摂取量を推定した。

 乳製品の摂取量により、多いグループと少ないグループに均等に4つに分けて比べた。その結果、男性では、乳製品の摂取量が多いと、全死亡と⼼筋梗塞や脳卒中などの循環器疾患による死亡リスクが低いことが明らかになった。

乳製品の摂取量が多い男性は全死亡・循環器疾患の死亡リスクが低い
出典:国立がん研究センター、2023年

牛乳などの乳製品に血圧を下げる働きがある?

 研究グループによると、乳製品に含まれる活性ペプチドには、血圧を上昇させる酵素を阻害することで、血圧を下げる働きがある。また、乳製品は、カルシウム・リン・カリウムなどのミネラルも多く含まれ、これらの栄養素も血圧を下げるのに効果的だ。

 こうした乳製品の栄養素の働きにより、乳製品を摂取している人では死亡リスクが低くなった可能性が考えられるという。

 一方で、牛乳などの乳製品は動物性食品であり、飽和脂肪酸やコレステロールも含まれ、一般的にこれらを摂り過ぎると循環器疾患のリスクは上昇する。

 今回の研究でも、男性では牛乳とがんの死亡リスクとのあいだに、U字型の関係(摂取が少な過ぎても多過ぎても死亡リスクが高くなる)がみられた。やはりどんな食品も食べ過ぎは良くないようだ。

 また、牛乳を飲んでいる人は、飲まない人に比べて、喫煙や大量飲酒をすることが少なく、運動を習慣としていたり、魚・大豆・野菜・果実などの健康的な食品をよく食べる傾向がみられるという報告もある。

 日本人の牛乳などの乳製品の摂取量は、欧米人に比べて少ないことが知られている。今回の研究では、低脂肪乳などの乳製品による脂肪分の違いまでは調べていないことなども今後の研究の課題になっている。

牛乳やヨーグルトなどが糖尿病や高血圧のリスクを低下

 海外の研究では、牛乳やヨーグルトなどの乳製品を摂取していると、2型糖尿病・高血圧・肥満・メタボリックシンドロームのリスクが低下し、心臓病や脳卒中のリスクの低下を期待できることが示されている。

 これは、カナダのマクマスター大学などが、21ヵ国の14万人以上を対象とした調査によるもの。研究グループは、大規模コホート研究「都市農村疫学研究(PURE)」に参加した21ヵ国の35~70歳の男女14万7,812人を対象に調査をした。

 その結果、メタボリックシンドロームのリスクは、全脂肪乳を摂っている人で28%、低脂肪乳を摂っている人で11%、それぞれ低下することが分かった。

 牛乳やヨーグルトなどの乳製品をよく摂っている人では、2型糖尿病と高血圧のリスクも低下した。乳製品を1日2回以上摂取していると、まったく摂取していない人に比べ、2型糖尿病のリスクは12%、高血圧のリスクは11%、それぞれ低かった。

 ただし、どんなに体に良いとされる食品であっても、過剰に摂取すると、その健康効果が打ち消されてしまうことがある。また、乳糖を分解する酵素をもたない人や、食品アレルギーのある人では、乳製品は注意が必要になる。

 しかし、多くの人にとって、牛乳を1日にコップ1~2杯を飲む習慣は健康的とみられている。タンパク質、脂肪、カルシウムなどのミネラル、ビタミンなどが豊富に含まれる牛乳やチーズ、ヨーグルトなどの乳製品は、毎日利用したい食品と言える。

多目的コホート研究「JPHC Study」(国立がん研究センター がん対策研究所 予防関連プロジェクト)
Associations between dairy intake and mortality due to all-cause and cardiovascular disease: the Japan Public Health Center-based prospective study (European Journal of Nutrition 2023年3月21日)
Dairy-rich diet linked to lower risks of diabetes and high blood pressure(BMJ 2020年5月18日)
Association of dairy consumption with metabolic syndrome, hypertension and diabetes in 147 812 individuals from 21 countries(BMJ Open Diabetes Research & Care 2020年5月18日)
Association between Milk Intake and Incident Stroke among Japanese Community Dwellers: The Iwate-KENCO Study(Nutrients 2021年10月25日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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