がんばりすぎない糖尿病ライフ
低血糖の補食はおいしさよりも成分重視
低血糖の補食、おいしさ重視でいい?
『低血糖のときは、ブドウ糖10gをすぐに摂取して様子を見ましょう』
というのは、糖尿病治療を受けている方なら一度は耳にしたことがありますよね。
ただ、実際にはブドウ糖を持ち合わせていないこともあるし、正直、ちょっと味気ない。だからこそ『チョコレートとかのお菓子でもいいかな?』と考える方も少なくないのではないでしょうか。
実は、何を食べるかは「どのくらいのスピードで血糖を上げたいか」次第です。
血糖が上がるスピードは、成分によって違う
冷や汗や動悸など、すでに低血糖の症状が出ているときは、ブドウ糖やショ糖など即効性のある単純糖質が必要です。これらは15分程度ですばやく吸収されて血糖を上げてくれます。
ショ糖はいわゆる「お砂糖」ですね。たとえばラムネ菓子やジュース、キャンディーなどが身近なものです。ただし、蜂蜜などに含まれる「果糖」は、吸収がやや遅く低血糖対応には不向きなので注意です。
一方で、チョコレートやクッキーなどはどうでしょうか?これらは糖質に加えて脂質も多く含まれます。脂質があることで、吸収がゆっくりになり、長い時間をかけてゆるやかに血糖を上昇させます。ですから、チョコレートやクッキーなど脂質が多い補食は、低血糖の『治療』には不向きですが、『これから下がりそう』『予防しておきたい』というときには向いています。脂質があることで血糖値の上昇が持続しやすく、安定した効果が期待できるからですね。人によっては、睡眠時の低血糖対策に牛乳を使用する方もいます。つまり、低血糖に対する補食は、目的によって選び方が変わるということなんですね。
低血糖時に食べる量をあらかじめ決めておこう
ちなみに、低血糖時に摂取するブドウ糖は10gが目安です。これは、ラムネ菓子なら10粒ほど、ゼリー飲料やコーラなら100ml、飴玉2個くらい。意外と少ないですよね。でも、この程度で十分です。低血糖のときは不安や焦りもあって、『もうちょっと』と食べすぎてしまい、あとで高血糖になるケースもよくあります。私自身、何度も『やりすぎた...』と反省したことがあります。だからこそ、補食は『何を、どれだけ食べるか』をあらかじめ決めておいて、食べたら15分ほど落ち着いて様子を見る。これがとても大切です。
薬局や病院などで販売しているものは、1袋が丁度5~10グラムに合わせているものが多いので、わからなければ一度買ってみてサイズ感を確認するのもいいですね。
低血糖に対応するとき、『甘ければなんでもいい』わけではありません。目的に合った成分のものを選ぶこと。そして、『自分が安心できる』補食を見つけておくこと。それが、長くうまく付き合っていくためのコツなのだと思います。
みなさんもぜひ、自分に合った『補食スタイル』を見つけてみてくださいね。
プロフィール
田中 慧
たなか さとし
東京女子医科大学糖尿病代謝内科学分野 嘱託医師
糖尿病専門医/医学博士
10歳で糖尿病を発症。2型糖尿病と診断されていたが、28歳時に遺伝学的検査を受験し、遺伝性糖尿病のMODY3と診断された。ペン型インスリン、CGM使用中。インスリンポンプを使用していた時期もあり。患者としての25年以上の経験と、医師としての専門性を生かし、医療者・患者・家族をつなぐ活動を展開中。X(旧Twitter)では「おだQ」というハンドルネームで約15,000人のフォロワーに向けて糖尿病ライフのヒントを発信している
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