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2023年12月04日

毎朝すっきり快適に目覚めるために何が必要? 糖尿病の人に必要な「睡眠・運動・朝食」の3つの要素

 「睡眠・運動・朝食」という3つの要素に注意を払えば、誰でも朝にさわやかな気分で覚醒することができるようになるという研究が発表された。

 睡眠と朝の覚醒のサイクルを悪くする原因のひとつに、血糖値を早く上げやすい「単純糖質」のとりすぎが挙げられている。

 さらに、1日に7~9時間の十分な睡眠時間を確保することや、ウォーキングなどの運動を習慣として行うことも大切であることが示された。

朝に気持ち良く目覚めてリフレッシュするために何が必要?

 朝起きて、コーヒーを飲むまで頭がぼーっとしていて、昼間の仕事中もやる気が起きなかったり、眠気と闘っていることがある――あなたは孤独ではない、朝の目覚めについて悩んでいる人は多い。

 毎日すっきりと目覚められるのは、生まれもった体質の良い、一部の幸運な人だけではないことが、米カリフォルニア大学による新しい研究で証明された。

 「朝になっても、すっきりと目が覚めず、だるいと感じることが多いのは、ご自分の体質のせいだと感じていませんか? しかし実際には、生活スタイルに注意を払えば、誰でも朝にさわやかな気分で覚醒することができるようになります」と、同大学で睡眠科学や神経科学を研究しているラファエル ヴァラット氏は言う。

 「睡眠・運動・朝食という3つの重要な要素を調整することで、だるさを感じることなく、毎朝気持ちよく目覚められるようになります」としている。

ちょっとした行動変容により改善を期待できる

 具体的には、▼睡眠時間を十分にとる、▼運動を習慣として行う、▼朝食をきちんと食べる、▼朝食で炭水化物をとる、ただし血糖値を早く上げやすい単純糖質はとりすぎないようにする、▼全粒穀物などで食物繊維をとる、▼食後の血糖上昇を抑える工夫をする――といったことを実行すると、より効果的に目覚められることが示された。

 研究グループは今回、英国・米国・スウェーデンの研究者に協力してもらい、833人の遺伝的に血縁関係のない成人や、一卵性双生児と二卵性双生児を対象とした前向き縦断研究を実施した。

 参加者に、さまざまなメニューの朝食を2週間にわたり食べてもらい、腕時計型のセンサーを着用してもらい、1日の身体活動や睡眠の量・質・タイミング・規則性などを記録した。持続血糖モニター(CGM)を着用してもらい、1日の血糖変動を測定し、毎日の食事や日中の覚醒レベルなどについても記録をとってもらった。

 その結果、たとえば夜に睡眠時間を十分にとると、日中の注意力が向上しやすくなり、運動を習慣として行うことで、注意力を高められることが示された。「ちょっとした行動変容により改善を期待できます」と、ヴァラット氏は指摘する。

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「単純糖質」のとりすぎは血糖を上げ生活リズムも乱す

 研究者は、睡眠と朝の覚醒のサイクルを悪くする原因のひとつとして、血糖値を早く上げやすい「単純糖質」のとりすぎを挙げている。

 甘いお菓子や清涼飲料などのジャンクフードに多く含まれるブドウ糖や果糖(フルクトース)といった単純糖質や、フルクトースなどから作られ甘味料として加工食品などに使われている異性化糖は、消化吸収が速いので血糖値を急上昇させやすく、とりすぎると2型糖尿病や肥満が悪化すると懸念している。

 これに対して、穀類・イモ類・豆類・大豆などに含まれる「複合糖質」は、消化・吸収されるまでに単純糖質へ分解される過程が入るので、吸収に時間がかかり、血糖値を上げる速度は遅くなる。

食物繊維が豊富に入っている全粒穀物がお勧め

 食物繊維などが豊富に含まれる「全粒穀物(ホールグレイン)」をとることも勧めている。全粒穀物は、精白などの処理で、果皮・種皮・胚・胚乳といった部位を取り除いていない穀物のこと。

