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2023年11月14日
糖尿病の人には「良い睡眠」が必要 睡眠改善で食事や運動がうまくいき認知症予防にも【睡眠を良くする5つの方法】
糖尿病の人が睡眠障害になったり、良い睡眠をとれなくなると、死亡リスクが大幅に上昇するというショッキングな研究が発表されている。
睡眠を改善することで、食事療法や運動療法の目標を達成しやすくなることも報告された。
睡眠は、脳の老化をさまざまな面でサポートしており、睡眠を改善すれば、認知症を予防できる可能性も示されている。
糖尿病とともに生きる人には良い睡眠が必要
糖尿病の人が睡眠障害になったり、良い睡眠をとれなくなると、死亡リスクが大幅に上昇するというショッキングな研究が発表されている。米ノースウェスタン大学医学部などが、約50万人の中年の英国人のデータを解析したものだ。
9年間の調査により、糖尿病の人は睡眠障害があると、そうでない人に比べ、何らかの原因で死亡する危険性が87%も上昇することが分かった。
「糖尿病でない人でも睡眠障害が死亡リスクの増加と関連していますが、糖尿病の人ではその関連がより強くなるようです」と、同大学で睡眠医学や予防医学を研究しているクリステン ナッツソン教授は述べている。
「糖尿病患者を診療している医師などは、患者さんの睡眠状況にも気を配り、必要に応じてアドバイスや治療を行うべきでしょう」としている。
睡眠を改善すると食事や運動の目標を達成しやすくなる
睡眠を改善することで、食事療法や運動療法の目標を達成しやすくなるという新しい研究を、米国心臓学会(AHA)が発表した。 研究グループは、12ヵ月の減量プログラムに参加した、過体重や肥満のある平均年齢50歳の125人の成人を対象に、生活スタイルの改善や良好な睡眠などと健康改善との関連について調べた。 その結果、質の良い睡眠をとれている人は、食事や運動の管理もうまくできている傾向があり、体重と脂肪が大幅に減少し、健康状態が改善しやすいことが示された。 「質の良い睡眠をとることは大切です。就寝時間や起床時間を規則正しくして、ひと夜に7〜9時間の睡眠をとり、朝はすっきりと目覚めて、注意力や活力を1日中保つことは、食事や運動の改善にも役立つ、重要な健康行動と言えます」と、米ピッツバーグ大学の健康・人間開発学部のクリストファー クライン博士は言う。 参加者の睡眠健康スコアの平均は、6点満点中4.5点だったが、睡眠スコアが高い人ほど、グループによる保健指導のセッションへの参加率が高く、食事のカロリー摂取目標の順守率が高く、中程度・高強度の運動に費やした時間が長いことが分かった。睡眠を改善すれば認知症を予防できる可能性も
深い睡眠が毎年減少している高齢者ほど認知症リスクは上昇
「フラミンガム心臓研究」は、心筋梗塞や脳卒中などの効果的な予防策を解明するために、米国で1940年代から行われている大規模研究。研究グループは、研究に参加した60歳以上の346人を対象に、睡眠と認知症の発症の関連について調査した。 参加者の二晩の睡眠を、夜間睡眠ポリグラフ(PSG)により、1995年~1998年と2001年~2003年の期間に調べた。さらに参加者を17年間追跡して、認知症の発症との関連を調べた。 その結果、深い睡眠が毎年減少している高齢者ほど、認知症のリスクが上昇することが分かった。徐波睡眠として知られる深い睡眠が、年間にわずか1%でも減少すると、認知症のリスクは27%上昇することが示された。睡眠を良くする5つの方法
米ピッツバーグ大学医学部によると、次のことを実行すると睡眠を改善しやすい。
■ 快眠はまずは規則正しい生活から
規則正しい生活によって、体内時計がホルモンの分泌や生理的な活動を調節し、睡眠に備えて準備してくれる。体内時計を整え、体を睡眠に導くために、毎日同じ時刻に眠り、起床も同じ時刻にすると効果的だ。
■ 夜遅い時間に食事しない
体内時計を整えるために規則正しい食事が望ましい。食事で摂取した食べ物が消化・吸収されるまでに2~3時間が必要となる。夜遅い時間に夕食をとると、胃の消化活動が活発になり、大脳皮質や肝臓の働きが活性化し、睡眠が妨げられてしまう。
■ 適度な運動が良い睡眠をもたらす
日中に体をアクティブに動かし運動する習慣のある人は、質の良い睡眠を得られるという調査結果がある。30分のウォーキングなどの運動を毎日続けよう。1回10分の運動を3回に分けて行っても効果がある。運動の習慣化は、睡眠の質を高めるだけでなく、肥満や2型糖尿病の改善にもつながる。
■ 入浴して深部体温を上げる
寝る少し前に体の奥の体温である「深部体温」をいったん上げると、その後に下がって、眠りに入りやすくなる。入浴には加温効果があり、運動と同じように体温を一時的に上げる。就寝1~2時間前に入浴すると深部体温が上がり、その後に睡眠に入りやすくなる。
■ 光で体内時計を整える
朝に太陽光を浴びると体内時計が24時間周期にリセットされる。起きたらまずカーテンを開けて、自然の光を部屋の中に取り込むと効果的だ。反対に夜に強い光を浴びると睡眠が妨げられる。夜の光には体内時計を遅らせる作用があり、照度が100~200ルクスの家庭照明であっても、夜遅くまで浴び続けると体内時計が乱れる原因になる。
スマートフォンやパソコンの画面にも注意が必要だ。スマートフォンなどの画面に含まれるバックライトには波長の短いブルーライトが含まれており、体内時計に影響を与えやすいので、就寝前にはなるべく見ないようにする。
Associations Between Sleep Disturbances, Diabetes And Mortality In The Uk Biobank Cohort: A Prospective Population-Based Study(Journal of Sleep Research 2021年6月8日)
A good night's sleep may make it easier to stick to exercise and diet goals, study found (米国心臓学会 2023年3月3日)
Improving deep sleep may prevent dementia, study finds (モナシュ大学 2023年10月31日)
Association Between Slow-Wave Sleep Loss and Incident Dementia (JAMA Neurology 2023年10月30日)
The Social Jet Lag Study(ピッツバーグ大学)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所
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