がんばりすぎない糖尿病ライフ

2026年08月27日

糖尿病でも果物は食べたほうがいい(でも適量を)

果物を食べすぎて血糖マネジメントが悪化した、そんな経験はありませんか。「今度から果物は食べないようにしましょうね」と言ってしまう医療スタッフも見かけますが、それは今回の考えとは少し違います。実は「糖尿病でも果物はある程度食べたほうがよい」こと、ご存じでしたか。

果物にはブドウ糖や果糖が含まれているため、食後に血糖値スパイクを起こすことがあります。一方でビタミンやミネラル、食物繊維の補給源にもなり、長期的な健康にプラスになるとされています。そのため、糖尿病の人でも、一定量であればむしろ摂取が推奨されています。「血糖が上がるから禁止」ではなく、「量を決めて楽しむ」が今の考え方なのです。

糖尿病でも果物は食べたほうがいい(でも適量を)

どのくらいが「適量」?

1日の具体的な摂取の目安としては80kcal(「食品交換表」の1単位)です。数字で言われてもピンとこないと思いますが、おおむね手のひら1杯(だいたい100〜200g程度)といったところでしょうか。
みかんなら2個、バナナなら1本、りんごなら半分、柿なら1個、いちごなら10粒程度です。

具体的な摂取量の目安はこちらもご参照ください。

「果物」は糖質が多い 糖尿病の人はどう食べたら良い? 「ドライフルーツ」なら大丈夫?

なお、ここで紹介した「食品交換表」(現行は第7版)は、見た目でだいたいのカロリー量を推定したり、栄養バランスを調整したりするためにとても役立ちます。食事療法の考え方の基礎になるものですので、管理栄養士による栄養指導では必ず使います。興味がある人は、ぜひ確認してみてくださいね。

果物の種類によって違いがある?

さて、具体的にはどんな果物を食べたらよいのでしょうか?これに関してはいろいろな研究がありますが、特にこれがよいといったものがわかっているわけではありません。

たとえばアメリカでの研究では、ブルーベリーやぶどう・レーズン、りんご・洋なしなどを多く摂取するグループでは、2型糖尿病の発症リスクがやや低い傾向がみられました。

日本国内のデータもあります。静岡県で行われた「三ヶ日町研究」では、みかんに多く含まれるβ-クリプトキサンチンの血中濃度が高いグループ、つまりみかんを多く摂取していると考えられるグループは、約10年間の追跡調査で、2型糖尿病の発症リスクが約57%低いという結果が報告されています。みかんが「1日の目安」の代表格として挙がっているのは、このような背景もあるでしょう。

とはいえ、個人差や他の環境による影響も大きいと考えられており、「これが糖尿病によい」という決定的な果物はありません。裏を返せば、好きなものを選んでよい、ということでもあります。季節を楽しみながら果物を選んでいく、というのがよいのではないでしょうか。

私自身が気をつけていること

偉そうに書いている私自身はどうかというと、実は果物が大好きで、放っておくといくらでも食べてしまうタイプです。そこで決めているルールが2つあります。

1つは、小分けにして食べること。一度食べると「もう1つくらい」が止まらないので、洗って切って、1回分ずつ小さな容器に入れてしまいます。台所にあるはかりで100g分を量ってみるのもよいでしょう。自分の「手のひら1杯」の感覚がつかめてきます。

もう1つは、食べる時間を夜ではなく朝か昼にすること。夜のデザートにすると、そのあと動かないぶん血糖が下がりにくい印象があります。私は朝のヨーグルトに、その季節のベリーを乗せるのが定番です。

そして、季節の移り変わりを果物で感じるようにしています。春はいちご、初夏はさくらんぼ、夏は桃やすいか、秋はぶどうや梨、そして冬はやっぱりみかん。「今しか食べられないもの」だと思うと、「量は気にしつつも味わいたい!」という気持ちになるから不思議です。

糖尿病と果物に関する最新の動向は?

糖尿病と果物に関係する研究は多く行われていますが、まだわかっていないことが多いです。たとえば2024年に公表された「糖尿病診療ガイドライン2024」(日本糖尿病学会)では、果物摂取について新しく1項目が追加されました。ポイントは次の通りです。

「果物は糖質だけでなく食物繊維を含有し、glycemic index(GI)が低いことから、血糖コントロールに影響を与えない可能性があるが、現時点で血糖コントロールに対する果物の影響は十分に確認されていない」

つまり「果物は血糖に悪い」と単純に断定できるほどのエビデンスもなければ、「果物はどんどん食べてよい」と断定できるエビデンスもない、というのが2024年時点の公式な立場です。この記事で紹介している「適量を守って食べる」という方針は、この慎重な立場とも矛盾しません。

だからこそ、ぜひ季節の果物を楽しんでください

果物は、我慢するものではなく、量を決めて楽しむものです。手のひら1杯という目安さえ持っておけば、いちごも、みかんも、桃も、あきらめる必要はありません。むしろ「今年もこの季節が来たな」と味わえることは、長く食事療法を続けていくうえで、案外大きな支えになります。

また、腎臓病などでカリウムの摂取制限がある場合は、ここでご紹介した摂取量の目安は当てはまりません。主治医や管理栄養士に相談してみてくださいね。

1つだけ補足:ジュースは果物の代わりになりません

最後に1つだけ。果物ジュースは、残念ながら果物の代わりにはなりません。ジュースは食物繊維がほとんど取り除かれているため、同じ量の糖質でも吸収が速く、血糖値を急上昇させやすいのです。オレンジジュースやりんごジュースは「果物」ではなく「普通のジュース」と考えて、1日の目安とは別枠にしておきましょう。

プロフィール

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田中 慧
たなか さとし
東京女子医科大学糖尿病代謝内科学分野 嘱託医師
糖尿病専門医/医学博士

10歳で糖尿病を発症。2型糖尿病と診断されていたが、28歳時に遺伝学的検査を受検し、遺伝性糖尿病のMODY3と診断された。ペン型インスリン、CGM使用中。インスリンポンプを使用していた時期もあり。患者としての25年以上の経験と、医師としての専門性を生かし、医療者・患者・家族をつなぐ活動を展開中。X(旧Twitter)では「おだQ」というハンドルネームで約15,000人のフォロワーに向けて糖尿病ライフのヒントを発信している

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