がんばりすぎない糖尿病ライフ
99.99%
糖尿病は「自己管理が大切な病気です」とよく言われますよね。たしかに病気というと、病院で治療を受けて治すもの、というイメージがありますが、糖尿病の場合、医療者が直接かかわる時間は、実はとてもわずかである事から由来しています。
たとえば月に1回、定期的に通院している場合を考えてみましょう。医師や看護師と話す時間は、せいぜい5分から10分ほどではないでしょうか。人生全体で見れば、糖尿病について医療者と向き合う時間は0.01%程度にすぎません。その短い時間で治療状況を確認し、今後の方向性を調整しますが、残りの99.99%は自分自身で日々の舵取りをしていく必要があります。食事や運動、仕事や家庭生活など、血糖に影響する場面の多くは診察室の外にあります。だからこそ、糖尿病は自己管理が大切な疾患だと言われるのです。

これまでは、その舵取りの判断材料として、病院での採血によるHbA1cや、血糖自己測定(SMBG)が中心でした。これらは重要な指標ではありますが、あくまで「点」や「平均」を見る情報に限られていました。日内変動や一時的な低血糖、高血糖は見えにくく、日常生活との結びつきを実感しにくい面もありました。そこに持続血糖測定器(CGM)が登場したことで、血糖の動きを「線」として連続的に把握できるようになりました。今では、糖尿病をもつ本人が99.99%の時間を自分の裁量でマネジメントできる時代になったと言えます。
たとえばイギリスでは、かつてはCGMの利用資格が厳しく、1型糖尿病の方にほとんど普及していなかった時代がありましたが、制度の見直しによって急速に普及が進み、合併症の発症率が大きく低下したことが報告されています。つまり、診察室の外にある99.99%の時間を整えることで、治療成績そのものが大きく改善することが示されたのです。 血糖値は高すぎても低すぎてもよくありません。これは今や治療の常識です。特にインスリンを使用している方では、昔にガラケーで流行した「糸通しゲーム」のように、わずかな判断の違いが結果を大きく左右します。
自分の未来を、自分の力である程度マネジメントできるようになったという点で、今は本当に良い時代になったと感じます。完璧を目指す必要はなく、少しずつ工夫を重ねていくことが大切です。ちなみに、糖尿病ネットワークも、日々の舵取りのヒントとして、ぜひ活用していただけたらうれしいです(笑)
プロフィール
田中 慧
たなか さとし
東京女子医科大学糖尿病代謝内科学分野 嘱託医師
糖尿病専門医/医学博士
10歳で糖尿病を発症。2型糖尿病と診断されていたが、28歳時に遺伝学的検査を受験し、遺伝性糖尿病のMODY3と診断された。ペン型インスリン、CGM使用中。インスリンポンプを使用していた時期もあり。患者としての25年以上の経験と、医師としての専門性を生かし、医療者・患者・家族をつなぐ活動を展開中。X(旧Twitter)では「おだQ」というハンドルネームで約15,000人のフォロワーに向けて糖尿病ライフのヒントを発信している
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※ヘモグロビンA1c(HbA1c)等の表記は記事の公開時期の値を表示しています。
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