ネットワークアンケート

糖尿病患者の災害対策

患者さん・ご家族に聞きました

災害時の対策や備えを行っていない人が67.5%。90.4%が指導を受けていない!

 最初に、現在災害時のための対策や備えを行っているかを調査しました。その結果「しっかり対策している」「そこそこ対策している」が合わせて35.5%、「あまりできていない」が48.3%、「まったく対策していない」が19.2%という結果でした。
では、「かかりつけ医療機関より災害時の対策や備えについて指導を受けているか」を聞いたところ、指導を受けていないとの回答が9割という結果でした。

Q1. 災害時の対策や備えを行っていますか?n=323

19.2%
48.3%
31.3%
1.2%
  • しっかり対策している
  • そこそこ対策している
  • あまりできていない
  • 対策していない

Q2. かかりつけの医療機関から、災害時の対策や備えについて指導を受けていますか? n=323

90.4%
9.6%
  • 指導を受けている
  • 特に指導は受けていない

具体的に行っている対策は「処方薬の備蓄」「低血糖対策」「糖尿病連携手帳などの保持」

 具体的にどのような災害時の対策や備えを行っているのかを調査したところ、「処方薬の備蓄」「低血糖対策の補食や糖の備蓄」「糖尿病連携手帳などの保持」が上位という結果でした。
 では、災害時の対策や備えとして、トップであった薬剤の予備は「何日分用意しているか」では、7日以上が48.3%でしたが、備蓄していない人も3割弱いました。そこで、処方薬の名前を記憶しているか、すなわち、お薬手帳等がなくても伝えることができるかと聞いたところ、3割超が記憶していないとの回答でした。

Q3. どのような対策や備えを行っていますか?(複数回答)n=323

処方薬(インスリン含む)を備蓄している
41.2%
低血糖対策のための補食や糖質を備蓄している
35.6%
糖尿病連携手帳やお薬手帳を持ち歩くようにしている
32.2%
特に対策はしていない
28.5%
スマートフォン等(お薬手帳アプリなど)に薬剤名を記録している
27.2%
避難用に血糖自己測定器や消耗品(測定用センサーなど)を準備している
16.1%
避難用に自己注射セットを準備している
14.2%
栄養バランスの良い保存食を備蓄している
9.3%
災害対策について指導を受けたり、調べたりしたことがある
5.9%
糖尿病療養に役立つ非常用持ち出し袋を準備している
3.7%
その他(マーナンバーカード携帯など)
2.2%

Q4.薬剤の予備は何日分用意していますか?n=323

7日分(1週間)以上
44.0%
用意していない
26.9%
7日分(1週間)未満
20.4%
3日分
8.7%

Q5.処方薬(インスリン含む)の名前を記憶していますか(お薬手帳等がなくても伝えることができますか)?

64.7%
35.3%
  • 記憶している
  • 記憶していない

災害経験のある人が困ったことは「栄養バランスの良い食事」「血糖コントロール」「運動」

 災害遭遇の経験を聞いた結果、40名が経験者でした。その方々に、災害時にもっとも困ったことを聞いたところ「特にない」を除いて、上位は「栄養バランスの良い食事が確保できなかった」「血糖コントロールが難しかった」「運動ができなかった」「血糖値が上がった」という順で、糖尿病の治療の基本である「血糖値のコントロール」に関わるものが上位という結果でした。

Q6.災害時、もっとも困ったことは何ですか?(最大3つまで選択)n=40

特にない
27.5%
栄養バランスの良い食事が確保できなかった
25.0%
血糖コントロールが難しかった
22.5%
運動ができなかった
17.5%
血糖値が上がった
15.0%
電源が確保できなかった
15.0%
血糖自己測定が十分にできなかった
12.5%
衛生の確保(トイレ含む)が難しかった
10.0%
集団生活でのストレス(スペースやプライバシー)
10.0%
薬が足りなくなった
7.5%
インスリンが足りなくなった
7.5%
かかりつけの医療機関に受診できなかった
7.5%
その他
15.0%

災害未経験の人の不安は「薬やインスリンの不足」「衛生面の確保」「血糖コントロール」

 今回のアンケートでは、災害遭遇の経験のない方ほとんどで282名に上りました。その方々に、災害に対する不安を尋ねたところ、「薬やインスリンの不足」「衛生面の確保」「血糖コントロール」が上位という結果でした。その他の自由回答では、「アルコール(綿)の不足」「インスリンが適温に保てない(タンパク質凝固・凍結)」「インスリンや血糖測定のチップを持ち出せてもこの酷暑では保存が難しいのをどうすればよいか」「薬、リブレなどの器具の保管方法が異なり(インスリンは冷蔵庫、器具は常温保管)一か所にまとまり切れず、とっさに持ち出しができるかどうか不安」などが挙げられました。

Q7. 災害に対して、どのようなことが不安ですか?(複数回答)n=282

薬やインスリンの不足
62.9%
衛生面(トイレ含む)の確保
56.5%
血糖コントロール
54.4%
電源の確保
48.1%
栄養バランスの良い食事が確保できるか
46.6%
集団生活でのストレス(スペースやプライバシー)
46.3%
治療の継続
44.5%
インスリン注射機器や血糖自己測定機器、備品などの不足
43.8%
適切な医療サービスが受けられるかどうか
43.8%
低血糖など緊急時の対処
35.7%
特にない
3.2%
その他
2.5%
まとめ

  今回のアンケートでは、医療者と患者さんの設問のいくつかは比較できるように設計しました。「かかりつけの医療機関から、災害時の対策や備えについて指導を受けていますか?」に対して、医療者には「糖尿病患者さんへ、災害時の指導を行っていますか?」と質問しました。その結果(n=126)は、「かならず/できるかぎり指導している」53.1%、「患者から希望があれば実施している」19.0%、「指導できていない」27.8%という結果でした。
 今回のアンケートでは、「かかりつけ医療機関から指導を受けていない」患者さんが90.4%に上りましたが、災害の対策や備えに不安のある方は、かかりつけ医療機関にご相談されてみてはいかがでしょうか。また、アンケートの自由回答では、実際に災害を経験された方の体験が寄せられていますので、「患者さんの本音」コーナーにもぜひお立ち寄りください。

<調査概要>
実施時期:2024年 8月8日~16日
調査方法:インターネット調査
対  象:「糖尿病ネットワーク」メールマガジン会員
協  力:株式会社三和化学研究所
<回答者の属性>
患者さんやその家族 323名(1型糖尿病120名、2型糖尿病194名、その他の糖尿病3名、わからない5名)。回答者の居住地は、北海道(16名)、東北(36名)、北関東(14名)、南関東(132名)、東海(29名)、北陸(3名)、近畿(52名)、中国(13名)、四国(5名)、九州・沖縄(23名)

※ヘモグロビンA1c(HbA1c)等の表記は記事の公開時期の値を表示しています。

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治療や療養についてかかりつけの医師や医療スタッフにご相談ください。

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