がんばりすぎない糖尿病ライフ

2026年04月30日

糖尿病は隠すもの? それとも自分らしさの一部?

 以前の記事で、「糖尿病であること、周りに言う?言わない?」について書きました。今回はその続きとして、「見た目」という少し別の角度から考えてみたいと思います。

 糖尿病をもっているかどうかは、周りからは見えにくいものです。だからこそ、どこまで人に伝えるか、どこまで見せていくかは人それぞれ悩むポイントでもあります。

 特に、持続血糖測定器(CGM)やインスリンポンプなどの「見える」医療機器は、血糖マネジメントにとても便利な反面、その見た目が気になってしまうという声はやはり少なくありません。

 実際、服で隠したり、カバーやアームバンドを使ったりしている人も多く、医師から勧められても「見た目の問題があって、なかなか始める気になれない」と話す人もいます。

 そうした中で、最近少しずつ変わってきていると感じる流れがあります。

「あえて見せる」という新しい流れ

 最近は特に欧米を中心に、医療デバイスを「隠すもの」ではなく、自分の一部として自然に見せる流れが出てきています。糖尿病をもち、体に医療機器をつけていることも含めて、自分の個性として発信していく、という考え方です。

 例えば、1型糖尿病をもつイギリスの元首相であるテリーザ・メイ氏は、CGMが見える装いで公の場に出ることも多くあり、その姿がとても話題になりました。こうした姿は、「糖尿病があっても、デバイスとともに普通に生活している」という当たり前のことを自然に伝えてくれます。

 さらに、ファッションの世界でも同じ流れがあります。モデルのライラ・グレース・モス氏は1型糖尿病をもつことを公表しており、2021年のファッションショーでインスリンポンプをあえて見せるスタイルで登場したことが大きな話題となりました。その後も、CGMを隠さずに撮影に臨むなど、「隠さない」という姿勢を発信し続けています。

 アメリカの女優、ブレック・バッシンガー氏も有名です。インスタグラムなどのSNSでCGMをつけた日常を発信しており、「糖尿病があっても普通に生きる」という姿を自然に共有しています。

 さらに、2025年にはマテル社から1型糖尿病をもつバービー人形が発表され、CGMやインスリンポンプを身につけた姿そのものが、子どもたちにとっての「普通の見た目」として表現されるようになってきました。

人気のバービー人形に1型糖尿病のモデルが登場 1型糖尿病への理解と認知を世界に拡大

 日本においては、元プロ野球選手の岩田稔さん、元エアロビック競技日本代表の大村詠一さん、モデルの星南(SENA)さん、華道家の假屋崎省吾さんなど、多くの方が精力的に活動されています。

 こうした発信は、CGMを使用している自分をそのまま受け入れていることの表れとも言えますし、同じように悩んでいる人にとっては、大きな後押しになるのだと思います。

見た目が気になって一歩踏み出せないという人へ

 その気持ちは、とてもよくわかります。体につけるものですし、自分の病気に関わるものですから、どう見られるかを気にするのは自然なことです。

 私自身も、CGMを使用しており、インスリンポンプを使用した経験もありますが、つけ始めた頃はそれなりに意識していました。

 ただ、使い続けているうちに、だんだん気にならなくなってきました。むしろ、糖尿病のことをあえて自分から説明するほどではないけれど、「それ何ですか」と聞かれたことをきっかけに、自然に話せることもあります。あるいは、見た人が自分で調べてくれて、糖尿病への理解につながることもあります。

隠すか見せるかは、自分で選べばよい

 もちろん、CGMを見せるか隠すかに正解はありません。なるべく目立たないように使いたい方もいれば、あえて隠さず自然体でいたい人もいます。これは完全に、その人の価値観や気持ちの問題です。どちらが正しいという話ではなく、自分が一番楽でいられる方法を選べばよいのだと思います。

 CGMを隠したいと思うのも自然ですし、あえて見せていくのもまた自然です。大切なのは、周囲の目に合わせることではなく、自分がどうありたいかです。CGMをつけている自分を、そのまま受け入れられることもあれば、まだ少し距離を置きたい時期もあるでしょう。それで十分ではないでしょうか。

糖尿病は隠すもの? それとも自分らしさの一部?

プロフィール

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田中 慧
たなか さとし
東京女子医科大学糖尿病代謝内科学分野 嘱託医師
糖尿病専門医/医学博士

10歳で糖尿病を発症。2型糖尿病と診断されていたが、28歳時に遺伝学的検査を受験し、遺伝性糖尿病のMODY3と診断された。ペン型インスリン、CGM使用中。インスリンポンプを使用していた時期もあり。患者としての25年以上の経験と、医師としての専門性を生かし、医療者・患者・家族をつなぐ活動を展開中。X(旧Twitter)では「おだQ」というハンドルネームで約15,000人のフォロワーに向けて糖尿病ライフのヒントを発信している

※ヘモグロビンA1c(HbA1c)等の表記は記事の公開時期の値を表示しています。

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