がんばりすぎない糖尿病ライフ

2026年07月29日

糖尿病をもつ男性へ伝えたい!夜の不調は、細い血管からのSOS?

少し相談しにくい話をしましょう。

「最近、以前ほど勃起しなくなった」
「性行為の途中で元気がなくなってしまう」
「年齢のせいだと思って、特に相談していない」

糖尿病をもつ男性では、このような悩みを抱えている方は少なくありません。今回、私がこの話を記事にしたのは、糖尿病の治療にとても大事なことであるにもかかわらず、内科の診察室で自分から話してくれることはほとんどないからです。

でも実は、勃起障害は、全身の血管の健康を知る大切なバロメーターになることがあります。

勃起に必要なのは「気合い」ではなく「血流」です

そもそも、勃起はどのように起こるのでしょうか。

性的な刺激が神経を通して伝わると、陰部の血管が広がり、スポンジのような海綿体に血液が流れ込みます。つまり、勃起には①神経からの合図と、②十分な血流 の両方が必要です。

ところが糖尿病があると、神経も血管も傷つくことがあります。そのため、糖尿病をもつ男性では、糖尿病をもたない人よりも「ED」(いわゆる勃起障害)が起こりやすくなります。

これまでの研究では、糖尿病をもつ男性の半数以上にEDがみられ、糖尿病のない男性と比べて約3.5倍多いと報告されています。

陰茎の動脈は、心臓の血管よりも細い!

では、なぜEDが血管のバロメーターになるのでしょうか。

陰茎に血液を送る動脈は、心臓に血液を送る冠動脈などと比べて細い血管です。そのため、比較的早い段階で血流の悪化が症状としてあらわれやすいと考えられています。

実際に、EDは、心筋梗塞や狭心症が発症する2~5年前にあらわれることがあると報告されています。

もちろん、EDがあるからといって、すぐに心臓の血管が詰まっているという意味ではありません。精神的な要因、飲酒、男性ホルモンの低下、服用している薬など、EDの原因はさまざまです。

ただ、「年齢のせいだろう」とすべて片づけてしまうのは、少し危ないのです。

気になったら、血糖値以外も見直してみる

さて、EDかな?と気になる人は、血糖値やHbA1cだけでなく、血圧、コレステロール、体重、喫煙習慣なども一度確認してみましょう。

実際に私が診察している人で、EDをきっかけに詳しく検査をしてみたら、動脈硬化や血管の病気が見つかった、ということも多くあります。反対に、今は大丈夫でも、血糖や血圧、コレステロールを整えたり、運動や禁煙に取り組んだりすることは、将来の心筋梗塞や脳梗塞を防ぐだけでなく、勃起機能を守ることにもつながります。

気になる方は、「SHIM」という簡単な質問票を使って、自分の状態を確認する方法もあります。勃起の硬さや維持しやすさなど、5つの質問に答えるセルフチェックです。

SHIM(勃起機能の男性性機能問診票)

この6ヶ月に、

Q1:勃起してそれを維持する自信はどの程度ありましたか
   非常に低い(1点)
   低い(2点)
   中くらい(3点)
   高い(4点)
   非常に高い(5点)

Q2:性的刺激によって勃起した時、 どれくらいの頻度で挿入可能な硬さになりましたか
   性的刺激はなかった(0点)
   ほとんど、 又は全くならなかった(1点)
   たまになった (半分よりかなり低い頻度) (2点)
   時々なった (ほぼ半分の頻度) (3点)
   しばしばなった (半分よりかなり高い頻度) (4点)
   ほぼいつも、 又はいつもなった(5点)

Q3:性交の際、 挿入後にどれくらいの頻度で勃起を維持できましたか
   性交を試みなかった(0点)
   ほとんど、 又は全く維持できなかった(1点)
   たまに維持できた (半分よりかなり低い頻度) (2点)
   時々維持できた (ほぼ半分の頻度) (3点)
   しばしば維持できた (半分よりかなり高い頻度) (4点)
   ほぼいつも、 又はいつも維持できた(5点)

Q4:性交の際、 性交を終了するまで勃起を維持するのはどれくらい困難でしたか
   性交を試みなかった(0点)
   極めて困難だった(1点)
   とても困難だった(2点)
   困難だった(3点)
   やや困難だった(4点)
   困難でなかった(5点)

Q5:性交を試みた時、 どれくらいの頻度で性交に満足できましたか
   性交を試みなかった(0点)
   ほとんど、 又は全く満足できなかった(1点)
   たまに満足できた (半分よりかなり低い頻度) (2点)
   時々満足できた (ほぼ半分の頻度) (3点)
   しばしば満足できた (半分よりかなり高い頻度) (4点)
   ほぼいつも、 又はいつも満足できた(5点)

5つの質問の合計スコアが21点以下の場合はEDが強く疑われる

EDは治療できる症状です

また、EDは、我慢するしかない症状ではありません。生活習慣や糖尿病治療を見直すことで改善する場合もありますし、治療薬もあります。

ただし、血管の病気の前兆である可能性もありますので、インターネットなどで自己判断で購入せず、まずは主治医に相談してみましょう。「先生、最近ちょっと勃起のことで気になることがあります」。といった感じで、診察室では、それくらいの伝え方で十分です。

糖尿病をもつ人にとって、EDは恥ずかしい話でも、医療者にとっては笑うような話でもありません。血糖値や足のしびれと同じように、糖尿病や血管の状態を知るための大切な情報です。

夜の元気は、ときに全身の血管から届いた小さなメッセージです。笑ってごまかさず、ときどき耳を傾けてみてもよいのではないでしょうか?

プロフィール

田中慧プロフィール画像

田中 慧
たなか さとし
東京女子医科大学糖尿病代謝内科学分野 嘱託医師
糖尿病専門医/医学博士

10歳で糖尿病を発症。2型糖尿病と診断されていたが、28歳時に遺伝学的検査を受検し、遺伝性糖尿病のMODY3と診断された。ペン型インスリン、CGM使用中。インスリンポンプを使用していた時期もあり。患者としての25年以上の経験と、医師としての専門性を生かし、医療者・患者・家族をつなぐ活動を展開中。X(旧Twitter)では「おだQ」というハンドルネームで約15,000人のフォロワーに向けて糖尿病ライフのヒントを発信している

記事の内容(HbA1c表記や医師の所属など)は掲載日時点のものです。 本サイトに掲載されている記事・写真・図表の無断転載を禁じます。 治療や療養についてはかかりつけの医師や医療スタッフにご相談ください。

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