がんばりすぎない糖尿病ライフ
コンビニ食で基礎カーボカウント法をはじめてみよう
こんにちは。今日は食事のお話です。
糖尿病をもつ人は、糖質を摂りすぎてもよくありませんが、少なすぎても体が上手く働きません。多すぎてもだめ、少なすぎてもだめ・・・難しいですね。さて、その「ちょうどよいところ」を探るための道具のひとつが、今回お話しする「基礎カーボカウント法」です。
カーボカウントとは?
カーボカウント とは、食事に含まれる「糖質(カーボ)」の量を数える方法です。
「カーボカウント」と聞くと、「難しそう」「前に挑戦したけれど挫折した」という声をよく聞きます。ただしその多くは、最初からいきなり糖質量を細かく調整する「応用カーボカウント法」に挑戦してしまうことが原因です。
応用カーボカウント法は、血糖マネジメントを安定させるうえでとても強力な技術ですが、習得にはそれなりの時間と労力が必要です。そこでおすすめしたいのが、もっとシンプルで、インスリンの有無にかかわらず使える「基礎カーボカウント法」です。
基礎カーボカウント法=「ざっくり一定」にする
基礎カーボカウント法は、1日あたりの糖質量を「ざっくり一定」にすることで、血糖の変化や体重を安定させる方法です。インスリン治療をしていない糖尿病の方も、一歩進んだ食事療法として使えますし、将来的に応用カーボカウント法に進みたい糖尿病の方の土台づくりにもなります。逆に、インスリン量の細かい自己調整をしたい場合には不向きですから、その際は応用カーボカウント法について必ず主治医や医療スタッフと相談しながら行うようにしてください。
まずは「1日の糖質量」を決める
やり方は比較的シンプルです。最初に、ご自身の1日に必要なカロリー・糖質量を決めます。すでに主治医や管理栄養士から指示されている場合は、その数値に従ってください。まだ確認されていない方は、以下の目安を参考にしつつ、主治医に確認してみましょう。
- 身長 150cm → 1日あたり 1300~1500kcal(糖質量の目安 160~190g)
- 身長 160cm → 1日あたり 1400~1700kcal(糖質量の目安 180~220g)
- 身長 170cm → 1日あたり 1600~1900kcal(糖質量の目安 200~240g)
- 身長 180cm → 1日あたり 1800~2200kcal(糖質量の目安 230~280g)
数値には幅があります。普段の生活がデスクワーク中心の方や、体重を少し減らしたい方は「少なめ」に、立ち仕事や体を動かすお仕事が多い方は「多め」に、といった具合に調整します。このように、自分の身長と生活に合った「1日の糖質の量」を決めます。
理想的にはこれを朝・昼・夕にバランスよく分けていきますが、もっとも大事なのは1日の合計糖質量を、日ごとに大きく変えないことです。毎日のばらつきを小さくすることで、血糖のパターンが見えやすくなります。
さて、ここで出てくる一番の壁は、「この食品には糖質が何g入っているのか」を見積もることです。家庭の料理や外食では、なかなか正確に分かりません。そこで頼りになるのが、コンビニエンスストアです。
コンビニは糖質管理の「教室」
コンビニの食品には、栄養成分表示が必ずといっていいほど付いています。炭水化物(または糖質)の欄を見れば、すぐに糖質の量がわかります。コンビニは、カーボカウントの「練習場」「答え合わせの場」としてとても優秀なのです。
ここからは、1日糖質240g前後を目安にしている私の例を紹介します。たとえば昼食なら、次のような組み合わせをよく使います。
- ➀ おにぎり1個(糖質30g前後)+ パスタサラダ(糖質40g前後)+ 何か好きなもの(糖質10g前後)
- ➁ 味噌ラーメン(糖質80g)+ スティック野菜(糖質0g)
- ➂ サンドイッチ(糖質30g)+ 何か好きなもの(糖質40g前後)+ カットパイン (糖質10g)
というような感じです。最初は、主食(ご飯・パン・麺など)の糖質量を一定にすることからはじめるのがおすすめです。おにぎり1個、ロールパン2個など、自分にとっての「基準カーボ」をひとつ決めておくと、足し算が上手になります。
同じような量を毎日食べていると、「このくらい食べると、食後の血糖はだいたいどれくらいまで上がる」「この時間帯は上がりやすい」など、自分の体のくせ(特徴)が少しずつ見えてきます。コンビニで感覚がつかめてきたら、同じ発想を家のごはんやお弁当にも少しずつ広げていくことができます。ただし、コンビニはあくまで「練習用の教材」として活用し、慣れてきたら家庭の食事に応用していくのがおすすめです。
塩分への注意が必要
コンビニ食で気をつけたいポイントがひとつあります。それは塩分です。
たとえば、おにぎり1個でも塩分換算で1.1g前後含まれていることが多く、麺類では1食で6gを超えることもあります。
以下のような方法が効果的かもしれません。
- ➀決まった大きさのおにぎりだけ自宅で握り、たんぱく源や野菜のおかずだけコンビニで買う。
- ➁ドレッシングは全部使わず半分以上残す。
- ➂汁物を1日1回までにして、そのほかはサラダや温野菜を組み合わせる。
特に、高血圧や腎機能の治療中の方は、減塩にも十分配慮する必要があります。
厳密さより再現性、そして継続
基礎カーボカウント法の本質は、「厳密さより再現性」、そして「継続してみること」です。数字を完璧に合わせる必要はありません。最初の目標は、「同じくらいの分量を続けること」です。毎日だいたい同じ糖質量で食べ続け、そのときの血糖値や体調を観察していくことで、少しずつ自分なりのパターンが見えてきます。
その積み重ねが、気づいたときには「なんとなく、自分の血糖の動きが読める」状態につながっていきます。そこまでくれば、応用カーボカウント法に進むにしても、主治医と相談しながら一歩ずつレベルアップしていきやすくなります。
プロフィール
田中 慧
たなか さとし
東京女子医科大学糖尿病代謝内科学分野 嘱託医師
糖尿病専門医/医学博士
10歳で糖尿病を発症。2型糖尿病と診断されていたが、28歳時に遺伝学的検査を受験し、遺伝性糖尿病のMODY3と診断された。ペン型インスリン、CGM使用中。インスリンポンプを使用していた時期もあり。患者としての25年以上の経験と、医師としての専門性を生かし、医療者・患者・家族をつなぐ活動を展開中。X(旧Twitter)では「おだQ」というハンドルネームで約15,000人のフォロワーに向けて糖尿病ライフのヒントを発信している
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