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2015年02月13日
睡眠の質を高めれば生活習慣病は改善 睡眠の悩みは専門家に相談

日本生活習慣病予防協会は「全国生活習慣病予防月間 2015 市民公開講演会−"多休"で生活習慣病・がんを予防する−」を2月4日に日比谷コンベンションホール(東京)で開催した。
日本生活習慣病予防協会の池田義雄理事長は、生活習慣病予防のための「一無、二少、三多」のライフスタイルを提唱している。このうち「三多」には「睡眠を含め休養を十分にとる」という意味が含まれる。
座長:和田高士 先生(東京慈恵会医科大学総合健診・予防医学センター教授)
演者:伊藤 洋 先生(東京慈恵会医科大学精神神経科教授、葛飾医療センター院長)
主催:一般社団法人 日本生活習慣病予防協会
共催:公益財団法人ががん集学的治療研究財団、認定NPO法人セルフメディケーション推進協議会
例えば、糖尿病では10〜25%の頻度で睡眠障害が見られ、糖尿病や高血圧に悪影響を及ぼす。また、不眠の症状がある人は糖尿病や高血圧になる確率が高く、不眠症状のない人に比べると2倍高い。不眠症状が治れば糖尿病や高血圧が改善するという研究データもある。
慢性的な不眠がきっかけとなって引き起こされる「メタボリックシンドローム」や「概日リズム睡眠障害」「睡眠時無呼吸症候群」「むずむず脚症候群」「レム睡眠行動障害」など、睡眠障害が関連する病気は多い。
睡眠障害は、日中の眠気の原因となり、判断力の低下や反応時間の遅延をまねく。交通事故を起こした運転者で、夜間睡眠が6時間未満の場合に追突事故や自損事故の頻度が高いという調査結果がある。また、スリーマイル島原子力発電所事故やスペースシャトルチャレンジャー号事故など、睡眠障害による眠気が原因となったとされる事故も多い。
高血圧や糖尿病、メタボリックシンドロームなどを治療するときには、睡眠障害にも注意して治療すると効果を高められることが多い。また、治療してもなかなか改善しない高血圧や高血糖の背後に睡眠時無呼吸症候群が隠れている場合は、睡眠の質を良くすると疾患が改善することが知られる。
「眠れる状況はあっても眠れない」ことに加えて、「眠気のために日中の活動に支障がある」といった状態が通常1ヵ月以上続くと不眠症と診断される。不眠症には、寝つきが悪い「入眠障害」、寝ている途中で目が覚める「中途覚醒」、朝早く目覚める「早朝覚醒」、熟睡した感じがしない「熟眠障害」の4つのタイプがあり、これらの症状を複数併せもつ患者が少なくない。
不眠で医療機関を受診し、問診や検査の結果不眠症と診断された場合は、眠りを妨げる要因を減らし眠りやすい環境をつくる睡眠衛生指導が行われる。睡眠衛生指導は、快適な眠りを阻害する状況を減らす治療法で、「寝室を暗く静かにする」「眠る前には明るい光を避ける」「眠くなってから寝床に行く」「眠る4時間ぐらい前からカフェインをとらない」など、生活習慣を見直すことから始められる。
そのうえで睡眠薬を使った治療が始められる。睡眠薬に対して「副作用がある」「依存性がある」「認知症になりやすい」というイメージをもつ人は少なくない。しかし、現在多用されている睡眠薬は、強い副作用や依存が生じにくい薬が主に使われており、適切に使用すれば効果的な治療手段となる。むしろ不眠があるのに放っておく方が認知症になる危険性は高まる。
睡眠薬について誤解していると、治療を受ける必要があるにもかかわらず、市販薬や寝酒などで対処してしまい、かえって不眠を悪化させてしまうことがある。正しい知識を持ち、適切な治療を受けることが大切だ。

また、治療に使われているのは、不安やストレスで眠れない場合に有効な「ベンゾジアゼピン系」、寝つきが悪い場合に有効な「非ベンゾジアゼピン系」、メラトニンという脳内のホルモンの受容体に働きかける「メラトニン受容体作動薬」、脳の覚醒を維持させるオレキシンの受容体を遮断する「オレキシン受容体拮抗薬」の4種類だ。
ベンゾジアゼピン系と非ベンゾジアゼピン系の薬は、ともに脳の神経の活動を抑えるタイプの薬であり、服用してすぐに強い眠気を感じる。それに対し、メラトニン受容体作動薬は、しばらく使い続けているうちに自然によく眠れるようになるという薬だ。
薬の種類や量は、不眠のタイプや年齢などにより個別に処方され、経過を見ながら調節されるので、医師の指示通りきちんと服用することが欠かせない。そのためには受診時に服用状況や症状を医師に伝え、薬への不安や疑問があれば相談することが重要となる。
さらにアルコールによる利尿作用や、寝汗をかきやすくなることにより、睡眠が中断されやすくなる。また、血液が濃くなり、血管が詰まりやすくなるため、脳梗塞や心筋梗塞のリスクも高くなる。また、お酒を飲んで仰向けに寝ると、いびきが多くなり、睡眠時の無呼吸のリスクも上昇する。寝酒はほどほどにし、どうしても寝付けないという場合は専門家に相談した方が良い。
アルコールと睡眠薬一緒に飲むと、両者が作用し合い作用が強まり、危険な状態になることがある。記憶障害、ふらつき、めまい、寝ぼけ、脱力など、事故につながることも多いので注意が必要だ。
日本生活習慣病予防協会
日本睡眠学会
日本睡眠学会認定リスト
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