 身近にある全粒穀物として、玄米、玄米を発芽させた発芽玄米、雑穀米、大麦などの入った麦ごはん、全粒粉の小麦を使ったパンやパスタ、オートミールなどの食品がある。

 複合糖質は"健康的な炭水化物"で、精白されていない小麦粉や玄米などの全粒穀物にも、複合糖質に似た性質がある。精白される過程で失われてしまう食物繊維・ビタミン・ミネラル・抗酸化物質など、不足しがちな栄養素も含まれる。

 「全粒穀物を多く摂ると、精製された穀物の多い食事よりも、2型糖尿病や肥満、心臓病などのリスクも低く抑えられることが、これまでの多くの研究で示されています」と、同大学神経科学研究所のマシュー ウォーカー教授は言う。

吸収の速い糖質が多いと昼間の覚醒が妨げられる

 研究では、吸収の速い糖質が多く含まれる朝食をとると、効果的に目覚めて覚醒を維持するのが難しくなることが示された。単純糖質が多く含まれる朝食を食べた参加者は、日中に眠気などに悩まされることが多かった。

 糖質をまったくとらないのも良くないことが示された。糖質や食物繊維を十分に含む朝食をとった参加者は、早く覚醒でき、日中に覚醒した状態を長く維持しやすくなった。

 「糖質が十分に含まれる朝食をとることで、日中の注意力を高められることが分かりました。ただし、吸収が速くて血糖値を上げやすい糖質は、脳の注意力を鈍らせ、意識の覚醒を保つのを難しくする原因になります」と、ヴァラット氏は指摘している。

 「食事からとったブドウ糖を、体が効率的に処理できていることが大切です」としている。

十分な睡眠時間や運動をする習慣も大切

 また、1日に7~9時間の十分な睡眠時間を確保できていることも重要であることも示された。疲労にともない体内で産生されるアデノシンという物質を除去するために、十分な睡眠が必要としている。

 さらに、ウォーキングなどの運動を習慣として行うことで、注意力だけでなく気分のレベルも向上させるのにつながることも示された。

 「前日に行った運動により、その夜の睡眠の質が向上し、それが翌日の優れた覚醒につながっている可能性があります」と、ヴァラット氏は指摘する。

 「運動習慣は、日中の注意力や気分のレベルを高めたり、ストレス解消にもつながり、睡眠の質を向上させ、幸福感を高めることにも役立ちます」としている。

朝に気持ち良く目覚められることは健康のバロメーター

 「朝に眠気を感じることを、大した問題ではないと考えがちですが、先進国では生産性の低下や欠勤、医療機関の負担増など、毎年数十億ドルもの損失が発生する原因になっています」と、ウォーカー教授は述べている。

 睡眠と覚醒のリズムが上手くいかなくなくなり、起きている時間に眠気を払拭できなくなると、自動車事故・労働災害・大規模災害などの深刻な社会的影響が及ぼされることも懸念されるとしている。

 ウォーカー教授は、睡眠から覚醒まで、無意識から意識の回復までは、単純な生物学的プロセスだけで説明できるものではないと指摘している。

 「注意力や生産性を高めるのに、朝に目覚めて、日中に起きて活動している時間帯だけではなく、夜に眠っている時間帯にも注意を払う必要があります。朝に気持ち良く目覚められることは、健康の指標になりえます」としている。

生活スタイルを見直せば毎日すっきりと目覚められる

 なお、研究には、一卵性双生児や二卵性双生児も参加しており、覚醒と睡眠のサイクルに遺伝的な要因がもたらす影響は限定的で、遺伝子的な体質では個人差の25%しか説明できないことが示された。

 「毎日すっきりと目覚められるのは、生まれもった体質によるものではなく、睡眠・運動・朝食という生活スタイルを見直すことで、誰でも改善できる可能であることが示されました」ウォーカー教授は言う。

 「生活スタイルに注意を払えば、誰でも朝にさわやかな気分で覚醒することができるようになります。そのために、毎日の最良の目覚めを実現するための、シンプルな処方箋が必要です」としている。

Scientists discover secret to waking up alert and refreshed (カリフォルニア大学バークレー校 2022年11月29日)
How people wake up is associated with previous night's sleep together with physical activity and food intake (Nature Communications 2022年11月19日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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