がんばりすぎない糖尿病ライフ
今日からできる「血糖当てゲーム」で、もう一段上の自己管理!
血糖自己測定(SMBG)
みなさまは血糖自己測定(SMBG)をご存じでしょうか。SMBGは、指先に小さな針を刺して、その血液から血糖値を測定する方法のことで、血糖測定器を用いることで自宅でも外出先でも簡単に血糖値を調べることができます。
血糖測定器は、インスリンやGLP-1受容体作動薬などの注射薬を使用していない方や、糖尿病予備群の方でも、調剤薬局で簡単に購入することが可能です。1回あたり150〜200円程度と比較的手軽に測定できる点も特徴です。
SMBGは、早めに低血糖の対処をしたり、結果を主治医に見せて投薬量を調整するのに役立つだけではなく、「ただ測定するだけでも血糖マネジメントの改善につながる」というデータもあり、普段の血糖マネジメントにとても有用なツールといえます。
SMBGのもう一歩進んだ利用法
次に、SMBGのもう一歩進んだ利用法をご紹介します。
その方法とは、測定する前に「今の血糖値はどれくらいだろう?」と予想してから測定することです。一見大したことないように聞こえるこの習慣は、血糖マネジメントの理解を深めるのにとても役立ちます。
なぜ「予想して測る」とよいのか
少し小難しい話ですが、人の脳は「予測して、結果を見て、誤差から学ぶ」という仕組みで学習します。医学的にはこれを「予測誤差(prediction error)」と呼びます。
たとえば、食後に血糖を測るときにこう考えてみます。
「今日はちょっと食べすぎたから、180mg/dLくらいかな」
そして実際に測ってみると、220mg/dLだった。
このとき、「思ったより高かった」というズレが生まれます。このズレこそが、自分の血糖値の反応を理解する大きなヒントになります。
この経験を重ねることで、ただ測定するよりも
- ・どの食事で血糖が上がりやすいのか?
- ・運動がどれくらい血糖に影響するのか?
- ・インスリンや薬がどのくらい効いているのか?
といったことが、だんだん実感としてわかってきます。

実はこの「予想して測る」という方法は、ドイツ発祥の教育プログラム「DAFNE(Dose Adjustment For Normal Eating:炭水化物摂取量に合わせてインスリン注射量を調整するプログラム)」の一部で、その後イギリスで応用され、現在は世界中で広く使われています。実際に、古くから病院での糖尿病教室や、「サマーキャンプ」と呼ばれる糖尿病をもつお子さんの教育プログラムの中で取り入れられてきました。
つまり、血糖測定は「数値を記録する行為」というより、「自分の体を理解するための実験」といえるでしょう。
CGM時代でも大切な感覚
最近では持続血糖測定器(CGM)を使っている方も多いと思いますが、誤差が出ることもあり、完全に機械任せにするのは難しい面もあります。実際に予測してSMBGで測ったときのズレの感覚をつかんでおくと、CGMで大きくずれた値が出ていても「なんか変だな?」とすぐに気づき、対処することができます。
もし次に血糖を測るときには、ぜひ「今の血糖はどれくらいだろう?」と予想しながらやってみてください。その予想と実際の値の差が、あなた自身の体の反応を教えてくれます。
プロフィール
田中 慧
たなか さとし
東京女子医科大学糖尿病代謝内科学分野 嘱託医師
糖尿病専門医/医学博士
10歳で糖尿病を発症。2型糖尿病と診断されていたが、28歳時に遺伝学的検査を受験し、遺伝性糖尿病のMODY3と診断された。ペン型インスリン、CGM使用中。インスリンポンプを使用していた時期もあり。患者としての25年以上の経験と、医師としての専門性を生かし、医療者・患者・家族をつなぐ活動を展開中。X(旧Twitter)では「おだQ」というハンドルネームで約15,000人のフォロワーに向けて糖尿病ライフのヒントを発信している
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※ヘモグロビンA1c(HbA1c)等の表記は記事の公開時期の値を表示しています。
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