がんばりすぎない糖尿病ライフ

2026年08月20日

痛くない血糖測定の方法はある?〜血糖測定器は年々進化している〜

部屋の掃除をしていたら、学生時代に使っていた血糖測定器と穿刺針が出てきました。今の穿刺針と比べると太くてびっくりしてしまいました。

血糖自己測定(SMBG:Self-Monitoring of Blood Glucose)は、自分で指先に針を刺して血液を機械で測定し、その場で血糖値を知ることができる機器です。インスリンやGLP-1受容体作動薬の注射薬を使っている人は、保険が適用されます。インスリンを使っていない人でも、定期的に測定するだけで血糖マネジメントが改善するという報告があり、糖尿病治療には欠かせない存在です。

ただ、指先に針を刺す必要があるので、当然痛みがあります。特にインスリンを使っている人は1日に何度も測定する必要があり、苦痛に感じる人も少なくありません。筆者自身も経験がありますが、治療そのものがイヤになってしまう、いわゆる燃え尽き症候群につながり、逆に血糖マネジメントの悪化を招くという報告もあります。

そこで今回は、なるべく痛みを伴わずに血糖を測定する方法をご紹介します。

痛くない血糖測定の方法その① 穿刺針(ランセット)を変える

一番簡単で、しかも効果が大きい方法です。昔からの血糖測定器をずっと使っている人は試す価値があります。

実は、血糖測定に使う穿刺針は、それぞれ太さが違います。「ゲージ」という単位が使われますが、この数字が大きいほど針は細くなります。
長く主流だったのは30ゲージのタイプでしたが、その後さらに細い33ゲージのランセットも登場しており、どんどん細くなっています。とはいえ仕入れの都合上、総合病院などでは今もひと世代前の機種が使われていることが多いのが実情です。

この穿刺針、実は大手ショッピングサイトなどで自費購入して、自分の好きなモデルを使うことができます。実際、穿刺針だけ自前で購入している患者さんもいます。相場は30回分で1,000円程度です。穿刺針を購入する際は、自分が使っている器具に対応しているかを確認してください。
もちろん主治医に新しいタイプへの変更を相談してもかまいません。古いタイプの穿刺針を使っている人は、一度新しいものを試してみてもよいかもしれませんね。

痛くない血糖測定の方法はある?〜血糖測定器は年々進化している〜

写真:筆者私物撮影。左から28ゲージ(0.36mm、発売時期不明、2000年より前?)、30ゲージ(0.31mm、2005年発売)、33ゲージ(0.20mm、2020年発売)。

写真ではわかりづらいですが、実際に刺してみると痛みの差は歴然です。また昔は針がむき出しでしたが、現在はなるべく針が見えないような設計になっています。

痛くない血糖測定の方法その② 刺す深さを意識する

穿刺の深さを毎回同じように設定しているのに、うまく採血できるときとできないときがありませんか?もしかすると、ボタンを押す際にためらってしまい、無意識に穿刺器具が指から離れてしまっている可能性があります。
一度、穿刺する深さを浅めに設定し、代わりに指をグッと強く押し当てて穿刺してみましょう。
皮膚に強く押し当てると深く刺さってかえって痛くなるのでは、と思われがちですが、実際には逆のことが多いです。もちろん指によって深さを変えてみるのもよいと思います。

痛くない血糖測定の方法その③ 消毒液を完全に乾かしてから穿刺する

意外と知られていませんが、消毒液が完全に乾かないまま穿刺すると、その刺激で強い痛みが起こることがあります。消毒したら手をブンブンと振るなどして、完全に乾いてから測定するとよいでしょう。乾かないうちに採血すると、消毒液が血液に混ざって測定値が正しく出ないこともあります。

痛くない血糖測定の方法その④ 指先ではない部分を穿刺する(代替部位測定)

病院での血糖測定指導では指先を刺すよう言われることが多いですが、指先は神経が集中していて痛みを感じやすい部位です。そのため、人によっては手のひらや前腕、耳たぶなど指先以外の部分を刺すことがあります。これを代替部位測定(AST:Alternate Site Testing)と呼びます。指先に比べて感覚が鈍い部分を刺すことで痛みを軽減する方法で、指先を使う仕事をされている人に勧めることもあります。ただし、指先に比べ誤差が生じる可能性があり、基本的にメーカー非推奨の方法となります。試してみたいときは、主治医や医療スタッフと相談しながら、指先と比較してどれくらいの誤差があるか確認してから試してみましょう。

ただ注意点としては、食後や運動の前後など、血糖値が急激に変化している場面では、指先の値とAST部位の値がずれることがあると報告されています。したがって、食後すぐや運動直後、低血糖が疑われるときのASTは避け、空腹時など血糖値が安定している場面で使うのが望ましいとされています。

痛くない血糖測定の方法その⑤ そもそも「指を刺す回数」自体を減らす選択肢も広がった

穿刺の痛みに悩んでいる人は、持続血糖測定器(CGM)の使用を検討してみるのもよいでしょう。
近年は保険診療のCGMに関する項目が整備され、インスリンなどの注射薬を使用している1型・2型糖尿病の人に加えて、インスリンを使っていなくても低血糖を繰り返すなど血糖マネジメントが不安定な2型糖尿病をもつ人も、医師の指示のもとで保険適用の対象になりました。

さらに最近では「選定療養」という制度の対象にCGMが加わり、インスリンを使っていない糖尿病の人でも、医療機関を通じてCGMを自費購入できるようになりました。以前は完全に自己判断・自己購入するしかありませんでしたが、医師の管理のもとで使える選択肢が増えたことになります。

CGMはセンサー装着時に一度針を使いますが、装着後1〜2週間は指先穿刺なしでほぼ連続的に血糖の推移を確認できます。指先穿刺の痛みそのものが負担という人は、主治医にCGMの適用について相談してみる価値があると思います。

なお以前の記事でも取り上げましたが、「スマートウォッチでも血糖モニタリングができそう」というニュースもありますが、2026年8月時点でもまだ実現していません。針を使わずに血糖値を直接測定できる医療機器は、日本ではまだ承認されておらず、保険適用の対象にもなっていません。たとえば皮膚の成分を電磁波で読み取る技術や、ラマン分光法という測定方法が研究されていますが、いずれもまだ研究・開発段階です。

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穿刺の痛みは、我慢するしかないものではありません。針を変える、深さを工夫する、部位を変える、そして回数そのものを減らすといった工夫は、どれも今日から試せることです。「痛いから測りたくない」が「これなら続けられる」に変わるヒントが、ひとつでも見つかればうれしいです。

プロフィール

田中慧プロフィール画像

田中 慧
たなか さとし
東京女子医科大学糖尿病代謝内科学分野 嘱託医師
糖尿病専門医/医学博士

10歳で糖尿病を発症。2型糖尿病と診断されていたが、28歳時に遺伝学的検査を受検し、遺伝性糖尿病のMODY3と診断された。ペン型インスリン、CGM使用中。インスリンポンプを使用していた時期もあり。患者としての25年以上の経験と、医師としての専門性を生かし、医療者・患者・家族をつなぐ活動を展開中。X(旧Twitter)では「おだQ」というハンドルネームで約15,000人のフォロワーに向けて糖尿病ライフのヒントを発信している

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