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2023年09月07日

「果物」は糖質が多い 糖尿病の人はどう食べたら良い? 「ドライフルーツ」なら大丈夫?

 秋はおいしい果物が旬を迎える季節。しかし果物は、糖分が多く含まれるものがあるので、「糖尿病の人は食べすぎに注意した方が良い」と言われることが多い。

 しかし、果物にはビタミンやミネラル、食物繊維、カロテノイド、ポリフェノールといった、体に良い栄養も多く含まれる。糖尿病の人のための「果物の上手な食べ方」も紹介されている。

 果物を食べるときは、なるべく皮や芯まで含めて果物全体を食べると、糖尿病リスクを減らせるという研究が発表されている。

 果物を乾燥させた「ドライフルーツ」を食べている人は、食事のバランスが良好で、食事が健康的という調査結果も発表された。

果物には健康機能性がある

 果物は、糖分が多く含まれるものがあるので、「糖尿病の人は食べすぎに注意した方が良い」と言われることが多い。

 たしかに、バナナ・ブドウ・リンゴ・桃・柿・栗・温州ミカンなどには、糖質が多く含まれるものがある。

 一方で、果物にはビタミンやミネラル、食物繊維なども多く含まれる。

 カロテノイドは、果物や野菜の色素成分で、代表的なものとしてβ-カロテンやリコピンなどがある。体内で増えた活性酸素を除去する抗酸化作用があり、動脈硬化を予防したり、老化やがんの発生に対しても効果があるとみられている。

 果物には、アントシアニンなどのポリフェノールも含まれ、やはり体を酸化から守る抗酸化作用がある。

 秋が旬のブドウ、温州ミカン、梨、リンゴ、桃、柿、栗、キウイフルーツなどの果物にも、カロテノイドやポリフェノールは豊富に含まれる。

皮や芯まで含めて果物全体を食べると糖尿病リスクが低下

 果物を食べるときは、なるべく皮や芯まで含めて果物全体を食べると、2型糖尿病のリスクを減らせるという研究が発表されている。果物の皮などにも、ビタミンやミネラル、食物繊維が多く含まれる。

 米国内分泌学会によると、皮や芯まで含めて果物全体を食べている人は、半分未満しか食べていない人に比べて、2型糖尿病の発症リスクが36%低い。

 血糖値を下げるホルモンであるインスリンが効きにくくなるインスリン抵抗性があると、膵臓はインスリンを多く分泌して血糖の上昇を抑えようとする。インスリンが過剰に分泌されているのが「高インスリン血症」だ。

 「果物を適度に食べている人は、体のインスリンに対する感受性が良い傾向がみられました。インスリンが過剰に分泌されると、血管の損傷につながりやすく、糖尿病だけでなく高血圧や肥満、心臓病にも関連しています」と、オーストラリアのエディスコーワン大学栄養研究所のニコラ ボンドンノ氏は言う。

 研究は、「オーストラリア糖尿病・肥満・生活スタイル調査」に参加した7,675人のデータを解析したもの。

フルーツジュースを飲んでいる人は糖尿病リスクが上昇

 米ハーバード公衆衛生大学院による別の研究でも、ブルーベリーやブドウ、リンゴなどの果物を皮ごと食べている人は、2型糖尿病のリスクが23%低いことが示された。

 ベリーやブドウなどに含まれる天然色素であるアントシアニンなどが、糖尿病リスクの低下と関係している可能性が考えられるという。

 ただし、フルーツジュースを毎日飲んでいる人は、2型糖尿病のリスクが逆に21%高くなった。

 「フルーツジュースは、植物繊維などをとれず、ビタミンなども低下しているものがあり、糖尿病リスクの低下の効果はみられませんでした。100%果汁のジュースであっても飲みすぎは勧められません」と、同大学院栄養学部のチー スン氏は言う。

 研究グループは、1984年~2008年に実施された3件の大規模研究に参加した18万7,382人のデータを解析した。

ドライフルーツを食べている人は食事バランスが良好

 それでは、果物を乾燥させ、保存性をもたせた「ドライフルーツ」はどうだろう?

 米ペンシルベニア州立大学が発表した研究では、ブドウ・リンゴ・イチジク・アプリコットなどのドライフルーツを食べている人は、食事のバランスが良好で、より健康的な食事スタイルをもっていることが示された。

 ドライフルーツを食べるのを習慣としている人は、体格指数(BMI)やウエスト周囲径、収縮期(最高)血圧も低い傾向がみられた。

 「ドライフルーツは栄養価が高いので、間食として利用しやすい食品と言えます。持ち運びが容易で、棚などに保存でき、価格も安定していて、果物を食べやすくしてある点も魅力があります」と、同大学栄養科学部のクリスティーナ ピーターセ氏は言う。

 「ただし、糖類を加えてないものを選ぶ必要があります。ドライフルーツは果物の水分の大部分を取り除いたものなので、糖分がさらに濃縮されています。そのまま食べても甘いので、糖類を加える必要はありません」。

 「とくに血糖値が上がりやすい人は、糖類が加えられたドライフルーツや缶詰の果物には注意が必要です」としている。

 研究グループは、米国国民健康栄養調査に参加した2万5,590人の男女のデータを解析した。参加者は、ドライフルーツを含む、過去24時間に摂取したすべての食品のデータを提供し、健康状態も調べられた。

果物の効果的な食べ方
糖質の少ない果物を選ぶ 1日100gを目安に食べる

 果物は、糖質が多く含まれるものもあるため、とくに糖質を制限していると、食べるのを控えているという人は少なくない。

 確かに、100gあたりの単糖量は、たとえば温州ミカンは8.9g、キウイフルーツは9.6g、リンゴは12.4g、柿は13.3g、桃は16.6g、バナナは19.4gがそれぞれ含まれる。決して少ない量ではない。

 ただし、糖質が比較的少ない果物もある。果物の食べすぎに注意したり、糖質の少ない果物を選んで食べる方法もある。

 たとえば、100gあたりの単糖量は、イチゴは6.1g、ブルーベリーは8.6g、ラズベリーは5.6g、オレンジは8.3g、グレープフルーツは7.5g、ナシは8.3g、アンズは4.8gとなっている。

 海外の研究では、果物を1日100g以内食べていると、血糖、中性脂肪の値が改善し、体重も増加しないという報告がある。

 もちろん、果物をどれだけ食べると良いかについては個人差があるが、▼1日に100gを目安にして食べる、▼糖質が多い甘い果物の食べすぎは避けるなど、工夫をしながら食べれば、果物による健康効果を期待できそうだ。

Fruit (米国糖尿病学会)
People who eat a healthy diet including whole fruits may be less likely to develop diabetes (米国内分泌学会 2021年6月2日)
Associations Between Fruit Intake and Risk of Diabetes in the AusDiab Cohort (Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism 2021年6月2日)
Eating whole fruits linked to lower risk of type 2 diabetes (ハーバード公衆衛生大学院 2013年8月29日)
Fruit consumption and risk of type 2 diabetes: results from three prospective longitudinal cohort studies (BMJ 2013年8月29日)
Eating dried fruit may be linked with better diet quality and health markers (ペンシルベニア州立大学 2020年11月30日)
Consumption of Dried Fruits Is Associated with Greater Intakes of Underconsumed Nutrients, Higher Total Energy Intakes, and Better Diet Quality in US Adults: A Cross-Sectional Analysis of the National Health and Nutrition Examination Survey, 2007-2016 (Journal of the Academy of Nutrition and Dietetics 2020年10月28日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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