ネットワークアンケート
糖尿病患者の災害対策
医師・医療スタッフに聞きました
能登半島地震や南海トラフ地震臨時情報などを受け、災害対策の必要性が今改めてクローズアップされています。糖尿病の患者さんの治療を中断させないために、日ごろからの指導と、災害時には医療者の支援が必要です。糖尿病の患者さんと医療者に、災害への備えについての実態に関するアンケートを実施しました。
災害時の指導を必ず行っているのは7.2%。指導できない理由は、指導時間が取れない!
最初に、災害時の指導の実際を調査しました。その結果、「必ず行っている」のは7.2%。「できるだけ指導するようにしている」「希望があれば指導している」は合わせて64.8%、「指導していない」が28.8%と、必ずしもは指導はしていないという回答が9割を超えていました。その理由で最も多いのが、「指導する時間が取れない」58.6%というものでした。
なお、「誰が災害対策や備えの指導を行っているか」については60.8%が医療スタッフという回答でした。
Q1. 糖尿病患者さんへ、災害時の指導を行っていますか?n=126
- 必ず指導している
- できるだけ指導するようにしている
- 患者からの希望があれば指導している
- 指導できていない
Q2. Q1で「必ず指導している」以外を選択した方。指導が必ずしもできていない理由を教えてください。(複数回答)n=117
Q3.災害時の指導は、主に誰が担当されていますか?n=126
- 医療スタッフ
- 指導していない
- 医師
- その他
具体的な指導は「糖尿病連携手帳等の携帯」「処方薬の備蓄」「自己注射セットの備蓄」
具体的にどのような指導を行っているのかについては、「糖尿病連携手帳、お薬手帳の携帯や管理」「処方薬の備蓄」「自己注射セットの備蓄」などで、とくにインスリン注射に関する指導が上位という結果でした。
そこで、特にどのような患者さんに指導が必要かと聞いたところ、「インスリン療法で治療中の患者」「高齢の患者」「血糖コントロールが悪い患者」という結果でした。
Q4. どのような指導を行っていますか?(複数回答可)n=126
Q5. どのような糖尿病患者さんに、特に指導が必要だと思いますか?(複数回答可)n=126
災害に遭遇した際に困ったことは「検査機器等が使えなかった」「食事や衛生面の確保」
災害を経験した施設(n=24)に、災害時にもっとも困ったことを聞いたところ、「検査機器等が停電や故障などで使えなかった」「栄養バランスの良い食事の確保」「衛生の確保」という結果でした。
なお、今回の回答者のうち、20名は災害派遣に赴かれた経験があるという回答でした。自由回答では、「能登半島地震における避難所は冷蔵庫が初めなかったため、処方量を調節する疑義照会を行い、 注射保管についてどのような設備が整っているかを確認が必要だと感じた」といった貴重なご意見もお寄せいただきました。
Q6. 貴院が被災された際に、もっとも困ったことは何ですか?
(最大3つまで選択)n=24
災害未経験の施設の不安は「治療薬の不足」「血糖コントロール」「治療履歴の把握への不安」
災害に遭遇経験のない施設(n=102)に、災害に対する不安を聞いたところ、「薬剤やインスリンの不足」「患者さんの血糖コントロールの維持」「患者さんの治療履歴がわからなくなること」といった回答が上位にという結果でした。
Q7. 災害に関して、どのようなことが不安ですか?(複数回答)
n=102
能登半島地震から始まった2024年は「糖尿病医療者のための災害時糖尿病診療マニュアル」も10年ぶりに改訂され、また糖尿病医療支援チーム(DiaMAT)の活動も教育体制を含め、全国的な体制が整いつつあるようです。ただし災害対策は平時の患者指導が何よりも大切です。しかし、現実的には「時間的な余裕がない」「スタッフの不足」など、患者への災害対策や備えの指導はまだ十分ではないことがうかがわれるアンケート結果となりました。
実施時期:2024年 8月8日~16日
調査方法:インターネット調査
対 象:「糖尿病リソースガイド」メールマガジン会員
協 力:株式会社三和化学研究所
<回答者の属性>
医師・医療スタッフ 126名
職 種:126名(医師16名、看護師52名、薬剤師28名、管理栄養士・栄養士18名、 その他12名)
※ヘモグロビンA1c(HbA1c)等の表記は記事の公開時期の値を表示しています。
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