がんばりすぎない糖尿病ライフ
災害への対策を万全に
異常気象や台風、地震などの災害。2011年の東日本大震災以降、「糖尿病をもつ人が災害にどう備えるか」は、とても重要なテーマとして扱われるようになりました。日本では毎年のように災害が発生していますが、「そのうち備えよう」と思っていても、つい後回しになりがちですよね。
災害時は血糖マネジメントが乱れやすい
糖尿病の血糖マネジメントに大切なのは、規則正しい生活、食事、睡眠、運動など、いわゆる「安定した生活」です。でも災害時には、その生活が一気に崩れてしまいます。食事の時間が乱れたり、十分に食べられなかったり、避難生活でストレスや脱水が重なったりと、普段の生活とは大きく異なる状況に置かれます。その結果、血糖マネジメントが悪化し、シックデイや低血糖で体調を崩してしまうことがあります。また、特に災害発生から数日間は、医療機関や薬局へのアクセスが難しくなる可能性もあります。
2024年に糖尿病ネットワークが行ったアンケートでは、7割弱の人が災害時の対策や備えについて「あまりできていない」「まったく対策していない」と回答しています。また、かかりつけ医療機関から災害対策について指導を受けた人は1割未満と、糖尿病をもつ人の災害対策は十分とはいえない状況です。
具体的には何に気を付ければよい?
日本糖尿病協会が提供している資料が非常にわかりやすく、こちらを印刷して必要事項を記載、保管しておくのがおすすめです。特に、「糖尿病連携手帳挟み込み型 防災リーフレット」、インスリン使用中の方は、「インスリンが必要な糖尿病患者さんのための災害時サポートマニュアル」もぜひ確認しておきたいところです。
特に東日本大震災の発生時は、
- ・食べられないとき、シックデイ(体調不良時)の過ごし方
- ・具体的に何を備蓄しておくべきか
- ・何かあったときの具体的な相談先や連絡先を控えておくこと
- ・エコノミークラス症候群の予防
自分以外の人でも分かる工夫を
最後に私自身の工夫をご紹介します。冷蔵庫の一角に「1か月分くらいの内服薬と注射、注射針」をジップロックにまとめて置いています。水没しても何とかなりますし、家にいるときに避難が必要になれば、そのまま防災バッグに突っ込めばOKですし、もし自分が動けなくても、家族に「あそこのものを持ってきて」で伝わります。
災害時は、自分自身も混乱しています。まして、家の中が散らかっていたり、停電していたりすると、「薬がどこにあるかわからない」という事態も普通に起こります。また、自分自身が取りに行けないことも多いでしょう。自分自身で管理されている方も多いと思いますが、だからこそ、万一に備え「自分以外の人でもわかる状態」にしておくことをおすすめします。
また、いつも持ち歩いているスマートフォンに、お薬手帳やインスリンの種類を書いたメモを保管しておくのも有用です。逆に、スマートフォンが使えない状況のことを考えて、財布や定期券入れなどに紙のコピーを持っておくのもよいでしょう。
なお、インスリンポンプを使っている人は、予備の電池の携帯や、ペン型インスリンの在庫保管も忘れずに用意しておく必要がありますね。
プロフィール
田中 慧
たなか さとし
東京女子医科大学糖尿病代謝内科学分野 嘱託医師
糖尿病専門医/医学博士
10歳で糖尿病を発症。2型糖尿病と診断されていたが、28歳時に遺伝学的検査を受験し、遺伝性糖尿病のMODY3と診断された。ペン型インスリン、CGM使用中。インスリンポンプを使用していた時期もあり。患者としての25年以上の経験と、医師としての専門性を生かし、医療者・患者・家族をつなぐ活動を展開中。X(旧Twitter)では「おだQ」というハンドルネームで約15,000人のフォロワーに向けて糖尿病ライフのヒントを発信している
- 2026年05月14日 災害への対策を万全に
- 2026年04月30日 糖尿病は隠すもの? それとも自分らしさの一部?
- 2026年04月16日 夜間低血糖に気をつけて、よりよい運動療法を
- 2026年03月31日 糖尿病と終活について考えてみよう
- 2026年03月12日 今日からできる「血糖当てゲーム」で、もう一段上の自己管理!
- 2026年02月26日 99.99%
- 2026年02月12日 スマートウォッチで見えるのは時間だけじゃない!不整脈の見える化
- 2026年01月29日 糖尿病は遺伝する?遺伝と上手に付き合う具体的な方法
- 2026年01月20日 何のために治療をする?
- 2025年12月24日 糖尿病のせいで眠れない夜、それもまた人生
- 2025年12月11日 コンビニ食で基礎カーボカウント法をはじめてみよう
-
2025年11月27日
「模範的な患者」演じていませんか?
外来での「すみません」はセルフスティグマのサインかも - 2025年11月18日 靴を履くだけでも運動療法!?
-
2025年10月29日
「シックデイ」ハードルを下げて対応の練習をしよう。
あれもこれも、プチシックデイ -
2025年10月15日
糖尿病であること、周りに言う?言わない?
〜「カミングアウト」と「アウティング」の話〜 - 2025年09月30日 低血糖の補食はおいしさよりも成分重視
- 2025年09月17日 糖尿病をもつ人は、人生の何割を糖尿病に費やしている?
※ヘモグロビンA1c(HbA1c)等の表記は記事の公開時期の値を表示しています。
Copyright ©1996-2026 soshinsha. 掲載記事・図表の無断転用を禁じます。
治療や療養についてかかりつけの医師や医療スタッフにご相談ください。

医療・健康情報グループ検索